第ニ話 「クレア救出戦線」
その昔。魔族率いる魔王の軍団があった。
二つある大陸の、片方が瞬く間に制圧され、残る大陸にもその魔の手は伸びた。
だが、ある時、神に選ばれた勇者が現れ、各地で暴れる魔将を撃破。
―――長い戦いの末、魔王を打ち倒し、世界に平和が訪れた。
しかし、勇者は決して一人で戦ったわけではない。それを支える者達が居た。
彼らは、戦えぬ者の防人。立ち向かう者と称される、魔物を恐れぬ勇士であった。
冒険者は、魔王戦後。その勇士たちが立ち上げた組織に属するもの達の総称である。
故に冒険ではなく、冒険者と呼ばれているのだ。
―――って、グラシア君が言ってた。
冒険者になるには、身分証があればおっけーで、身分証は、後ろ暗いことが無ければ、ここ聖王国だったら、正教神殿とかで簡単に発行して貰える。
つまり、冒険者は、それなりに信用ある身分ってことだね。僕でも、簡単になれたんだ~。
(身分証を貰えないような人は、傭兵とかになるらしい)
そんなわけで、次のお仕事~。
こんどの依頼も、冒険者の宿の主人“グラッド”おじちゃまから。
「隣街に居る、オルガって昔なじみから増援の依頼が来てな……どうだ、手が空いてるな話を聞いて来てくれないか?」
僕は鎖鎧を買って極貧で、食事に多少の困難があって、ミャアってな感じで道中をすごして、花の都“ラックス”へ。
「断食も、神の試練です! きっと……たぶん!」
「美味いみゅ! 美味しいみゅ! 食べられないのは可愛いそうだみゅ」
「ぐぬぬ……」
「予算の使い方が甘い。先行投資は重要だが、足元を見ないと転ぶ。ほら、嬢ちゃん、これでも食え」
「ありがたや~、これぞ神の恵み!」
「邪神かも知れないけど?」
「悪徳商人こわいみゅ~、ホネまでしゃぶられるみゅ~」
「恩を着せてカタにハメるんですね? わかります。精霊に聞きました」
「やさぐれた精霊も居たもんだな、って、おい! 誰が悪徳商人だ!?」
「ゲイル(満場一致)」
「お・ま・え・ら……」
こんな感じで騒ぎながらラックスに到着。
それで、片足のオルガさんの所に行って話を聞いた。
内容は「冒険者をやってる娘・・“クレア”が消息をたった。そこで探しにいこうと思ったが、自分はこの様だ(片足が義足)、そこで仲間が欲しかったのだが・・・」とのこと。どうやら、グラッドおじちゃまが来るのを期待していたのに、僕ら駆けだしがきたのでちょっと困ってるみたい……。
でも、片足のおじさん1人よりかはみんなで行ったほうが安全だよと説得して、詳しい内容を聞いた
なんでも、クレアさんは“つむじかぜ”って言う名うての冒険者の1人で、最近はラックスで“巡回衛視”をやってたらしい。
(巡回衛視ってのは、ラックス独特の職業で、町や村を巡回して揉め事を解決する巡察官の冒険者版?みたいなものらしい)
そして、その巡回の途中で、“つむじかぜ”のパーティーごと消息をたったそうで、僕らはとりあえずその消息をたつ直前に寄ったって言う村に行ってみた。
「ここは、トキト村です」
「あの……、村長さんは?」
「ここは、トキト村です」
「え? だから、村長さんは……」
「ここは、トキト村です」
「……」
「……」
「ここはトキト村……ですよ?」
「何故、疑問形!?」
ただちに村で聞き込みをするけど、明らかに村人の様子がおかしい。とりあえず泊まって、夜見張りを立てることに。
見張りは3回交代で、3回目の夜明け前にグラシアくんが、森にこっそり入っていくオルガさんを発見。声をかける
「おぬしらの新米の助力は必要ない。ここはわしが・・・」とだだこねるのをいさめて事情を聞く
なんでも、冒険者をやってた頃、この辺りにある古い遺跡を拠点にした邪教団を潰したことがあるそうで、この辺りで消息をたったと聞いた時から、その邪教団の残党がここの遺跡で何かしてるのではないか?と思ってたらしく、もし、本当にそいつらの仕業なら、僕たちひよっこ冒険者の手には余る。でも、娘は助けたい。だから、1人で行こうとしてたんだって……信用無いな~グスン。
そして、オルガさんの記憶を頼りに遺跡へ。すると通路の途中でさっそく邪神官と遭遇!。それで、そいつらを撃破して、先に進むと牢屋の中にエルフと大柄の男。そして老人の三人が囚われていた。
「誰だか知らんが助かった。そこにある武器をとってくれ。そうすれば、後はなんとかなる。なんとかする!」
「その杖も忘れんようにな。それは大事なものなんじゃ」
「ポーチだ、ポーチを渡せ! それがアレばこの程度の鍵なんか――」
「クレアは何処じゃ!」
「……奥に連れられていった。だから、早くここを出たいんだ。さあ、その金棒を―――」
部屋の隅っこに武器とかがあって、それを渡そうとしたらまた邪司祭が来た。でも、その時オルガさんは娘の身を案じ、そいつらの横を抜けて先に行っちゃった。
で、邪司祭は「そこの娘も捕らえろ!!」 え! 僕?!
