【3】
私が物心付いた頃――。
母エレナは、すでに大巫女であって私の“母上”ではなかった。
そして、私が伯父上の養女にと望まれた時、父アルスは迷う事無く私を手放した。
そんな私の前に現れたのは、ロイ。
ロイおじ様は、私が得ることが出来なかった想いを与えてくれる。
優しさの中に厳しさもあって、私を導き諭してくれる――まるで父親のように。
母上との思い出も何も無い私に昔の話をしてくれる――初めて知る母の人柄。
惹かれない訳がなかった。
でも、おじ様も最後に選んだのは、エレナとアルス。
私は――。
やはり、私は最初から一人だったのだ…。
この想いは二度と浮かび上がって来ないよう、深く暗い心の奥底に沈めてしまおう。
さもないと、私は狂ってしまう。
――もしかすると、私は既に狂ってるのかもしれない。
いいえ、既に、私は狂っている――。