第六話 「竜の卵と女海賊」
さて、タテロールこと、ハロルドを追って、バーミオンからイルガルドへ。うっわ、暑い~!?
暑さでバテバテ。こんな日に金属鎧なんか着たてたら目玉焼きができますよ。
イルガルドに着いて、タテロールのことを探してみる。すると、樹状都市“ギルアネス”行きの船に乗ったらしい。
ただ、その前に、この街で二人の男の人と会ってたらしいとのことだけど、詳細は不明。
1人は、外見を聞く限りではノートリスさんっぽいようです。もう1人は不明。で、不明の方は、船に乗って沖に出たそうです。
とにかく、色々と交渉の末に、ギルアネス行きの船に、船の護衛として乗ることになりました。
のんびりと航海しているとグラシア君が、前方を指して「嵐が来るな……」って。
程なくして拡声器による、船内放送。嵐を避けて少し遠回りすることに。
でも、グラシア君たちが「高い確率で海賊が出るだろうから、気を抜くな」だそうで、いきなり「左舷を見ろ!」って声が…!?
――見たら船がゴーンって!?
ぐらぐら、じゃポーン!と、僕は船から落ちました。ど派手に!。
落ちたことに何人か気づいたけど、ロープも何もくれない。ええー?!
向こうの船で音がしたのでそっちに泳いでく。同じように落ちてきた女海賊? も泳いでく~。上では乱戦……大変そ~。あ! ロープ発見。
昇って甲板に出てあら不思議、この白くて大きなへんなの何?
はぅ!僕の乗る船が離れてく!……とにかく、女海賊の姉さん方に見習って、白いドラゴン?に攻撃だぁ~!!
(蛇龍。海の魔物。船乗りの天敵。亜竜の一種で、翼も爪もないけど、鱗は固く、牙も硬い。たまに、水流ブレスを吐く)
何とか白いのを追っ払ったものの、ここ何処? 海賊船? 帆に翻るは海賊旗 うん。海賊だぁ~。
そこに、ホールドアップされて、出てきた見た顔、ゲイルとグラシア君とフェイル君と……誰?
「俺っちは、湾岸警備隊のモノさ! だけど、バレたら殺されるんで、今は、波乗りのジョージとでも呼んでくれ!」
「波乗り?」
「木製の大盾を使った、波打ち際の遊びさ。最近、流行ってるんだぜ?」
「木製? ああ、船上での矢止め用か? 珍しいモノがあるんだな」
「ふーん。僕にも出来るかな?」
「興味あるのかい! なら、俺っちが手取り足取り、丁寧に教えて上げるよ!」
「波に乗るも、流行りに乗るも同じである、と精霊は言っています」
「どういう意味?」
「どっちも、うかつに乗ったら、怪我するってことだ」
「だが、リスクを恐れてたら飲み込まれるだけさ! 俺は乗ってみせる! このビッグウェーブに!!」
「おーい、ここに湾岸警備がいるぞ~~」
「わー、ちょ! まっ! 分かった分かった、タダのジョージで良い!」
「イリスを、変な遊びに誘うからいけない」
とにかく彼らと一緒に船倉に閉じ込められました。で、女海賊の首領さんと、唯一と思う男の人が、何か言い争ってたのが、かすかに聞こえた。
「まだ早い」
「……余計な事だ!」
「予定は順調だ……宝と……玉」
「竜の……ワード……事実なら……」
とか色々……。
そして、ゲイル兄さんたちがどうしたかと言うと、僕が船から落ちた後、すぐに海賊と戦闘になって、しばらくゴタゴタと乱戦してると、海賊船にいきなりサーペントが絡みついたそうです。
その時の衝撃で、海賊船から船ごと離脱出来たそうですが、僕の姿が無く、海賊船の方にそれっぽい影が!?と気づき。
予備の小舟を借りて、こっちに向ったそうで、その時、ジョージと名乗る通りすがりの湾岸警備隊の一人が協力すると言って、一緒にきてくれたらしい。
そんで、フェイル君の放った、精霊力を宿した渾身の矢が、サーペントの眉間にクリーンヒットし、それでソイツは逃げてったけど、こんどは女海賊たちにホールドアップされ、今に至るそうです。
さて、食事もいただいて、しばらくすると、例の唯一の男性と、女海賊団のボス、アルリアさんが一緒に来て――
「あんたたちは、冒険者かい?」
――と聞いてきた。
はい! と答えたら「だったら、遺跡探索に手を貸してくれないかい?」とのこと。犯罪行為でないのならと承諾。
(終わったら陸まで送ってくれるそうだし~。意外と良い人?)
さ~て、その場所に船は向う。でも嵐に遭遇。揺れること揺れること、キモチ悪い。酔い止め~!?
