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次の案

幻想郷文写帳完結後を想定していると言ったな。


あれは、嘘だ。

 結局、制御システムの奪還は不可能だった。開発の時点で遠隔操作プログラムが組み込まれていたらしい。素子の作ったソフトとファイアウォールが仇となり、干渉は一切行えなかった。

 「技術を持つ者は、いつも利用されるんだ」

俯いたにとりが肩を落とし、手で顔を覆って泣いている。

「私が…私がこんなもの作ったから、幻想郷は…外の世界は…グスッ」

他の河童のエンジニア達もまた責任を感じているらしかった。鉛より重いネガティブインパクトだ。

「…ふっ、馬鹿ね」

しかし、レミリアがその空気を読むことなしに発言した。

「諦めるのは早いわ。この船を停止させればいいのよ。あの小物が動き出す前に」

小物、というのは恐らく弾蔵のことだろう。間違いなく年上であろう者に対して小物と言う辺り、彼女は相当の自信家であるようだ。

「停止?!そんなレミリアさん、この船壊したりしたら、周りに被害が…」

「あら、いつ私が壊すなんて馬鹿げたことをほざいたのかしら。そもそも、こいつはフランの能力を以ってしても壊せなかった。そうよねフラン?」

「うん、目は見つけたんだけど、どうしても干渉できなくて」

 フランドール・スカーレット。495歳。吸血鬼。『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』の持ち主だと、幻想郷縁起には記載されていた。全ての物体が持つ最も緊張した部位である『目』を自身の元に移動させ、それを握り潰すことで対象物体を破壊する危険極まりない能力だ。

 しかしながら、どうも俺は幻想郷縁起の情報が当てにならないような気がしてきている。妖怪の身体能力等の記述にどうもヒトから見た誇張が含まれているようなのだ。例えば天狗の飛行能力も、実際はハリオアマツバメに及ばない。鬼の腕力も自重の100倍程度が限度――星熊勇儀のような例外は数に入れない――で、吸血鬼の俊足はどう足掻いてもチーターを超えられないはず。よって、妖怪そのものの危険性も幻想郷に住むヒトが考えているより大きなものでなく、フランの能力も何かしら欠点が存在するに違いない。

 閑話休題。

 やはりファンタズムキャリアにかかったプロテクトは非常に強固なもののようである。レミリアと同じく、俺もこの船を停止させる案を先程考案したところだ。

「小櫃。将軍は貴方でしょ?部下に指示したらどうなの?」

「…お前も将軍と言うのだな。欧我、子供に妙な入れ知恵をするものではないぞ」

「たはは…」

後で欧我には説教をくれてやろう。

「さて、説明を始めようか」

 ファンタズムキャリアの飛行には、グリマスチャージャーで吸収・精製された魔力が用いられている。そしてそのグリマスチャージャー、及び船内の電力供給にモノポールドライブを使用している。モノポールドライブは、その性質上オンとオフの切り替えができない、つまり常に大量のエネルギーを作り出している為、中央制御システムと完全に独立した手動制御となっているらしい。電力は一度予備電源を兼ねた複数の大型コンデンサーに蓄えられ、充電と放電を繰り返す。

 万が一の事態に備えて、にとりはモノポールドライブを動力炉から取り出せるように設計していたという。大きさはバスケットボール大。しかし、発生するフェルミオンに未知のものが多く含まれている可能性があるので、原則としてそれらを磁場で引きつけておける素子しか扱えない。

 俺の考えはこうだ。まず翔子を帰宅させ、素子以外の者が弾蔵のアジトを捜索する。発見次第集合、素子がモノポールドライブを取り外すのと同時に突入。予備電源が切れるまでの3時間以内にできる限り制圧を完了、制圧できずとも腑抜けと化したファンタズムキャリアを魔法の森付近に墜落させる。動力に揮発性物質を使用していないファンタズムキャリアは爆発することはなく、後は鬼やら河童やらが分解・回収すれば良い。名付けて『ハッシュハッシュ・パラライザー作戦』。典型的な陽動作戦フェイントオペレーションである。『ハッシュハッシュ』とは、『極秘』を表す語だ。そして『パラライザー』とは、『麻痺させるもの』の意。要するに『極秘裏に麻痺させるもの』と、そのままの意味だ。

 「総員、異論は無いな?異論のある者は一歩前に出てくれ」

説明を終えて、皆に問うた。誰にも動きはなく、そのまま作戦開始しようとした矢先、隅の方にいた翔子が前に出た。

「私は、船に残る。素子ちゃんを一人にしたくない」

「…ほう」

驚愕の色に染まる周囲を気にも留めず、俺は彼女に感心していた。その目は水晶の如く澄み渡り、決意の光を湛えている。

「大丈夫です皆さん。翔子は私が責任を持って守り抜きます。それに、彼女の能力は私と相性が良いんですよ」

「能力?」

そういえば、俺が翔子を蘇生させた後で、何かしらの能力に目覚めたらしい、と聞いたことがある。続く素子の言葉。

「『電場を操る程度の能力』、です」

ハーメルンで発覚した衝撃のラストにより、幻想郷文写帳完結前に時系列変更が為されました。

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