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転移チートは頭重天使(前編)

最終譚、豪華前後編バージョン(´・Д・)」←そんなのいらんか?

 深夜0時を回ったとある地方都市、街の中心地から車で10分も離れた住宅地は異様な雰囲気に包まれていた。


 鉄筋三階建てのボロアパートの前は警察や救急隊、野次馬達でごった返し、路地がパトランプで赤く染まっている。

 その奥には、ブルーシートに隠されたアパートの出入り口があった。


 事件現場を背景に現場レポートをするアナウンサーが深刻そうな声を上げ、大量のカメラマンや音声スタッフなどが場所取りにひしめく。


 全国放送の地上波テレビで一斉に流れる情報は、要約するとこの様なものだった。


 ニュース速報

 今日未明

 ○県○市在住20歳男性、御鉢飛男おはちとびおさんと見られる男性が首無し死体で自宅アパートで発見されました。

 発見者は友人男性、御鉢さん宅に遊びに来た所で、大量の血を吹き出した首無しの男性を発見。

 身体的特徴から御鉢さん本人と推測されるとの事です。


 それが俺、御鉢 飛男ことトビーの最期だった。


 と、思われた。


 どっこい生きてる俺の頭、何処かって?異世界さ。



 いつから話そうか、今日の俺は大学で昼間まで講義を受けた後、午後にティッシュ配りのバイトをして、20時には家に帰って来た。


 コンビニで買ったハンバーガーをビールでやっつけると、少し横になるつもりが一眠りしてしまったんだ。


 起きたのは23時過ぎ、今日は同じ大学のユウジがバイト終わりに来ることになってたけど、着くまでには時間が有るから、ひとっ風呂入ってサッパリしようと、バスタオルを引っ掴んで、ユニットバスでシャワーを浴びたんだ。


 熱いシャワーが寝起きに気持ち良かったね。俺は自作の鼻歌を歌いながら気前良くシャンプーを使って、ワッシャワッシャと頭を洗ってやったよ。泡を流すのに手間取る位にさ。

 風呂から上がった俺は、バスタオルで軽く全身を拭いたあと、頭を拭きながら部屋に戻った。

 うん、全裸だね。


 一人暮らしの気楽さよ。


 股間をバッシ!バッシ!と叩き拭いた後、バスタオルをハンガーに掛けると脱ぎっぱなしの半パンをはいて、乾かしていたTシャツを引っ掴んだーー


 ーーこの時、俺は気が付かなかったんだ。Tシャツの襟首に異様な紋章が光り輝いている事にーー




 Tシャツに首を通した次の瞬間、一瞬だけ目に入ったのは大業な服を着た女の子。


 なんで一瞬だけなのかって?


 当たり前さ、次の瞬間ブラックアウト。

 首だけになった俺は石畳に落ちて10cm跳ねたらしい。




 *****




 勇者召喚の儀式を執り行う巫女姫ミルク・モイス・チュアリングは、主神ハドルのお告げ通りの時刻、場所に祭壇を組み上げて、従える司祭と神官10名を補助に一心に魔力を燃焼させていた。

 その場に居る全員の魔力が枯渇しかけて、一人、また一人と気絶して倒れる中、全ての魔力を集約した魔法陣の中心にいたミルク姫の持つゴブレットが輝き出す。


 固唾を飲んで見守る王以下、宮廷魔術師や文官、武官のお歴々がどよめく。いよいよその時を迎える、緊張の頂点で姫が一言、


「熱っ!」


 というとゴブレットを地面に投げ捨ててしまった。


 〝あっ!〟


 皆が慌てて駆け寄る中、魔法陣がまばゆく光ると、空間を歪める魔法の力場が倒れたゴブレットの真上に出来上がる。次の瞬間ーー


 ーー勇者召喚の儀式場に人間の男の顔がひょっこり現れると、力場が掻き消えた。異相空間消滅に切断された男の生首が、式場の地面に落ちると、バウンドしてコロリと転がるーー


 血まみれの儀式場に取り残された一同は誰も言葉を発する事ができずに、呆気に取られて静まり返る。そんな中、王様の発した、


「マジかよ」


 の一言が熱気の覚めた儀式場にいつまでも響いた。




 ******




 宮廷魔術師の一番弟子、白魔女ホーリィは、大事そうに包みを抱えて、城の廊下を駆け抜けていった。

 異世界から呼び寄せた勇者の首を、流血の惨事の後かたずけを命じられた召使いに、裏金を渡して貰い受けて、自分の研究室へとひた走る。


『早くしなければ間に合わなくなる』


 その一心で走るが、日頃からの運動不足で研究室に着く頃には、ほとんど歩いているのと変わらない位のスピードになっていた。


 汗だくで研究室の大扉を開けると中から、


「ホーリィ様、遅うございます!」


 白衣にハチマキを締めた助手の魔法生物ホムンクルスリーザが筋肉隆々の腕を組んで仁王立ちしている。彼女は生誕当初こそ見目麗しいパーフェクトボディーだったが、ホーリィの無茶な要求に応え続ける内に、ボディービルダーの様なムキムキの体に環境適応してしまった、真のパーフェクトボディの持ち主であった。


 その筋肉質な足元には、特別な封印を施した、国宝級の遺物が、厳重なケースに入れられて鎮座している。


 ホーリィは、中に入れた物の鮮度を保つ、魔法の風呂敷をテーブルに置くと、


「はじめるわよ!」


 と宣言すると、リーザは待ってましたとばかりに両腕を振り上げてムキッ! とダブルバイセップスをきめた。




 その後二週間、寝食を忘れて勇者の首の魔改造に取り組む。そんな彼女は異界の知識を欲していた。思った通り、チート級異世界転移勇者の首に釣り合うのは、代々彼女の家に秘宝として伝わる国宝級の遺物のみ、それはーー




 ーー次に俺が目覚めたのは、埃飛び交う薄暗い寝台の上だった。頭を起こそうとして、どうにも動かせない事に焦る。何故だろう? 首がちぎれる程に痛い。

 そんな俺の物音に、


「わっ! 動いた! ホーリィ様! ホーリィ様〜!」


 巨大な何者かが飛び上がって駆けて行った。頑張って物音の方向に首を向けると、室内を映し出す大きな姿見が立てかけてある。そこに自分の顔を見つけた俺は、次の瞬間信じられない物を見たーー成人を迎えたむくつけき男の頭部の下はーー赤ちゃん!!


 ビックリした俺の背中で、真っ白な羽根がピコピコッと羽ばたいた。

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