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仲直り?

「うぅ…ここは…」


「起きたか、ケーリ。顔は大丈夫か?」


 目覚めたケーリオンの目の前にはユーファスが座っており、心配そうにコチラを見てくる。


「兄上…っ!!何故生きている!!貴方は殺されたはずでは!?」


「やはり知っていたか。まぁ、一度は殺されたがとある理由で生き返ったんだ。俺を消すにはあと一歩足りなかったな。」


 それを聞いたケーリオンは計画の失敗を理解し、絶望する。


「そんな……何でだよ…確実に始末できるって…これで僕が次期皇帝になれるって…」


 その瞬間、ケーリオンが地面に拳を叩きつける。


「クソッ!!何で生きてるんだよ…クソッ!クソッ!!どうして、いつも!!…グハッ!」


 ケーリオンが涙を流して愚痴をこぼす中、ユーファスは無言で顔面を殴りつける。ただでさえ腫れていた顔面がさらに血に染まる。


「くだらん言葉を聞かせるな。そして、全てを他人のせいにするな。そんなに俺を殺したいならお前自身で殺しに来い。」


 そう言って、地面に蹲るケーリオンの足元にナイフを投げた。錯乱したケーリオンはそのナイフを咄嗟に拾い、切先をユーファスに向ける。


「はぁはぁ……兄上、僕は貴方が大嫌いだ。僕に無いモノを全て持っている貴方が!!だから貴方の言う通り、僕が確実に殺す!!今、ここで!!」


 そう言って凄むケーリオンの手は震えていた。


「はぁはぁ…クソッ!止まれ止まれ!!震えるな!!」


 震える手を落ち着ける為に自分に何度も言い聞かせる。


「やってやる……うわぁああ!!」


 震える手を抑えながら、1分以上自分に言い聞かせていたケーリオンだったが、覚悟を決め、ユーファスに突っ込む。しかし、ユーファスは素手のままで回避する姿勢を一切見せない。

 そしてなんと、両手でしっかりと握ったケーリオンのナイフはユーファスの鳩尾に向かって真っ直ぐ突き進み、そのままユーファスの腹を抉った。全身でナイフを突き刺したケーリオンの顔に返り血が飛ぶ。


「はぁはぁ…やったのか?」


「ゴフッ!!はぁはぁ…いい突き刺し方だ。やれば出来るじゃないか。流石は俺の弟だ…」


 急所を穿たれたユーファスは限界を迎えてその場で倒れる。

 その瞬間、ケーリオンの背後からジーガスが現れ、ケーリオンを拘束する。倒れたユーファスの背後からは ねるが駆け寄り、瀕死となったユーファスの側に座る。


「そこまでです、皇太子殿下。」


「何!?お前は、ジーガス!!」


「ユーフ様!!……はぁあ!!」


 そう叫んだ ねるの髪色が黒に変わり、能力が発動する。倒れたユーファスの身体が黒い光に包まれ、やがて血で染まったユーファスの腹が元通りになった。

 気を失っていたユーファスも目を覚まし、その場で立ち上がる。


「ふぅ…今日で2度目の死か。実に面白い体験だった。」


「もう!!ユーフ様!!こんなに危険な事はもう絶対にやりませんからね!!ユーフ様が本当に死んでしまったら私…うぅ!!」


 ねるは泣き出してしまった。それに続いてケーリオンを抑えながらジーガスも声を上げる。


「全くです。貴方様はご自身の命をもっと大切になさってください。」


「すまんな2人とも。もうやらないから許してくれ。…ねる、そこまで泣かなくてもいいだろう?結局2人とも無事だったんだから。」


 それを聞いた ねるは泣きながら怒りを露わにする。


「うぅ!!またそんな調子のいい事言って!!私は許しません!!私の前で2度も死ぬなんて、ユーフ様は最低です!!しばらく口聞きませんから!!ふんっ!」


「何!!それはダメだ!!ねる!!俺の話を聞け!!おい!!」


「……ふん!」


 ねるはユーファスに肩を掴まれても、その言葉を無視してそっぽ向いてしまった。


「殿下、全て自業自得でございます。しばらくはお一人でお休みになられるのがよろしいかと。」


「…ぐぬぬ…本当にすまなかった…」


 完璧超人のユーファスも、親同然のジーガスと恋人相手には敵わなかった。


「クソッ!!何が起こってるんだ!!確かに鳩尾を刺して殺したはず!!まさか、その女が生き返らせたのか!!」


「ああ、俺の妻となる予定の女だ。他者を生き返らせる能力がある。…お前に一度殺されたのは、俺からの試練だ。自らの手で他者の人生を終わらせる覚悟、お前にはそれが無かった。皇帝になるにはそう言った冷徹さも必要だ、覚えておけ。」


