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【19】

「自由なら、何処へ行って構わないのですね?」



最後にナディルはそう尋ねてきた。


私に自由は無いけど、私の周りの者には自由であって欲しい。


素直にそう思う。



「陛下のお傍に居ます。例え、陛下が僕を疎ましく思っても。他に行く所も無ければ、戻る所もありませんから…」



その言葉に何処か安堵している自分に気付く。



「…本当にいいの?今以上に嫌な思いをするわ。だから――」

「宝飾師として、僕は欠陥品です。弟が継ぐからいいのです」

「でも、そんな…こと…」



そんな事無いと言いたいのに、ナディルも選ばれない苦さを知っている。



「サイラス様と一緒になるのですか?」



私は首を振る。



「分からないわ。それは、まだ、答えは出ていないの」



どちらにせよ、いずれ答えは出さなくてはならない。いつまでもこの状態で居続ける事も不可能なのだから。







 *     *     *







政務官が、文書を手に執務室へ入室する。


その書類に目を通し、最後にサインをし、手渡す。


政務官はすぐに退室せず、まだ何か言いたそうにしてる。


だから、私の方から「なに?」と声をかけた。


いつもなら言いたい事は歯に衣着せぬっていう人なのに。



「その…ご婚約の件ですが…」

「え?あぁ、その件なら、白紙に戻す事にしたわ」

「ですが…」

「ナディルにもそう言ったし、それに――」

「陛下!ナディルは白紙どころか、話を進めて欲しいと」



ガタンっ!! 私は立ち上がっていた。


椅子はものの見事にそのまま後ろに倒れてる。


――バカ!!あの男、何を考えてるの!!


ゴツンっと頭を殴られたような感覚にこめかみを指で押さえてしまう。



「へ、陛下っ!!」



私以上に驚き慌ててるワルター。


「大丈夫ですか?」と早くお座りになって、と椅子を元の戻そうとするが、私がその動きを制止する。



「陛下…。それから、カルティナから聞いております。サイラスとの事も…」



カルティナ~~!!あのお喋りがっ!!


あちこちで喋り捲くってんじゃないの~~っ!!



「と、とくかく、私は誰とも結婚はしないし!第一、ワルターのお望みの世継ぎはここに居るんだから問題は無いでしょう!!」



そう言って、自分のまだ膨らみの無いお腹に手を乗せる。



「だから!結婚にこだわる必要は無いでしょう!!」

「ですが――」



こんな時こそ、女王陛下という立場を利用する。



「もう、この話はこれで終わりです!仕事に戻りなさい!」



声音を低くし威厳ある態度を取る。


さすが、裏と表のある私。使い分けも完璧だ。


それだから、精神的に疲れておかしくなるのよ…。


渋々執務室を出て行く政務官の後姿にそう心の中で呟いた。



これでいい。 これでいいはず。



どちらか選ぼうとするから、苦しいのだ。 ならば、どちらも選らばなければいい。




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