巻き戻し
範馬刃牙復活!!
薄れ行く意識の中、ユーファスは心の中で想う。
(爺、ねる、後は任せたぞ…)
そうしてユーファスの意識が失われた…
「ハッ!!ハァハァ!!ここは…成功したのか!?」
死んだはずのユーファスは突然目を覚ます。そして息を切らせながら辺りを見渡す。そこにはジーガスと、共に死んだはずの ねるがいた。
「殿下ぁあ!!!」
目覚めたユーファスを見てジーガスが涙を流しながら大声を上げる。そして ねるも涙ながらにユーファスに話しかける。
「よかった…ユーフ様……」
涙を流す ねるの頭を撫でながらユーファスは優しく話す。
「爺、ねる、よくやってくれた。俺はお前たちを信じていたぞ。」
「…はい…ありがとうございます…でも…ちょっと…眠気が……」
「ああ、もう二度と怖い思いはさせない。安心して眠れ。」
「…はい…おやすみなさい…ゆーふさま…」
そう言って ねるはユーファスの膝の上で眠ってしまった。
「うぅぅ!!殿下!本当に生き返ってよかったです!!今この瞬間まで、私がどれだけ心配した事か!!」
「ふふっ、すまんな爺。今後の事を考えると、これが一番良い方法だと思ってな。…それに復活できる確信はあった。ねるの能力は時間の巻き戻し、それには死の概念すら覆す力がある。ねるさえ生きていれば俺も生き返れるとな。まぁ、2人まとめて刺された時は少し肝を冷やしたがな。」
「その事ですが殿下、私があの後お二人をここまで運び出すまでお嬢様の心臓は止まっておりました。しかし、急に全身が光に包まれたと思ったら息を吹き返したのです。傷など全く無かったかのようになって。」
「ふむ…おそらくだが、片方の心臓を潰された事で死の淵に立たされ、もう一つの心臓が動き出したのだろう。今の ねるの鼓動が前と違うからな。それによって心臓を生き返らせたと言ったところか。心臓を潰しても死なないとは…やはり常識はずれの力だ。」
「しかし、既に死亡していた殿下を生き返らせられるかどうかは賭けでしたが、上手く行って何よりです。…それにしても殿下の予想通りとは言え、本当に殿下を殺害するとは…この恨みはどうしてくれましょうか…」
「やめろ、今回の件は俺にも非がある。王位継承権がない俺が結果を出しすぎた。彼らからすれば俺が軍を掌握して玉座を狙っていると思うのは当然の事。それでも帝国の掟によって俺が皇帝になれない故、始末しに来るとは思わなかった。掟によって許されていた俺の存在が、陛下のあの発言で、一気に危険人物となり、彼らが俺を始末するという考えに至ったのは当然の流れ。腕を失った痛みも、心臓を潰されて死ぬ痛みも、読み違えた自分への授業料として受け取って置こう。」
「殿下…なんと…」
しかし次の瞬間、ユーファスの雰囲気が変わる。
「…だが、この件に関係のない ねるを襲った事だけは絶対に許さん!俺の ねるに…あんな表情をさせるなど…ヤツらには俺自らが断罪を下してやる!!爺、先ずは情報収集だ。早くここから」
ユーファスが怒りを露わにしたその時、突然誰かの声がする。
「おーい、ユーフいるかー?おっ、いるじゃねえか。やっぱり生きてた。にしても遺体安置所にみんなでいるなんて、何やってんだよ。それに嬢ちゃんは寝てんのか?こんなところでよく寝られるな。」
部屋の扉が大きな音を立てて開く。鍵が掛かっていた扉を蹴り破って入ってきたのは将士だった。
「将士か、ちょうどいいタイミングだ。今すぐここを離れるぞ。俺の死体を確認しに陛下が来るはずだ。」
「お前の死体?何言ってんだ。お前は生きてんじゃねえか。…あっ!分かったぞ。お前らはユーフの死体を偽装してるんだな?何が目的かは知らねえが、いつもの悪巧みだろう?」
