転移チートは頭重天使(後編)
突然の三人称視点!
青年の頭に天使の体を持つ異世界人、そんなフリークスとなった彼は、魔改造の主たるホーリィの研究室で匿われて過ごす事となった。そして宮廷魔術師総長にまで登りつめた白魔女ホーリィが亡くなるまでの数十年間、御鉢飛夫ことトビーの異世界知識は利用され続けた。もちろんホーリィの隠蔽工作の元、王様も知らないトップシークレットとして。
そのおかげで他国よりも文明レベルを上げた国は発展に発展を遂げ、ミルク姫の第一子、ゴート・モイスト・チュアリング王の治世となると、大陸全土にその覇を唱える程の大国へと領地を拡大していった。
頭重天使トビーも、途中からはマッチョな女ホムンクルスのリーザと共に、助手としてホーリィに仕え、数々の偉業に貢献した。何のことは無い、研究室の中だけの生活は暇すぎて、魔術の実験や魔具の改良などは丁度良い暇つぶしと化していたのだ。
特大の青魔石を使ってクーラーの開発に成功した時には、三人抱き合って喜び、大酒くらってお祝いした翌朝にカチカチに氷ついて死にそうになったのも、今では良い思い出である。
120歳まで生きたホーリィの死の床に二人が呼ばれると、
「お前達、今日からフリーね」
の一言で唐突に自由が与えられた。彼女の言によれば、
「国の発展に寄与したお前達には、この国自体が恩を受けている。お前たちの自由を阻むものは国を敵に回すと同義とし、王にもその旨徹底しているから、自由に世界を周りなさい」
との事。この一言には、天使ボディと勇者頭の繋ぎ役、寄生虫のフーパー君もビックリして、俺の鼻から飛び出して、
「ウソ〜ん!」
と叫んだ。師匠の死に際の一言は、
「ウソな訳あるかぼけ!」
フーパー君に対するツッコミの怒声であった。言い切ったホーリィはドサリと倒れ、息絶える。
国葬に浸る王都、ホーリィの発明によって生活レベルを向上された国民にとって、彼女は正に近代化の象徴、発明の母などとも呼ばれていた。
そんな訳でいま、各々の門戸に黒い喪章を掲げる町並みを前に、
「さすがホーリィ様、死してなお国を動かすわね」
旅装に身を包んだリーザが頭上に向けて話し掛ける。百年以上生きた彼女は、しかし生まれた時から歳を取らずに、いまだ瑞々しい筋肉を保っている。人間と変わらぬ外見の彼女は、ホーリィの命令で様々な素材等を収集しており、冒険者も真っ青の超級戦闘能力と、様々な魔具、そして魔法知識を有していた。
かく言う俺こと、頭重天使トビーも、光魔法(勇者×天使でチート級)、天使ボディに内包されていた光弓コキュートスを使った光弓術(天使の弓矢が持つ恋の魅惑効果付き)、天使の輪がもたらす無限魔力受給(from神様)というチートぶり。更に物知りな寄生虫型の妖精フーパー君が旅の案内役として様々な知識をトビーの大脳に直接伝達してくれる。
一般人には見えないように、ホーリィの残してくれた良心センサー付きの姿隠しの護符を身につけたトビーは、リーザの頭上で新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込むと、大空高く飛び上がった。これからこの世界を見尽くしてやる! 百年もの時を超えて、転移勇者の冒険はやっと始まった! もちろん赤ちゃんボディーの彼には、魅惑の矢を使ってハーレムを作っても、どうこうする事ができないが……
彼らはその後、世界中を周って、投擲を極めた女忍者 、自分から矢に刺さりにきた白魔女の弟子希望者(感情を無くした彼女は、トビーの矢によって愛情に目覚める)剣ドラゴン(メス、ロリータ、ゴリゴリの巨体)スライム女、などなどを救っては、やがて世界を揺るがす大魔王に立ち向かって行く事になるーー
*****
「いや〜、今回のはなかなか凝ってたでしょ?」
「ほんまに、手下の天使の首を切って、体を下界に放り投げた時は、狂ったかとおもったわ」
「いや〜、あん時閃いちゃってね〜、咄嗟に身近にいた彼を首チョンぱしちゃったけど、彼には大破壊天使の体をプレゼントしたから、大喜びしてたよ」
「あほか! それが元で、天使達の首交換大シャッフル大会になったから! そのあとこっちの首まで飛ばされかけたんやからな! 笑ってる場合ちゃうやろ」
そう言いつつも、笑い声の絶えない天界だったとさ、めでたしめでたし。
尻切れトンボ感! もしまた何かの設定が浮かんで、尻切れに終わったら、ここに投下したいと思います(´・Д・)」