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機動兵器キメラスタッグ

 欧我君の視点になります。

 使用している画像はイメージです。脳内変換でお願いします。

 魔法の森のはずれに位置するその店の名前は香霖堂。無縁塚に流れ着く外の世界の物品を取り扱う道具屋である。

「頼もう」

最初の目的地は、ここだ。

「お、いらっしゃい。ようこそ香霖堂へ」

「…外に出ていないのか、この店主は」

雑多に物が並ぶ店の奥、レジと思しき机の向こうから、男が声をかけてきた。しかし彼は外で何が起こっているか全く理解していないようだ。

「まあいい。USBメモリとPCを出してくれ、今すぐにだ」

「ぴーしー?…ああ、パーソナルコンピューターのことか」

店の倉庫へと消える店主・森近霖之助を尻目に、小櫃は素子に説明を始めた。

「今から、俺はファンタズムキャリア内のゲートを個別に強制アンロックするプログラムを作成する。プログラム言語は何だ?」

「いえ、それ位私の方が速いです」

だが素子は自信に満ちた表情で返した。

「本当か?」

「ええ、だって…」

「持ってきたよ。よっこらせ、ほい」

彼女は近くの椅子をPCの前に移動しながら、およそ予想外の答を言い放った。

「これでも私、ハッカーなので」


 小櫃の持つアームキャノン・ジェネラルカスタムは、バイオダイナモなるものが搭載されていて、キャノン内部に充填されたバイオエナジーを電力に変換できるという。ソケットを差せるようにわざわざコンセントまで付いている。お陰でPCを動かすことができた。

 しかし、小櫃は戦闘に使える能力を持っていない為、アームキャノンがなければ戦うことができない。尤も、戦うことを前提にすれば、の話ではあるが。

 「ん?」

「どうしたの?」

「…何かが近付いてくる。かなり大きいな。それに速い」

バイオロケーションで香霖堂周辺を探査していた小櫃が、何かを発見したらしい。

「何か聞こえるわ」

鈴仙の言葉に従い耳を澄ますと、森の奥からガシャンガシャンという、まるでSFに登場するロボットのような足音が聞こえる。それはさらに接近し、店の前で停止した。

「出て来い。そこにいるのはわかっているんだ!」

響き渡る、聞き覚えのある声。

「俺が行きます」

「欧我、いいのか?」

「心配は無用ですよ。こう見えて俺、強いので」

素子が「私の十八番パクられた!」と嘆いていたが、聞こえないったら聞こえない。

 外に出てみると、そこには異様な姿をしたロボットがいた。

挿絵(By みてみん)

「キメラスタッグ?!実用化されていたなんて…」

仕事を放棄して素子がついて来たが、俺はそんなことよりも、彼女がロボットについて知っていることに驚いた。

「知っているんですか?」

「あれはにとりが開発していた機動兵器です。多目的クラッシャーアーム、パワーシザーズレッグ、電磁式クローを2本づつ、40mm徹甲榴機関砲を1門装備しています。でもどうしてこんなものが…」

すると、丁度四角い頭のように見える部分が下向きにスライドし、そこから予想だにしない人物が現れた。

「久しぶりね、欧我」

ショートボブの金髪に赤いリボン、黒い服。それは紛れもなくルーミアだ。

「ルーミア?どうしてそんなものに?」

「弾蔵に貴方達危険分子を排除しなさいって言われて来たのよ。四島小櫃と葉月欧我を最優先で、ね」

「嘘だ!」

「弾蔵にスカウトされたの。彼の話を聞いて、私は…いいえ、私達は思い出したのよ。幻想郷という、籠の中に囚われていた屈辱を…。計画を邪魔する奴は抹殺するまで」

彼女は再びコックピットに乗り込み、

「こいつの性能を甘く見ない方がいいよ。人間一人、一捻りね」

円盤と爪の付いた腕、すなわち多目的クラッシャーアームを地面に叩きつけた。地が砕け、岩が飛び、それだけで直径5m程のクレーターをこさえる。

「貴方を倒すまで、店内の輩には手を出さないであげる。ま、瞬殺だけど」

余裕綽々といった感じだ。だが、自分には今までコピーしてきた無数の能力がある。それにあの時に比べれば、この程度屁でもない。

 「欧我さん」

おもむろに、素子が話しかけてきた。

「キメラスタッグの弱点は後背部のコンデンサーです。破壊されれば動力源を失います。コンデンサーは超硬合金のアーマーに守られていますが、構造上接続部のヒンジが緩いので、物理的パワーで排除可能です」

「わかった。ありがとう」

「プログラムの作成中、私は無防備です。くれぐれも、頼みますよ」

素子が店内に戻ると、俺は次に使う為の能力をイメージし始めた。

「…ルーミア、イマジネーションの中なら、何でもできるんだぜ。現実じゃないからな」

「あっそ。なら見せてあげる。敗北っていう現実をね」


 イメージしていたより苦戦することになった。

 地面を隆起・沈降させても、キメラスタッグはクラッシャーアームやシザーズレッグ、電磁式クローを、さながら昆虫の脚の如く操り地形を走破して、こちらに徹甲榴弾を撃ち込んでくる。どんな攻撃も受け流し、弾き返す鉄壁の装甲。俺は素子の支持通り、後背部を狙うこととした。

 キメラスタッグの後方、足元に潜り込む。にとりの能力を投影し、生成した水をロープ状に伸ばして、コンデンサーを保護するアーマーを掴んだ。

「搾水『アクエリアスグラップル』!」

そのまま力任せに引っ張る。キメラスタッグ自体の重さには勝てないが、ヒンジの強度は意外な程小さなもので、極簡単に外れてしまった。

「っと!」

外れたアーマーを振り回し、電磁式クローの付け根に叩き込んだ。衝撃で装甲が大きくひしゃげ、悲鳴にも似た金属音が轟く。体勢が崩れたところを、屠自古の能力を投影した状態で、コンデンサーに渾身の踵落としを決める。

「雷槌『クエイク・オン・テスラ』!」

電気で筋組織や運動神経を刺激したことで、爆発的な瞬発力を以って打ち出されたその一撃は、いとも容易く弱点を砕いた。そのまま能力を妹紅のものに変更し、足先から金属板の間隙に炎を注入。直後、爆ぜた。

「再衝『シーカーエクスプロード』!」

爆発で折れ、熱量に融かされたコンデンサーは、ついに機能を失い、キメラスタッグは停止した。

 「勝ったぞルーミア。これが現実だ」

傾いたコックピットに向け勝利を宣言した。

「…認めない。こんな現実は認めない!」

瞬間、ルーミアの筋力で強引にコックピットが開け放たれ、中から爆弾を抱えたルーミアが出てきた。

「自決してやる!さらばだ、くそったれの幻想郷!」

「っ!止めろルーミア!」

再度屠自古の能力を投影し、先程と同じ要領で飛び出してルーミアを止めようとしたが。

 カチッ、というその音の方が、自分よりも早かった。

 思わず耳を覆いたくなる程の爆発音、その威力を物語る炎。それらを前にして、

「ルーミアァァァァァァァァァッ!」

俺は、絶望のままに叫ぶよりなかった。

 幻想入り小説で恐らく初の試み、原作キャラの自決。

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