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ピーンポーン
……
……
ピーンポーン
……
……
インターホンを2回鳴らした。
片手には2Lのペットボトルと、大量のお菓子と、ホールケーキをまとめて持っている。重いから早く出てきてほしいのに! などの気持ちとは裏腹に、サクラはゆっくりと鍵を開けて姿を見せた。
「もう。2回も鳴らしたのに。メールも返信ないし」
「……ごめん、ちょっと片付けが終わってなくて」
片付けなんて、いつもしてないくせに。と思いつつも、それは心に閉まっておく。開かれたドアから遠慮なく入り、まだ仕舞われていないコタツの上に、持ってきた荷物を置いた。
「本当に夜中に来るなんて」
「待ってるって言ったのはサクラでしょ。明日も仕事? きつかったらすぐ帰るけど」
「明日は仕事……でも、帰らないで。ウミと一緒にいたい」
「なにそれ。ずいぶん素直じゃん」
照れくさそうにはにかむサクラが、台所から2人分のコップと、お皿を持ってくる。私は受け取ったそれらに飲み物を注ぎ、ケーキの箱を開けた。
サクラの好きなフルーツタルトケーキ。びっしり敷き詰められた果物に、なんとか隙間を作ってロウソクを挿す。持参したマッチで火を灯すと、部屋の電気を消した。
暗い部屋の中で、赤白い炎が揺らめく。
時間も時間だから、クラッカーは無し。大声で叫ぶハッピーバースデーの歌も無し。小声で慎ましく、音のならない拍手で祝う。
歌が終わり静まり返った空間で、サクラの顔を、火がボヤけて照らした。吹き消すのを今か今かと待っているのに、サクラは垂れるロウに目を奪われ、ぴくりとも動かない。
「……
……
サクラ?」
恐る恐る声をかけると、我に帰ったサクラがまた、照れくさそうにはにかんだ。
「ごめん、いつもとテンション違うからぼーっとしちゃってた。ウミ、ありがとう!」
すぐにロウソクの火は吹き消され、束の間の暗闇が訪れる。私は手探りで電気をつけると、サクラのほうを見た。何事も無かったかのように笑って、包丁を取りに立ち上がった。
ケーキを切り分け、お菓子を開け、買ってきたジュースをぐびぐびと飲んでいく。
時計は見なかった。
過ぎていく時間はあっという間だから。




