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【18】



ナディルの父は先の王妃が、いたく気に入っていた宝飾師だった。


それ故、ナディルの父は二人の息子を連れ、城へ足を運ぶのが常だった。


だが、あの日、王は亡くなり同時に王妃も失意のあまり後を追うように――。


そして、新たな王が即位する。


王の名はアトレイシア。 若き女王の誕生であった。


戴冠式で豊かな煌く金茶色の髪を持つ女王の頭上には王冠が――まるで、女王の美しさと王冠の宝石達が共鳴してるかのようにその姿は一層光り輝いてるように見えた。


王冠はナディルの父が造り上げた。


これ以上無いというほどの細工を施した一品。


ナディルは父と共にその様子を遠くから見つめていた。


ひと目見て、赤き宝玉の瞳を持つ女王に心を奪われた。


それ以来、ナディルの造る宝飾品は素晴らしさが増すが、万人に受け入られる品ではなかった。


誰の目から見ても、その品は誰かの為だけに造られた物だという事が分かってしまう。


ナディルの父は、知己であったワルターに自分の息子の話をした。


その話を聞いたワルターはナディルの宝飾品を買い取り、適当な理由を付けては女王の下へ送っていた。



「――ここにある宝飾品は全てナディルが造った物…」



ナディルの話を聞き終えた私はそう呟いていた。


宝飾品など興味の無いワルターが、私の為に取り寄せるなんて不思議だと思っていた。


でも、どの品も私好みで、気に入らないものなんて一つも無かった。


ナディルは話し続ける。



「僕はただ、心の中だけで想い、宝石に想いを込め、遠くからそのお姿を見ていれば良かったんです」

「ナディル…」

「それなのに、僕は愚かにも陛下の婚約者候補になどと――」

「それは、ワルターが貴方を認めたからでしょう?ナディルは何もわる…く――」

「でも!本当に知らなかったんです!陛下があのドレスの!あの色を嫌いな事を!」

「………」

「それに、比べた事なんてありません!一度もお目にかかった事なんて無いんです、先の大巫女様とは!だから、比べようがありません!」

「!!」



紫黒色の髪が揺れ、項垂れる。


私も項垂れる。


空回りするだけの想い。


カラカラと、同じ場所を巡るだけ。


前には道は無く、振り返っても道は失われ 行く事も引き返す事も出来ずにいる。



迷い、彷徨う事すら出来なくなってしまった。




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