第五話 「交渉とその裏に……」
昨日の騒ぎのあった夜。結局の所、グラッドおじちゃまの依頼を受けた。
建前は「デルミスの魔術ギルドに、学術研究用のユニコ-ンの角を届けに行く」
けど、本当の目的は「マクガイア伯爵に角を使って石英病を治す」と言うことでした。やったー!
さて、翌朝、勇んで出発するも、道中何も無く、伯爵の居る街にあっさりと着く。そして、尋ねて行った。
何かあると思って構えてただけに調子が……とかいってると、伯爵が不在。ええ!?
伯爵がどこに行ったか聞くとサーシャと一緒に、石英病の特効薬を狩り?に行ったらしい。
石英病の特効薬。とある魔獣の好物の薬草。ただし保存が利かない。だから、サーシャの薦めで群生地のある海運都市バーミオンに向ったらしい。
……皆と話し合いの結果、「追いかけよう」とのことになった。
……ただ、少し嫌な事として、伯爵は魔導帝国“グランドリア”(あまり良い噂は聞かない、海の向こうの国)の貴族と供に行ったって……。嫌……何かが……。
とり急いで出発。山越え。道中……進んで行くと……ぐっ!? 死体の山々が ナニゴト!?
……あ、数人生きてる。とりあえずボスっぽい人を応急手当。意識回復。
話を聞くと、彼は「貧者の義賊団」の首領「ロレンツォ」で、護衛の居ないきらびやかな2台の馬車を見つけ……「カモだー!」と。
でも、返り討ちー。御者をしてたメイドさんと、中から出てきたメイドさんたちにボコボコにされたそうです。
「ありゃ、盗賊か何かだ、腕が立ちすぎる。あと、そいつらの前に1人旅の男も居たが、そいつは怪しすぎたんで手を出さなかったが……結局、このざまだ」
うん、手をだしてたら全滅してたよ。外見聞いたら、どう考えてもローガさんだもん。
山賊のボス。「突き出そう……」でも良かったけど、邪魔しない(悪さしない)ならという事で解放。
「何かあったら力になるぞー!」って、実はいい人?!
不安は募るが目的地目指して再出発。
街が見えるくらいの所で、1人の少年が道端に倒れてる。ふはぁ! スティンガ-姐さん行動早! そして、妙に高そうな回復薬をかけた。
……疑いのまなざし……スティンガー姐さん……隠れショタ?……少年の話を聞こうとするが、目覚めた少年錯乱中。
落ち着きなさいと諭し、鎮静の祝福を唱える。正気に戻る少年。少年の名前は「ジニアス」
二人の姉とピクニックに行ってるところを数人の悪漢に襲われたとのこと。
そして、姉と引き換えにジニアス君家の大切なモノと交換で、期限は三日後だって。うわ~シビア~! ジニアス君の依頼。
「姉を助けてください!」
そんで、スティンガー姐さんはその現場を見に行って、グラシア君はジニアス君とその友人の所に(家宝?は、その友人に預けてるらしい)
僕とフェイル君は、グラッドおじちゃまの依頼目的の人であるマクガイアさんを探しに……街の入り口の衛兵に聞くと二日前に新市街の方に入国してるとのこと。
泊まってる宿を教えてもらって、尋ねてみる。宿は高級宿。……入れないぃぃ……ぐはぁ!
入り口のボーイと口論(少しだよ!)してると、奥から聞きなれた声が……なおかつでかい図体が……ゲイル兄さん……うわ!スーツ似合わない!で、どうしてここに?
「商談のためだ。たまには、実家の手伝いもせんとな」
ゲイル兄さん、この宿にマクガイア伯爵がいるか聞いてください……いるそうです。はい、正装してから他の人も連れてきます。
……ここで服をと、メモとお金貰って、皆の泊まってる宿に戻りました。
みんな帰ってきて情報交換。現場よりスティンガー姐さん「相手は十人以下で、盗賊っぽい……だけしか分からなかったわ」
グラシア君より「魔術ギルドから、正式な依頼が来た」何でもジニアス君の宝物ってのはギルドに預けてるらしい(友人ってのがギルドの館長とか)
んで、こっちの話をして、服を買いに……(スティンガー姐さんはここぞと、高価なアクセサリーを買ってました)
「クライアス商会の経費で落とせるんでしょ? だったら、値札を気にしたら負けよ」
「領収書は白紙が基本。と、精霊は言っています」
「すっごい俗っぽい精霊みゅ、素敵だみゅ~、いっぱいおめかしするみゅ~」
「あ、ミュッカは正装しても、入れないからダメだって、クマさん言ってたよ?」
「ハブられたみゅ~!?」
「……ハーフリンクだからな、入れてくれる高級宿は、まず無い……、そう、ないんだ……」
「グラシア君?」
「…ん、いや、なんでもない」
「ほえ?」
「あれ? そういえば服買わなくても、グラシア君の魔法で、なんとかなるんじゃないの?」
「できるけど、制限時間あるし、魔力は温存しておきたいから却下」
宿に行き、伯爵の個室に行って、角を使った。かろうじて壊れはしなかったけど、かなり消耗したっぽい。せふせふ。
それが終わってサーシャのこと(ここに居なかったから)聞くと特効薬の資料を探してるって、んじゃ、迎えに行きましょう。
と、スティンガー姐さんと伯爵と一緒に図書館に向った。
サーシャが図書館から出てくるのを入り口で待ってると、サーシャと一緒に1人の男性が出てきた。
サーシャ♪ お久しぶりなのです♪……んで、その男性は……ローガしゃん……ひほ~?!