将士は全く見当違いな予測をしてドヤ顔をする。
「んで?作った死体はもう棺桶に入れたのか?俺にもちょっと見せろよ。」
そう言って笑いながら近づいてくる将士の能天気さに毒気を抜かれたユーファスは笑いが込み上げる。
「はっはっは!!やっぱりお前は面白いな、将士。だが、ありがとう。少し落ち着いたよ。…それより、その手に持ってるのは誰なんだ?」
「ん?ああ、俺が気持ちよく寝てたのを起こしやがった連中のボスっぽいガキだ。アイツら、いきなり俺を殺そうと襲ってきやがったから全員返り討ちにしてやったら、このガキがビビって小便漏らしやがった。それでユーフの居場所を聞いたら、死んだなんて意味不明な事を言いやがるから、ボコボコにしてここを案内させたってワケよ。ほら。」
将士はずっと左手で首元を掴んでいた男を乱雑に放り投げる。地面に転がるその男は既に意識を失っており、殴られたせいか顔は酷く腫れていた。
しかし、ユーファスとジーガスはその顔を見た瞬間、戦慄する。
「で、殿下…このお方は…」
「はぁ……ああ。弟のケーリに違いない。」
ユーファスは今までで一番大きなため息を吐く。
将士が連れてきた男は、第二皇子であり、皇太子でもあるケーリオンノインだったのだ。
「おっ!?コイツお前の弟だったのか。そいつぁわりぃ事したな。でも、殺してはいないからまぁいいだろ。」
それを聞いたジーガスが激昂する。
「鈴木殿!!貴方という人は一体何をやっているのですか!!皇太子殿下をこんな状態にしていいわけないでしょう!!これがバレれば良くて終身刑、悪ければ一族丸ごと公開処刑というレベルの罪です!!これ以上厄介ごとを」
捲し立てるジーガスを止めたのはユーファスだった。
「爺、もういい。コイツは皇族の事は全く知らないんだ、仕方ない。それより、逆に良い案が生まれた。ケーリを連れて逃げるぞ2人とも。爺はケーリを運べ。将士は俺たちの護衛だ。」
「おっ!流石はユーフ。話が分かるじゃねえか。よし、任せろ。阻むヤツらは俺が全員ぶっ倒してやるよ。」
「お待ちください殿下!!ケーリオン殿下を連れて行ってしまっては……いえ、殿下に従いましょう。」
ジーガスは色々と言いたい事を全て飲み込んでユーファスに従う事にした。そうして5人は安置所から飛び出して城を脱出した。
城を出た後はユーファスの的確な指示の元、分散して帝都を駆け回り、追手に見つからないように動いた。
その日の夕暮れ、約束した場所で5人は落ち合う。そこは帝都の外側にあるとある宿だった。その中の一部屋に全員が集まり、未だに眠っている2人をそれぞれベッドに寝かせた。そして、落ち着いた3人は椅子に腰掛ける。
「ふぅ…やっと会えたな。にしてもこんなに回りくどいやり方をする必要はなかったんじゃ無いか?かれこれ3時間近く動き回っていたぜ。」
「これぐらいやらねば、俺と同等の知恵を持つ人間がいた場合に見つかってしまう。それに俺は昔から、かくれんぼは得意でな。」
「全くです。城全体を使ってかくれんぼをした際、私も意地になって城内の人員を全て動員して挑んだ事がありますが、結局殿下が自ら出てくるまで、誰1人見つけることは出来ませんでした。その後陛下に2人とも叱られたので、二度とあの遊びは出来なくなりましたが。」
「そりゃ凄えな。確かに、ユーフの気配断ちは常軌を逸している。兎並みに耳がいい俺でも声をかけられるまで背後にいるのに気付かなかったからな。」
「まぁとにかく、5日はここが見つかる事はない。その間に全てを終わらせるぞ。」
「今度は何をおっ始めるんだ?また戦争か?」
「それはな………」
これから、ユーファスの反撃が始まる。




