第13話:全自動「魔力通信網(エーテル・ネット)」開通! 王様すらも「ライブ配信者」に変える圧倒的な情報支配
「アルス、大変よ! 各地の『無人魔法店』から、決済が数秒遅れるっていう報告が相次いでいるわ。決済額が巨大すぎて、今の伝書鳩や魔法の伝話じゃ情報の処理が追いつかないの!」
リーゼロッテが、集計ボードを叩きながら焦りの声を上げる。
国家予算レベルの金額が秒単位で動く『エーテル・ペイ』 の普及により、この世界の旧態依然とした通信インフラは、すでにパンク寸前だった。
「物理的な距離に縛られている限り、ビジネスの拡大には限界がある。……なら、空を支配するしかないな。相棒、カウントダウンを開始しろ」
「ズドドドド……!!」
本部の屋上ハッチが開き、銀色の重装ゴーレム『GR-J76』 が、特注の「通信中継ゴーレム」を抱えて現れた。
それは魔力エンジンを搭載し、高度数万メートルの成層圏まで一気に上昇する、この世界初の『人工衛星』だ。
「アルス、まさか……空に中継拠点を浮かべるつもり!? そんなの、神の領域だわ!」
「神なんて非効率な存在を待つ必要はない。俺の【全自動化】システムなら、数千機の衛星を完璧な座標に配置できる」
轟音と共に、無数の光の筋が空へと昇っていく。
数分後、俺の魔力盤 に、大陸全土を覆う網目状の青い光——『魔力通信網』の開通を示すサインが灯った。
「これで大陸全土、どこにいても『遅延ゼロ』でデータが届く。……そして、このインフラを使って、新たな『娯楽』を全自動で配信する」
俺が指を鳴らすと、世界中の街角に設置された大型モニターと、民衆が持つ『エーテル・ペイ』の端末に、鮮明な「映像」が映し出された。
そこには、自分専用のドローンに囲まれて上機嫌な、暴走王女フレア の姿があった。
『皆の者! 私は今、北の最前線で魔軍の将軍と対峙している! 私の華麗な戦いぶりを、この「ライブ配信」でとくと見よ!』
王女が戦斧を振るうたびに、ドローンが最適なアングルで迫力の映像を中継する。
さらに、画面の端には**【投げ銭】**のボタンが表示され、興奮した市民たちから天文学的な額の『エーテル・ペイ』が、全自動で王女の口座(と、俺の商会の手数料)へと吸い込まれていった。
「な、なんてこと……。戦いすらも『コンテンツ』にして、全世界から同時に集金するなんて……!」
「情報と娯楽を制した者が、世界を制する。……リーゼ、次は『サブスクリプション型・ニュース配信』の準備だ。これまで情報を独占していた神殿や貴族の権威は、これで完全に終わるぞ」
旧世界の支配者たちが「情報」という密室で私腹を肥やしていた時代は、俺の『全自動配信』によって終わりを告げた。
世界中の人々が俺のネットワークに接続し、俺のシステム無しでは一分一秒も生活できなくなっていく。
――その頃。
王都の酒場で、かつてのギルドマスターは、若者が水晶板を見ながら「フレア王女に投げ銭したぜ!」と盛り上がる姿を、ただ呆然と見つめることしかできなかった。
彼が必死に守ろうとしていた「ギルドの掲示板」というアナログな情報は、もはや誰にも見向きもされない歴史の遺物と化していた。