サーシャが父親に彼を紹介する。
「こちらは、このあいだ助けていただいたローガさんです」
ローガさんは軽く挨拶して、気づいたようにスティンガー姐さんを見てる
「誰だ?」
「スティンガー姐さんです、あなたが切りかかった人ですよ」って耳打ちする。これで、分かってくれました
「……女は化けるものだな」
「………………ほめ言葉としてとるわ」
そして、ここで立ち話は……ってので高級宿に向う。サーシャだ♪ サーシャだ♪ お話~♪
さて、宿で、今後どうするかと皆と話し合う。ジニアス君の依頼とマクガイア伯爵さん依頼。
伯爵の方は今居るこの街より西の方にある村?で予定通り特効薬の採取を行う。
「病は治ったのだが、せっかく色々と準備してくれたサーシャのためにも、あえて薬草を採取して、それで治ったことにしたい」とのことです。
それで、僕らはその護衛を頼まれた。
……話し合いの結果、僕たちは、ゲイルなクマさんと女の人……えっと、はぅ!……と、とにかく僕らはジニアス君の方を受けることに。
伯爵の方は、元々予定してた傭兵に加えて、ローガさんが行ってくれるそうです(ローガさんが行くといった時、みんな安心した)
伯爵は明日の朝出るそうです。で、こっち(少年の件)が終わってからでも間に合いそうなら合流するってことで落ち着いた。
(ついでにユニコーンの角も伯爵に渡す。特効薬群生地には石食鳥が居る可能性が高いから、保険もかねて……ね)
……出発の前に、ローガさんに脇差の使い方を正式に教わって、予備の「打刀」も貰った。わーい!
「すぐには無理だろうが、基礎さえわかっていれば、後は反復練習あるのみ。足りない部分は、実戦で見出すモノだ」
「力押しではなく。引いて切る。撫でて切る。押し切るのではなく、断ち切る……か、分かった! 多分!」
「……素養はある。強くなれ、イリス。あらゆる意味で、弱さは悲劇を招く。……俺のようにはなるな」
「撫でて切る……撫でて切る…えーと? こうかな? ん? ローガさん、ナニか言った?」
「……いや、何でもない。そうだ、その振り方で良い。ただ、重心がずれてる、それでは力が乗らない」
「力じゃなくて、業で切るんじゃないの?」
「基礎体力は必須だ。業を支えるには力も要る。そして、その力を何倍にも引き上げるのが“業”だ」
「うう? 難しいよ~」
「まあ、理屈などいくら並べようと意味は無い。重要なのは実践だ。悩む暇があるなら、素振りをすることだな」
「はーい!」
さて、翌日、魔術ギルドに話を聞きにいった。そこで、正式にジニアスの姉の救出の依頼を引き受けました。
それから、ジニアス君のとこの家宝(?)が何故かギルドで保管されてる魔法の絨毯。何だけど……イリス難しくてよくわかんない!
