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秘め事だらけの宮中絵巻  作者: 日ノ宮九条
一つ、火のないところに煙はたたない
11/17

疑問形で答えられても困ります

「あのね。実は今度宮中で『肝試し』をしようと思っているんだよ。」

「は?」


意味がわからないと言うように、弾正尹宮は眉根を寄せた。


「だからね、弾正、『肝試し』だよ。」

「いえ、そうではなくて。僕も『肝試し』ぐらいわかります。……どうしてそれを?」

「……?思いつき?」

「……疑問形で答えられても困ります。」


たまに、この帝は思いつきで宮中イベントを作ることがある。それは花見大会だったりと、多種多様であり、そのせいで家臣は多々振り回されているのだが……。


「どうしてまた『肝試し』なんかを?」

「うん……。なんでだろう?」

「……ですから、疑問形で答えられても困ります。」

「いいじゃないか、弾正?」


ククッ、と笑いながら中務卿宮は同意の意を示した。


「『肝試し』ねぇ?実に面白そうだ。私は紫桜に賛成するよ。」

「『肝試し』かぁ。わたしも賛成。面白そうだよ。時雨は?」

「……構いません。」


三人の返答に弾正尹宮は大きくため息をつく。


「……別に反対するつもりはないですけれど。」

「ああ、なるほど。弾正は幽霊、怖いの?」


的を得たりとばかりに、紫桜帝がからかうように言った。


「なっ!ち、違います!別にそんなわけでは……!」

「そういうことか。ふふっ、やはり君は可愛いね、弾正?」

「だから違うと言っているでしょう、中務卿っ!」

「弾正は情けないなぁ。年下の時雨は大丈夫なのに。」

「あ、兄上っ!!」


顔を真っ赤にして必死に否定する弾正尹宮。見かねた時雨が助け舟を出した。


「陛下。……肝試しって、何処でするんですか?」

「ん?ええっとね、実は王宮の近くに、今は使われていない廃宮……『後雨宮(あとうきゅう)」という場所があるんだよ。そこで開催しようと思う。貴族たちをよんで度胸試しをするつもりだよ。その催しに、君たちも参加してくれないかな?宮たちが参加した方がみんなもやる気が出ると思う。それに、せっかくだから楽しもうよ。」

「なるほど。……今回は『任務』ではないと言うことか。」

「うん、違うよ。今回はちょっとした遊び。」

「……本当に?」


中務卿宮が探るような視線を紫桜帝に向ける。


「本当だよ。」


ニコッと、腹の読めぬ笑みでそう返す。


「……ほう?」


意味深な表情を浮かべる中務卿宮。


「兄上。その催しにはわたしも参加していいの?」

「もちろんだよ、宮。いつものように(・・・・・・・)おいで。」

「それじゃあ時雨と参加するね。」

「楽しみに待っているよ、僕の可愛い宮。」


中務卿宮も同意するように頷く。


「ならば私も参加しよう。弾正はどうする?」

「ああ、もう、わかりましたよ!参加しますよ!」


ヤケクソ気味にそう叫ぶ。こうして皆の参加が決まった。


「それじゃあこのことを彼にも伝えてくれる、中務卿?」

「了解。」

「ありがとう。それじゃあ……夜も遅いからお開きにしよう。……宮はこのまま僕といてほしいけれど。」

「あ、兄上。」

「ふふっ、冗談だよ。」


冗談、とは言うが、紫桜帝の目は半分本気であった。


こうしてその日は解散となったのであった。


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