第7話:超高額VIPプラン『アルティメット』の誕生と、暴走王女のステルスマーケティング
「全国100店舗の無人魔法店……その『集客』はどうするの?」
王都を見下ろす丘の上で、リーゼロッテが尋ねる。
どんなに素晴らしい全自動店舗網を作っても、客が来なければただの箱だ。だが、俺にはすでに「世界をバズらせる」ための完璧なシステムが組み上がっていた。
「富裕層向けのサービスを『3つの階層』に分けるんだ。一般向けの『スタンダード』、貴族向けの『プレミアム』。そして……紹介制かつ超高額のVIP限定プラン『アルティメット』だ」
俺が構築した『アルティメット』プラン。
それは、俺のシステムと連動した小型の防衛ゴーレムが24時間体制で顧客を護衛し、さらに一切の手間なく最高級の物資が自動納品され続ける「究極の権利」。
月額費用は、王都の城が一つ買えるほどのふざけた価格に設定してある。
「そんな馬鹿げた価格のプラン、一体誰が……」
リーゼロッテが絶句したその時。
「ズガァァァァン!!!」
突如、丘の斜面が吹き飛び、土煙の中から一人の少女が飛び出してきた。
豪奢なドレスの裾を破り捨て、身の丈ほどもある巨大な戦斧を担いだ金髪の美少女。
王都の第一王女にして、無類の戦闘狂として名を馳せる『暴走王女』フレアだ。
「見つけたぞ、全自動の主よ! お前が作ったという『イージスペンダント』、素晴らしかったぞ! だが、あんな小手先の防御では私の全力の魔力に耐えきれん! もっとだ、もっと私を満足させる『全自動』を出せ!」
王女が目を血走らせて迫ってくる。
普通なら不敬罪で即死の場面だが、俺はニヤリと笑って魔力盤を操作した。
「ちょうどいい。フレア王女、あなたをVIPプラン『アルティメット』の顧客第一号として認定しよう」
俺が指を鳴らすと、銀色の相棒『GR-J76』の荷台から、王女専用にチューニングされた真紅の浮遊型自動支援ユニット(ドローン)が飛び出し、彼女の周囲に展開した。
王女が戦斧を振るうたびに、ドローンが自動で敵の軌道を計算し、最適な魔法障壁と追撃のレーザーを放つ。さらに、王女の魔力消費に合わせて、空間転移で自動的に最高級ポーションが口元へ転送される。
「な、なんだこれは……! 攻撃も防御も補給も、すべてが全自動で最適化されている! 私はただ、目の前の敵を殴る快感だけに集中できる……!!」
「お買い上げありがとうございます。月額料金は王家の国庫から引き落とす設定にしてあります。……それと、もう一つ機能が」
俺は震える王女に、一枚の水晶板を手渡した。
「その『アルティメット』の快適さを、他の貴族や他国の王族に『紹介』してください。紹介ネットワークを通じて新規契約が取れるたびに、あなたに強力な特注武器をポイント還元する『リファラル(紹介)システム』を組み込んであります」
「紹介すれば、もっと強い武器が全自動で手に入るだと……!? ははっ、あははははっ!! 最高だ! おいお前ら、今すぐ他国の王族どもを夜会に集めろ! 全員にこの究極のシステムを売りつけてやる!!」
戦闘狂の王女は、一瞬にして俺の商会の「最強のトップセールスマン(広告塔)」へと変貌した。
彼女の口コミと圧倒的な実力証明により、俺の全自動ビジネスは王都の貴族階級へ爆発的に拡散していく。
その頃。
資金難でボロボロになったギルド『栄光の剣』のマスターは、王家に最後の資金援助を頼み込んでいた。
「フレア王女殿下! どうか我々ギルドにご出資を……!」
「あ? ギルド? お前らのような手作業の非効率集団に払う金など1ゴールドもない。私は今、アルスの『アルティメットプラン』の布教で忙しいのだ。邪魔をするな!」
王女のドローンが放った全自動のレーザーによって、ギルドマスターは王城の窓から遥か彼方へと吹き飛ばされていった。
完全に王都の経済中枢を掌握した俺とリーゼロッテは、次なる「バカげた事業」に向けて動き出していた。