(これは、後でグラシア君に聞いた話だけど、ジニアス君は、その絨毯を納めた「禁書庫」の番人で、高位の魔術師らしいけど、そのことは秘密。でも、相手に何故かばれてて、弱みである姉がさらわれたらしい)
魔法の絨毯は「力場の敷物」で、時間はかかるけど無尽蔵に魔石を作り出せる代物。危険性は低いけど、重要性はかなり高いそうです。だから、できれば、これを渡さずに姉を助けて欲しいそうです。
でも、姉二人の命が第一「命を奪われたら終わりだけど、モノなら奪い返せる」だそうです。よきかな、よきかな~。
期限は明日の夜。行動開始だ~。
個々に分かれて情報集め。情報の中に、ラートリー(犬使い)とノートリスがタテロール(グランドリアの貴族)と話してたそうです。
……黒だろうと思ってたタテロールさん……めっさ黒でした。
話の内容から、ノートリスの、ロミリークの時の目的は、ぼくらのせいで失敗だったらしい。で、彼はそこを担当してたらしい。
でも結局二人の姉の消息は不明。でも、とりあえずこいつらの宿を見張ることに決めた。
誘拐犯との交渉組は、ゲイル兄さんと僕とミュッカとジニアス君。絨毯もっていく。
で、救出組は、グラシア君とスティンガー姐さんとフェイル君。
そして先ず、救出組の方に動きがあったらしい。
姉がいるかいないか、バクチでタテロールの部屋に侵入! でも速攻でバレました。うわっ!?
サク。はい? フェイル君とグラシア君は、精霊魔法や魔術によって姿を消してるはずなのにぃぃぃぃ!?
(姿を消せないスティンガーは、逃走補助として待機)
タテロールこと「ハロルド」いわく「ここに探してる者は居ないぞ……」それを聞いて、ダッシュで逃げた二人。余裕か油断か、追っては来なかった。
やばいです。いたいです。みつからないです。
その頃、僕らは交渉場所につきました。
そこに居たのはラートリーと、ちんぴら数名&馬車。
交渉開始~平行線~あれ? 人質1人? もう1人は? ふざけるな~! 保険?! ぴぎゃ~!!
「バカかおまえら! 何のために二人攫ったと思ってるんだ?」
「ミルちゃんとミーアさんを返せー!」
「なら、絨毯を渡せ!」
「ミルちゃんとミーアさんを返すみゅ~!」
「だから、返して欲しけりゃ絨毯を渡せと言ってる!」
「あ……、ミュッカ。嬢ちゃん。少し落ち着こう…な?」
「「わいわい、がやがや、ぎゃーす」」
と、押し問答。時間が流れる流れる。空が明るくなってきました。
ラートリー……ゲイル兄さんどうしますか?
はぐぅ!ラートリーさん実力行使に!
「ええい、馬車の中の娘を殺せ。1人死ねばこいつらも思い知るだろ……Zzzz」
ほへ? うしろから何か聞こえた。相手が倒れた。ジニアス君かしたぁ?
いつの間にかに合流してた、グラシア君いわく。全力で睡魔の霧を掛けたそうです。いかに熟練の魔術師でも、今だ少年の体ではきつかったそうです。
(番人としての力は、禁書庫限定らしい)
……とにかく、今がチャンス!! とりあえず、姉のミーアさんを助けろ~!!
「先ずは、人質の確保!」
「わかってるみゅ~」
「ワォ~ン!!」
「「!?」」
――と、走っていったゲイルとミュッカの前に、大きな銀色のイヌ……狼?!が……やはり犬使い!?
「銀狼? 魔力を操る狼系上位種、珍しい」
「あれは、強い。と精霊は言っています」
しかも、この犬、かしこい! なんか光ってる前足で、起きないはずのラートリーを起こしやがった! そんなこんなとしてたら、いつのまにかにグラシア君たちも来てる!?
「やってくれる! こいつは借り物だが……俺様の技術なら操るにどうと言うことはない!
さあ!、噛み殺せ!! 月蝕の番犬!!」
「ワォ~ン!!!」
「もふもふ~♪ 銀色の毛並みキレー!……って、言ってる場合じゃないよね!?」
「嬢ちゃん! 神託魔法でのバックアップは任せた!」
「ここで使わずして何時使うと言うのか? 高次鋭刃」
「とっつげーっき……するには、デカくて早くて、怖いみゅ~。オイラもバックアップするみゅ~。オイラの弓は100発70的中みゅ~」
「100%じゃないのかよ!?……って、7割ありゃ十分か? かまわん、足元でうろちょろされるより遥かにマシだ!」
「駒を射るには将を射よ。と精霊は言ってます。犬使い、お覚悟を! 精神崩壊!」
「それ逆だから! いつかその精霊、問い詰めてやる! だが、良い判断だ!」
「じゃ、僕も追撃するね! 神の見えざる鉄槌!!」
とまあ、揃ったところで撃退。ラートリーもロープでぐ~るぐ~る。縛ってさるぐつわ~♪
しばらくすると、馬車に乗って、2~3人のメイドと、残る一人を連れたタテロールが!! そんで、こんどはゲイルが交渉。
「紳士な私としては、人質のお嬢様方を無事に帰してやりたい。素直に交換に応じてもらえないか?」
「ぶ~!ぶ~!」 皆でブーイング。それをクマさんが制して「片方を見せしめに殺そうとした奴らの、言葉に素直に従えと?」
「ふむ。なら、ラートリーの非礼を詫びて、チャンスを与えよう。私と決闘したまえ。君らが勝利すれば無条件で彼女を帰すとしよう。だが、私が勝ったなら、おとなしく交換に応じてもらおうか」
どうする?