 それを聞いたケーリオンは膝をついて手に持っていたナイフを地面に落とす。


「何だよそれ!!ズルい!!そんなの無敵じゃないか!!それに、僕に説教するな!!なんで……どうして兄さんばっかり…僕にはこの能力以外何もないんだ!!兄さんさえ……兄さんさえいなければ僕は!!」


 ケーリオンは涙を流しながらユーファスに向かって文句を言う。それを最後まで黙って聞いていたユーファスはゆっくりとケーリオンに近づいて、同じ目線までしゃがんで話しかける。


「…その…悪かったな。お前がそんな風に考えていたなんて知らなかった。というより興味がなかった。同じ父を持つ兄弟なのに、俺も自然とお前の事を避けていた。許してくれとは言わないが、今後は気をつけるよ。」


 ユーファスからの素直な謝罪を聞いてケーリオンは驚愕する。ユーファスは全てを見下している傲慢な男だと思っていたが、今は自分ごときに頭を下げて謝罪している。


「そんな…なんで…」


 その姿を見て、ケーリオンは心を打たれた。


(ああ…これが兄さんが皆から慕われる理由か…こんな僕ごときに頭を下げるなんて…文句ばかりで何もできない僕とは大違いだ。僕は、なんて…)


 ケーリオンはしばらく自分の中で葛藤していた。

 そして、答えを出す。


「兄さん…僕は…兄さんの事が嫌いです。それはこれからも変わらないと思います。ですが、今回は関係の無い女性を誘拐し、人質に利用した僕たち…いや、僕に非があります。本当に申し訳ありませんでした。」


 ケーリオンはそう言って頭を下げた。そしてそのまま続ける。


「今回の件は全て、代表である僕の責任。後日、陛下には全てをお伝えした上で、皇太子の地位を兄上に献上する様に掛け合います。こんなクズが、皇帝になれるはずがありませんから。それと、実行犯であるエルナ婆は僕の命令に従っただけで、最後までこの作戦に反対していました。必要とあらば、僕がこの場で死にます。ですから、どうかの彼女の事だけは助けてください。お願いします、兄上。」


 ユーファスはケーリオンの話を真剣に聞いていた。そして全てを聞いた後、笑顔で話しかける。


「責任を取る、か…うむ、流石はエルナの教え子だな。皇族として全ての責任を取るという覚悟は素晴らしい。だが安心しろ。エルナの事は俺も薄々勘付いてはいたし、今更殺すつもりは無い。相応の罰は与えるつもりだがな。それと皇太子の件だが、こっちから願い下げだ。俺は皇帝になるつもりはない、だからこの件を陛下に報告する気もない。俺の手で全てを終わらせて、侵攻を続ける。そして、いつか帝国が支配した平和な世界を2人で巡るんだ。それが俺たちの夢だからな。…な?」


「……」


 ユーファスはチラっと ねるの方を見るが、相変わらず無視された。


「とにかく!後のことは俺に全部任せろ。お前は今まで通りでいい。……だが、これからはたまに会いに行くよ。お前が俺の事が嫌いでも、俺とお前は世界でたった2人の兄弟なんだからな。」


「っ!!兄さん…すみませんでした!!僕は…僕は!!」


 再び泣き出したケーリオンの肩を叩く。


「ふぁああ…さっきからうるせぇな。また起きちまったじゃねえか。」


 あまりにも空気を読まない鈴木の登場に、ダンマリを決め込んでいた ねるも呆れながらツッコミを入れる。


「将士くん…空気読もうよ。今いいところだったのに、感動が台無しでしょ。」


「はぁ?そんなん知るかよ。それよりユーフ、手合わせしようぜ。寝起きで運動しときたくてよ。」


「はぁ…お前は相変わらずだな。分かった、今は夜だし、外でやろう。ケーリお前も来るか?」


「いえ、遠慮しておきます。僕、あの人嫌いなんで。」


 一気に涙が引いたケーリオンはキッパリと断りを入れる。ケーリオンはいきなり殴られた恨みをまだ引きずっているようだ。


「ははっ!!言ってくれるじゃねぇかクソガキ。また、ションベンちびらせてやろうか?」


「あれは純粋な恐怖からくる生理現象です。それに不快なので僕に2度と話しかけないでください。不快なので。」


「随分と嫌われてしまったな将士。お前とは話したく無いんだと。」


「それは兄上も同じです。悪かったとは思っていますが、僕が兄上の事を嫌いなのは変わっていませんから。勘違いしないでくださいね。」


「……そ、そうか…」


 恋人だけでなく実弟にも嫌われてしまったユーファスは過去一番悲しそうな顔をしていた。

死の淵から蘇った ねるは少し能力が進化?しました。もう一つの心臓が動き出した事で、特質が……

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