牢屋にいた魔術師いわく、クレアさん共々、生贄にするつもりらしい……させない!!
「ええーい!!」
「こら嬢ちゃん! 突っ込みすぎだ」
「おいらも、いっくみゅー」
「ええい、足元でうろちょろするな! 邪魔だ!」
「旦那が大きすぎるだけみゅ~」
「下手な魔法は巻き込むから……ここはコレだ! 防膜壁」
「前衛頑張って! 精霊も応援してるよ~」
「連携がなっとらんのぅ」
「駆け出しっぽいな。動きが甘い」
「だが、俺らの命運は、その駆け出しに掛かってるってか? 笑えねぇ……」
なんとかこいつらも倒して、ちょっと装備をかすめた。それから牢屋から脱出した3人と一緒にオルガさんを追いかける。
(かすめたのは魔術補助に使える“魔石”などのちょっとしたもの)
途中で分かれ道があったので、僕らと彼らで二手に分かれて進んでると、広い空間にでて、そこでオルガさんが竜牙兵3体と闘ってて、そのちょっと奥に高司祭っぽいのがいた。
オルガさんは、金属で補強した杖で巧みに応戦してるけど、すでに血みどろでふらふら、ヤバイ?!
崖の上に当たる、ここからその場所にいくには回り道してスロープを降りるか、崖を降ってショートカットするかの二択。僕は怖いから回り道~。
(ゲイルは果敢にショ-トカットを選んで、見事に足を滑らし泡や転落死?!って場面もあったけど何とか無事到着~♪)
「危うく戦う前に死ぬとこだったぜ」
「旦那、無茶しすぎみゅ」
「リスクコントロールは、商売の基本だったんじゃないか?」
「俺は商人じゃなく、重戦士。冒険者なんだから良いんだよ!」
「そんなことより、早く加勢しないと! 回復光!」
「おおう、イリスに窘められるとは……そいじゃ、少し本気出しますか―――“雷槍”」
「土精の石弾! 纏めて吹っ飛べ―!」
「おのれ、老いぼれに続き若造どもがゾロゾロと!! コレだから冒険者は嫌いなのだ!!」
「なんか奥で喚いてるのが居るみゅ」
「黒幕っぽいね。じゃ、弱らせるか―――精霊よ! 魔力減衰!」
「ぐう?! 精霊使いか? おのれええええぇ!!」
「あ、逃げた」
「待つみゅー」
危ないところで竜牙兵を倒して、逃げた高司祭を追い詰める。
すると、逃げ足を止めるために回り込んで居たミュッカの、さらに後ろから鉄人形が登場!?
「おわた、みゅ~」
「ふぁはは、さあ守護者よ!、その力を我れらが神のために振るえ! そして捧げ・・・よ? あっ?!」
ミュッカピーンチ!!(僕らもだけど)でも、いきなり、ずずーんと倒れて、その後ろから別の方向に行ってたクレアさんの仲間たちが。
「硬いだけのウドの大木なんざ、地の利を生かして闘えば敵じゃねえぜ!!」
「ほっほっほっ、ようは、正面から戦えば負けるってことじゃがな」
「勝ったからよし! それに正面から闘うのは、騎士にでも任せりゃいいのさ」
「おのれおのれ、道理を知らぬ冒険者どもがー!!!」
(後で聞いたら、高低差やロープによるトラップ&陽動で攻撃を防ぎ。金棒の火力に頼って倒したんだって)
―――と、ここまでは良かったんだけど、次に高司祭が何事かを唱えると、司祭のマントの影からクレアさんが出てきた(気絶してる)
しかも、ガチャンと、通路の隔壁が閉じて3人の冒険者とまた分断されるし……。
「さあ、この女の命が惜しければ道を開けろ!」
って脅してくる。どうしよう?って思ってるとオルガさんが捨て身でアタック。その隙にクレアさんを救出!!。
でも、オルガさんが呪毒の魔法で毒を食らって大ピンチ!!!
僕は解毒はまだ使えないよー!?
あれ?クレアさんて確か……。「魔力供与!!」高神官のクレアさん復活。そして「音楽の神に願います。身を蝕む毒を取り除き給え! アンチドート!」
後は、オルガさん&クレアさん&僕らの7人がかりで高司祭をぼこって勝利!!
倒すと同じくらいに、壁をぶち破って3人の冒険者も合流~♪
終わった終わった~疲れた~。って、あれ?その大柄な戦士の人を良くみると見覚えが……。
「カーライル兄さん?」
「……イリスか?」
僕の故郷の村の、自宅の隣に住んでいた幼馴染でした。
ミッション終了~♪。今回も無事でした!!
(後々カーライル兄さんたちには世話になります)
登場人物
カーライル(男 )勇戦士。 “つむじかぜ”と呼ばれるベテラン冒険者パーティのリーダー 。
ブローク(男)斥候&情報収集役のエルフな盗賊。エルフのくせに、人間社会にどっぷりと染まってる。
クレア(女)このパーティの良心。芸術の神の高神官で歌姫でもある。読めない古い楽譜を持っている。
クローフィス(男)やさぐれた魔術師の爺さん。パ-ティの知恵袋。皮肉屋で性格はあまり良くないが腕は立つ 。
グラッド(男) “天使の囁き”亭の主人。元冒険者らしい。
オルガ(男)片足を失ない引退した元冒険者の細工師。クレアの父親。