【21】
炎は、空へと昇って行く。
炎だけが、空へと舞い上がって行く。
私は、まだこの地に立っている。
私を掴む二人の腕の力は緩む事無く、力強く抱き締められている。
私もしっかりと二人の腕を掴んで放さないでいる。
息が荒く、肩で息をするのもやっとの状態。
あの赤い炎は幻?
何処も焼けた箇所は無く、あの熱さも幻覚だったのかと思うほど今は何も感じない。
「……どうして…?」
それは、自分の身に起きた不可思議な事に対してではなく、目の前の男に向けた言葉。
「どうしてっ!!」
「それが、おまえの答えだ」
「え?」
「おまえが望む場所、おまえが欲しいもの、今、手にしてるものが答えだ」
「……!」
右手にはサイラスの腕、左手にはナディルの腕を掴んでいる。
未だに震える身体は硬直して放せずにいる。
「おまえはエレナに似だ。もっと欲張れば良い」
「!」
「シア。アルスから言伝だ」
「!!!!」
「“誰よりも幸せに。愛してる、僕の可愛い娘”」
それは、たった一度、幼い頃に父上が眠れぬ夜におやすみのキスと共に言ってくれたいつまでも忘れる事の出来ない言葉。
「どうして、その言葉を知っているの?」
誰も知らない父と娘の他愛ない言葉を、この男は何故知っているの?
「我の心はアルスのものと同じだからだ」
「……」
「分からなくても良い――たが、あまり心配させるな」
男は踵を返し、去って行く。
私には、その後姿が父上のものと重なって見えた。




