第3話:全自動の圧倒的収益力と、無能ギルドの自滅
「な、なんだこの威力は……!? 手も足も出ねえ!」
物流ギルドの私兵たちが、地面に這いつくばっていた。
相棒の『GR-J76』が放ったのは、殺傷能力のない「重力圧の魔法」。だが、その洗練された制御の前には、剣を振るう隙すら存在しない。
「言っただろ、こいつは気が短いって」
俺は倒れた男たちを横目に、集まってきた商人たちに声をかけた。
「さて、商売の話を続けましょう。この高品質ポーションですが……さらに『サブスクリプション方式』の契約も受け付けます」
「さぶすく……? なんだそれは?」
困惑する商人たちに、俺は【全自動化】の術式を組み込んだ小さな水晶板を配った。
「この板に魔力を登録しておくだけで、在庫が減ったタイミングで俺のゴーレムが自動で補充に伺います。皆さんは発注の手間も、重い荷物を運ぶ苦労もいりません。すべて『全自動』で解決します」
商人たちの目が輝いた。
物流ギルドの横暴に耐えてきた彼らにとって、それは魔法以上の奇跡に見えただろう。
一方で、俺の懐には「魔石」という名の現金が、構築した決済システムを通じてチャリンチャリンと自動で流れ込んでくる。
人件費ゼロ、在庫管理コストゼロ。圧倒的な利益率だ。
「よし、この街の物流網の構築は完了だな。次は——」
同じ頃。王都のギルド『栄光の剣』では、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されていた。
「ギルドマスター! 武器の自動修復が止まったせいで、前線の冒険者から苦情が殺到しています!」
「報酬の計算が合いません! 誰がどの魔物を倒したか、手書きの書類を洗うだけで三日かかります!」
「在庫のポーションがすべて腐りました! 保存魔法の維持システムが消滅しています!」
「ええい、うるさい! 予備の術師どもに手作業でやらせろ!」
ギルドマスターが怒鳴り散らすが、現場の術師たちは死んだ魚のような目をしている。
「……無理です。アルスさんが組んでいたあのシステム、数百人分の作業を一人で回してたんですよ……? 今さら手作業なんて、一万年かかっても終わりません……」
俺を「デスクで座っているだけの無能」と笑った彼らは、今になって気づき始めていた。
その「座っているだけ」の人間が、ギルドという巨大な組織の全機能を支えていた、唯一の心臓部だったことに。
バザルの街で、俺は『GR-J76』の銀色のボディを優しく叩いた。
「相棒、次はもっと大きな市場を狙うぞ。王都の連中が泣いて縋ってきても、もう管理権限は教えてやらないからな」
銀色のゴーレムが、俺の言葉に応えるように重厚な駆動音を響かせた。
次は『特注品』の製造ラインを自動化して、この世界の経済そのものを支配してやろう。