1=おとなしく相手の言うことを聞いて、人質と絨毯を交換
2=ダメもとで一騎打ち
3=乱戦覚悟で、皆で攻撃
3は人質とジニアス君が危ないので、人としていかん!ってので、1は悔しい……けどってので、2を……誰が行く?
ゲイル兄さん!! へ?ダメ? 何で? 魔導帝国の貴族を“俺”が傷つける訳にはいかない?
(ゲイル兄さんは、剣王国“リュクセード”の豪商の息子。お互いに身分を知ってる状態で、魔導帝国の貴族と殴りあうのは、実家的にマズイらしい)
「経緯はどうあれ、君をうっかり死なせると困る」
「……不本意だが、ここでうっかり、“俺”がそいつを殺しても困る」
じゃ他に、ちゃんばら出来そうなのは……、ぼく~♪……へ?他にいない?
「お願いします!僕未熟ですから、誰か止めてもらわないと困るのです!」 あせあせ。
そういったら後ろで、スティンガー姐さんが「うわ、素直っ」って言いやがった。ぐぬぬ……。
「誰であろうと決闘を受るからには加減はしない。だが、安心したまえ。子供といえど女性であるなら、止めは刺さぬよ」
タテロールも決闘を認めてくれました……。けど……はぐぅ!
魔法の剣(例のオークが持ってた剣)も当たらない……(刀はまだなれてない)
あいたっ!? くらくらする~。気が付くと、ゲイルが絨毯を渡してました。あぅあぅぁ……。
「ん? ああ、まあ良い。
―――そこの勇敢にて無謀な少女には、これでも使うと良い。では、さらばだ!」 ポイっと高めの治療薬。
途中で、ゲイルが周りに「動くな!」って。……何?……地下ギルド? 来てたの? ……とにかく渡して、姉を救出。で、タテロールが馬車に乗り込む。
(地下ギルド的には、余所者に好き放題されるのは面白く無いので、そっちはそっちで、独自に動いてたらしい)
そして、馬車が動き出した後に、周りに隠れてた、地下ギルドの連中に、めっささわやかに「好きにしろ!」って。ナイス♪
「悪徳商人こわいみゅ~」
「……重要なのは結果であって、手段はどうでも良い」
「「否定しないのー?!」みゅ~?!」
して、ラートリーをどうするの? 地下ギルドと官憲どちらに引き渡す? ギルドだね。
「遺言はあるか?」とゲイル。
……笑ってる……。
ラートリーの遺言「先に逝ってまってるぞ!!」……はぅ!戦神の天上園でございますか?!(違
ともあれ、無事解決~♪
さて、次の日、魔術ギルドより「ハロルドを追って、魔法の絨毯を取り返して欲しい」と依頼。サーシャは?
サーシャの方には行けないの? ヤダヤダヤダ、イヤァ~ン!?
サーシャに会いに行く~!!
「ユニコーンの角は、伯爵に預けてる。そして、スティンガーとミュッカに、その角をギルドに渡すように、伝言しに言ってもらった。
だから、俺らは先に追いかけても問題ない。それに、ゆっくりしてると、お貴族様に逃げられるだろ?」
「へっぽこでも、回復役は重要だと、精霊は言っています」
「ま、こっちはアタイに任せときな」
「おいらもついてくみゅ~、大船に乗ったようなものみゅ~」
「その船、穴が開いてないか? でも、まあ、大丈夫だろ。ローガって用心棒も居ることだしな」
…………・結局。多数決と正論には勝てません。いーもん。すねてやる。そして、僕は乗合馬車のすみでいじけてます。
次もタテロールと会うのかな~?……・みんな嫌ってるのに。
向かう先は南方の海洋都市“イルガルド” 西方郡国の海運拠点で、気温の高いところ。
常夏のリゾート地としても有名なんで、ちょっと楽しみかも?
登場人物
ジニアス(男)利発な少年。正体は魔術ギルドの禁書庫の番人。
ミル&ミーア (女)ジニアスの二人の姉。実は血のつながりは無い。
ハロルド(男)グランドリアの貴族。剣聖級の達人。マクガイアの知り合い。武装メイド隊を所有している。
ロレンツォ(男)貧者の義賊団の首魁。外道では無いが、善人でも無い。