目的の島に到着。アルリアさんは自分が船を離れるわけにはいかないのでって、男の人……ザリクさんと、アマゾネス的な海賊4人と僕らで島の中心へ向う。
そこには、ドでかい岩。ザリクさんが、ごにゃごにゃと何か唱えたら岩が粉々に。すごいすご~い♪
…で、その下から螺旋階段が……降りてく。
降りた後、しばらく通路を歩いていくと少し広いところに、ってアレ? ゲイル兄さん……フェイル君? 上(天井?)にベシン!と。
「うおっと!?」
「へぶっ!?」
「僕、人が天井に落ちるとこ初めて見たよ……」
「俺っちも初めてだな。というか、見たこと有る方がおかしくね?」
グラシア君いわく「重力を変化させたトラップ。珍しい」らしいです。部屋の中央に、下に続く螺旋階段、上の中央には井戸っぽいものが……。
井戸はめちゃくちゃに深いようで、海水みたい。で、トラップが解除されたりしたら、海水がザパ~ンと来て水没して下に行けなくなりそうです。
しかたがないので、階段にロープを引っ掛けて先にフェイル君とグラシア君が昇って(降りて?)行きました
次に僕……って、はぅ!滑ったぁ!! ゲイル兄さんヘルプ~! 受け止めて~!?
ゴスッ!!
「……間に合わなかった」って、兄さんひどいよぉ……。回復、回復……。
「節約なんて考えず、軟着陸の呪文を使えばよかった……」
「備えあっても、憂い有り、と精霊は言ってます。行き違うは、ままあることです、はい」
「マジ、すまんかった。陸に戻ったらメシでも奢るから勘弁してくれ」
「え? ホント!? わーい」
「ふむ、なら俺っちが、伝説のデビルフィッシュ焼きを出す店に、案内するぜ!」
「ゲテモノはちょっと……イリス、クラーケンフライの方を薦める」
「うーん? どっちも気になる~」
「そんなことよりおうどん食べたい、と精霊は……」
「お・ま・え・ら……」
「「「なんなんだ、こいつら?」」」
そんなこんなでゲイル以外は自力で昇ることに成功。で、ゲイルを全員でひっぱり上げ、階段を昇って(降りて)いきました。
~で、ある程度上がった(下がった)とこで、不意にボトっと落ちて、階段終了(重力が戻った?)
そこに、左右に通路が……「二手に分かれましょう」と、アマゾンな彼女らは上りの左。僕らは下りの右だ~!
少し急な坂道を進んでいくと、……ガケ? 一本橋?……下は良く見えない……ロープ止め用のくさび一個を落としてみる……ひゅ~ポトン……ジュッ!……。
「ジュッ?」 アワワワ……。
上の方から、カキカキーンと聞こえた、あっちは戦闘中かな?
じゃ、僕らも念のために命綱つけて……ゲイル兄さん、偵察、行ってらしゃい♪
思ったとおり、大きなコウモリ来襲!
おいでませ~! でもゲイル兄さんは重くて持ち上がりませんよ~。
(ギガバットは、力が強く、小柄な人ならお持ち帰りできる。僕やグラシア君は下がって、クマさんに任せた)
一本橋を渡り終わって、少し進むと、何か変な部屋に。ガタンとトラップ発動。ガスっぽいものが壁の隙間から噴出。
雲状魔法生物系の魔物?を、戦神の力とフェイル君の精霊砲で、何とか倒したものの……きついなぁ……次の部屋に。
―――って、何か死体が動きました!? ゾンビ?……・・ワイト!?……精神ドレイン?……僕!ピーンチ!!
後方に戦略的退却~!! でもゲイル兄さんが「こういうこともあろうかと、用意していた」と、銀の槍で倒してくれました。危なく僕が、おばけの仲間になるところでした。
ついでに、フェイル君が、辺りを探して核石(魔石の一種)をゲット♪
(魔石は、そのまんま“魔力を帯びた石”のこと。加工して魔法の品の起動に使ったり、魔法生物の核に使ったり、魔術の補助に使ったりと、色々使える。あればあるだけ、便利なモノ)
さて、先に進むと、めさめさ広い空間に出ました。
大きな円状の溝で切り分けられた中央の舞台にザリクさんとアマゾネスな海賊姉さん方がいて、その奥に大きな蒼い球体が……。
そんで、ザリクさんがこちらに近づいてきました。
「頼まれていた品は手に入れた。あとは、お前たち人間しだいだ」
「え? 何の話?」
ザリクさんは片手に、燐光を帯びた、古いローブを持ってて、どうやら彼の目的はそれだったようです。
なんとなく「ハロルドさんの知り合いですか?」って聞いたら、正解っ! 嫌だなぁ……。
色々話してみたところ、あれは竜の宝玉ではなく、竜の卵だそうです。
(竜の宝玉。この辺りに伝わる、伝説のお宝。手に入れた者は、海を征すると言われている、らしい)
ザリクに言われて、周りの溝を覗いてみると、鮮やかな竜鱗を持つ蒼竜が、周りを囲むように、卵を包むように、横たわって眠っているのが……見えました。
どうやら、卵をここから持ち出すと、重力トラップが解けて、ここも海水に満たされ、蒼竜が目覚めて……えええっ!?
