第8話:空飛ぶ無人機(ドローン)と『魔力雲(クラウド)』サブスク! 暴走王女が空から市場を制圧する
「あははははっ! 見ろアルス! 次の契約だ! あの領主も私の『アルティメットプラン』の素晴らしさを骨の髄まで理解したようだな!」
上空数百メートル。
俺とリーゼロッテ、そして暴走王女フレアは、巨大な浮遊型ゴーレムの甲板から眼下の領地を見下ろしていた。
フレア王女の周囲を飛び交う真紅の支援ユニットが、地上に向けて一斉に「祝砲(という名の威嚇レーザー)」を放つと、白旗を振る領主の姿が見える。
「……王女殿下みずから、あんな物理的な『トップセールス』をかけるなんて。紹介ネットワーク(バイラル)の広がり方が異常だわ」
リーゼロッテが呆れたように眼鏡を押し上げる。
王女の口コミ(という名の暴力的なプレゼン)により、超高額のVIP限定プランは各国の王侯貴族に爆発的に普及していた。
「さて、顧客リスト(インフラ)は十分に育った。リーゼ、次のフェーズ『空間データ・サブスクリプション』に移行するぞ」
俺は魔力盤を弾き、新たな【全自動化】システムを起動した。
「ズドドドド……!!」
親機である巨大ゴーレムのハッチが開き、中から無数の「小型四発回転翼ゴーレム(ドローン)」が空を埋め尽くすように飛び立った。
「なっ、なんだあれは!? 鳥の群れ……いや、全部ゴーレム!?」
「名付けて『全自動・クラウド視察』サービスだ」
俺は空中に、巨大な半透明のスクリーンを投影した。
そこには、無数の小型機が上空から捉えた、大陸中のリアルタイムな映像が鮮明に映し出されていた。他国の軍隊の動き、未開拓の森の資源状況、さらには遠く離れた故郷の美しい景色まで。
「この小型機が収集した映像データは、すべて仮想の『魔力雲』領域に自動保存される。VIP顧客は、手元の端末から毎月定額を払うだけで、いつでもどこでも、ドローンが撮影した上空からの景色や情報を閲覧できるってわけだ」
「……っ!! 空間と情報の完全な独占……!! これがあれば、世界中の経済も軍事も、すべて私たちがコントロールできるじゃない!」
リーゼロッテが戦慄とともに歓喜の声を上げる。
わざわざ現地に行かなくても、安全な王都にいながらにして世界のすべてを視察できる。こんな魔法以上のサービス、金に糸目をつけない貴族たちが飛びつかないわけがない。
「おまけに、このクラウドシステムには『デジタル記念碑』の機能もつけてある。一族の栄華を映像データとして半永久的に魔力雲に残せる。オプションで白金貨50枚だ」
「アルス、お前は本当に恐ろしい男だな! あはははっ、私もそのクラウド視察とやらで、次の狩り場(営業先)を上空から探させてもらうぞ!」
空飛ぶゴーレムの群れと、クラウドという圧倒的な情報網。
もはや俺たちの商会は、単なる物の売り買いを超え、世界の「インフラ」そのものになりつつあった。
――その頃。
王都の路地裏で、ボロボロの衣服をまとった男が空を見上げていた。
かつて『栄光の剣』を率いていたギルドマスターだ。
「な、なんだあの空を飛ぶ鉄の鳥たちは……。あんなものがあれば、冒険者の偵察任務など……もう誰もギルドに依頼しなくなる……っ!」
彼はついに理解した。
自分たちが手放した「一日中デスクに座って何もしない無能」は、ただの術師などではなかった。
世界のルールそのものを、文字通り「上書き(アップデート)」してしまう、規格外の怪物だったということに。
「お、俺が悪かった……アルス、頼む、俺もそのサブスクとやらに……」
しかし、泥水をすする彼の声が、雲の上の俺たちに届くことは永遠にないのだった。