「“人間”の基準で、価値あるモノであることに、嘘はない。別に、お前たちの破滅が目的ではない、止めるたいなら止めるが良い。邪魔はせぬよ」
「龍の卵なら、価千金、掛け値なしは事実だが……、親父並にエグイな、キサマ……」
「全力で止めましょう」←全員一致。ザリクさんは、そのまま立ち去って、それをジョージがこっそりと追跡。
「あいつは俺っちが追う。あんたらは、全力で止めてくれ!」
そして、僕らは、アマゾネスの姉さん方を止めにって―――もう、卵動かしてるー!?
「眠りへ誘う魔性の霧よ!!」とグラシア君がスリープミストで姉さんたちを眠らせる。それで、眠ってる間に、卵を元の位置に……無事のようです。
「なんのつもりだ!」
「裏切ったかー!?」
「これだから男は信用出来ない!!」
「ソレは誤解だと。精霊は言って……、あ、ちょっと、まだ話はっ……?!」
「……もう一度、眠らせる?」
「あー、不味いか? こりゃ……」
「ちょちょちょ!!! ちょとまってー! 武器捨ててー!?」
去っていくザリクに気を取られ、少し遅れた僕は、目覚めた姉さん方とグラシア君たちの間に立って必死に説得……・何とか分かってくれました。
そして、溝に横たわる龍を見て、納得した姉様方と一緒に、アルリアさんに指示を貰うために船に戻る。
その頃、ザリクを追ったジョージさんは、地上に出た所でザリクさんを見失ない。足跡を辿ると、海に入る直前に異形な足跡に変わってるのを発見。
「これは……、そうか、そういうことかよ
―――しかし、なんで今さら、海底のヤツが地上に? 復讐? いや、それにしては……あー、ワカンネ!?」
どうやら、彼は人間でなかったようです……。
戻ってきたジョージと一緒に、アルリアさんに説明。ザリクさんは半漁人で、アルリアさんを騙し(引っ掛け?)てました~。
そんで、話した結果、あの遺跡の入り口は数時間かけて潰すことに……。
「昔なじみの頼みなんで、引き受けたんだけどねぇ……」
「いいよ、落とし前は、ソイツに取って貰うから。しかし、海の亜人ね……。
海の幸は有限だから、漁師どもは目の敵にしてたり、逆に崇めてたりしてるけど、まっ、アタイらには関係ないね」
(これは後々に分かったことだけど、ザリクさんは水棲亜人種を代表するの裁定人で、長く途絶えていた交流を再開するべきかどうかを観察するために、今回の件を仕組んだそうです。
交流相手である人が、善なら良し。欲に目がくらむ愚か者なら、蒼龍の怒りで滅んで良し、と考えてたって……うぇぇ……)
約束どおり、ギルアネス近くの港まで送ってもらい、アルリアさんにお礼を言われました。ついでに―――
「どうだい? あんたもアタイたちの仲間にならないかい?」
「却下」
「あんたには、聞いてないんだけど?」
―――と、僕が海賊へのお誘いを受けました。でも、保護者っぽい言い方で、グラシア君が丁寧にお断りしてくれました。
「回復役は貴重」
「歩くポーションは便利だみゅ~」
「えええー?! 僕ってアイテム扱いなの!?」
「うむうむ」
「そこのクマさん! そんな風に生暖かい目で見るの、止めて!」
「面白いヤツラだ……マーカスにしちゃ良い仕事振ってくれたもんだ」
「ん? ジョージさん、なにか言った?」
「腹減った、って言ったのさ。デビルフィッシュ焼き、食いそこねたからな……」
「イルガルド特産品だっけ? あー、食べれないと分かったら、余計に食べたくなったー」
「とりあえず、ホレ。これでも食ってろ。船で見つけた果物だ」
「悪徳商人から泥棒にクラスチェンジみゅ~」
「元はといえば、あいつらが襲ってきたから苦労するハメになったんだ。これは正当な報酬だ」
「むしゃむしゃ、うまうま」
「餌付けされるポーションみゅ」
「イリス……」
「さて、いつまで笑ってられるか……って、おーい、ちょっとまった、俺っちをおいてくな~!」
海岸に下りて、騒ぎながら、しばらく歩くとギルアネス付近に到着。……懐かしい……僕の出身地だし、その村の近くだぁ~。
ひさびさに村に戻ってみようかなぁ……。
登場人物
ジョージ (男 )イルガルド沿岸警備隊隊員、と言うことになってる。お調子者だが、善人で、おせっかい焼き。
アルリア (女)有名な女海賊。女性だけの海賊団を率いている。男嫌いでは無いが、好んでもいない。
ザリク(男)三叉の矛を持つ魔法戦士……に擬態した、水棲系亜人。地上人を嫌ってはないが、かなり冷めた眼で見ている。
マーカス(男)クライアス商会の人間。色々やってるらしい。