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13/22

戦慄

1月中は更新が遅くなりそうです。

「はぁはぁ…マジかよ…まさか、こんなにも…」


 息を切らし全身汗だくで跪く将士の眼前には、ユーファスの銃口が向けられていた。


「ふぅ…俺の勝ちだな。もう満足したか?」


「クソッ!!……ああ、満足だ。ハッキリ分かったよ。今の俺ではお前には及ばないって事がな。だがな!俺は諦めねぇぞ。いつかお前を超えてやるからな!それまではお前の事を手伝ってやる。」


 しかし、ユーファスは不満そうな顔を見せる。


「それでは足りんな。魔力が無い俺は所詮、武器を振り回すだけの赤子だ。強力な能力を持ち、身体能力で圧倒するお前が無能力の俺に勝てない事自体がおかしな話だ。俺などあくまで通過点、お前は世界最強になれ。そうで無くては、お前の存在価値はない。」


「はっ!言ってくれるじゃねえか!いいだろう!俺は世界で最強の男になる!全ての国を滅ぼすんだろう?俺も協力するぜ、そん中で強いヤツを全員俺が倒せば俺が世界最強だ!!よし!もう一戦やるぞユーフ!!今日は夜まで付き合ってもらうぞ!!」


「待て待て、俺はお前と違って普通に疲れるんだ。少し休憩させてくれ。」


「知った事か!!オラァ!!」


「はぁ…仕方ない!!」


 2人の組み手はその日の夜まで続いた。ユーファスは全身筋肉痛で次の日はベッドから立てなかったという。



 別の日、ユーファスがジーガスと2人で廊下を歩いていると、1人の年配の女に出会う。その女はユーファスに気づくと、恭しく頭を下げて挨拶をする。


「おや、ユーファス様ではありませんか。お久しぶりでございます。」


「エルナ婆か、久しいな。」


 その女の名前はエルナ・ヴェレット。ジーガスの妻にして、主に王族の教育係を務める。ユーファスも幼少期に少しだけエルナの指導を受けたが、エルナではユーファスの能力が手に余った為、ジーガスが全てを教えることになり、それ以降会う機会が少なかった。現在は、皇太子の教育係をしている。しかし最近は、先日のジーガスの申し出によって ねるの教育を行なっている。エルナの性格は正に真面目一筋。王家への忠義が非常に高く、主人の為なら喜んで紙を選ぶ覚悟も持っている。

 そんな彼女は、城の中ではとある理由で恐れられていた。それはその真面目さ故の厳しさだ。特に同姓である女に対しては正に鬼そのもの。未だに死者は出ていないが、その指導方法は常軌を逸している。彼女の指導を受けた令嬢たちは、エルナの顔を見ただけで失禁してしまうほどのトラウマを植え付けられる。故に、令嬢の中の問題児達が懲罰目的で送られてくる事もある。しかし、その指導の効果は本物で、彼女たちは社交会や外交の場において非常に評価が高い。それ故にここまで厳しい指導が許されているのだろう。

 男であるユーファスは、その危険性について噂でしか聞いていない。故に軽い気持ちで ねるの様子について尋ねる。


「ねるの様子はどうだ?今彼女はどうしている?」


「殿下、それは…」


 エルナに預けた ねるの様子を聞いたユーファスに対して、事情を察しているジーガスは気まずそうな顔をする。


「はい。殿下に相応しい女性となるべく、私が教育を担当させていただいております。内容といたしましては、手始めに24時間の直立姿勢待機の訓練をしていただいております。そして、ご要望がございました、膝枕の訓練としまして10キロの重りを膝に乗せた状態での12時間の耐久訓練を継続中でございます。」


 それを聞いたユーファスは耳を疑った。


「……それはまさか連続している訳ではあるまいな?ちゃんと休憩はさせているのか?」


「もちろん休憩などございません。殿下の側に立つ女として、24時間殿下の仕事を支える事もあるでしょうし、その後疲労した殿下を癒す為の訓練ですから。何度か泣き出して逃げ出そうとしましたので、今はソファに身体を縛り付けて訓練を行なっています。先ほど一時的に眠ってしまったわれたので、寝ないように特殊な薬を飲ませて訓練を続行しております。」


「……爺、お前の妻は相変わらずだな。ねるは本当に大丈夫なのか?」


「…私から依頼しておいてなんですが、彼女には本当に申し訳ない事をしたと思っております。厳しくと安易に言ってしまった事を後悔しております。…エルナ、少し手加減してはいただけませんか?彼女が殿下の元から逃げ出してしまうかもしれません。」


「アナタ、私は殿下と彼女の為を思っているのです。ユーファス様ほどの偉大なお方の妻となられる方がそこらの令嬢と同じレベルの教育で良いわけがありません。これからも、もっと厳しくしていくつもりでございます。明日からは、5キロのおもりを持たせて、顔も笑顔を保ちながらやらせましょうか。」


「…うん…ほどほどに頼むぞ。…それよりエルナ、お前何か隠してるな?」


 ユーファスは急に表情を変えてエルナを睨む。ユーファスは、エルナの眼に宿った一瞬の濁りを見逃さなかったのだ。


「…滅相もありません。ところで殿下、そろそろ今日の彼女の訓練も終了いたします。是非一緒に来ていただけますか?」


 エルナは何食わぬ顔でこう言った。


「…まぁいい、分かった。案内してくれ。」


 ユーファスは言いたい事を飲み込んだ。


「ありがとうございます。彼女は既に心身共に疲弊しております。是非優しいお言葉で甘やかしてあげてくださいませ。人の成長には飴と鞭が大切でございますので。」


 エルナの案内の元、城のとある施設の中に3人は入って行った。その施設は、外から見ると監獄のような雰囲気を醸し出しており、城内では異質な空間だった。 中に入り、階段を降りて少し進むと、大きな鉄の扉の部屋があった。


「こんなところに…これでは囚人のようではないか…」


「城内にこんな場所があったとは…長年城に出入りしてきた私でも初めての場所です。」


「ここは私が特注して作ってもらった施設ですからね。私の教育で逃げ出す生徒たちを逃がさないための施設でございます。では、どうぞお入りください。」


 エルナがその扉の隣にあるタッチパネルに手を当てると扉が開く。すると、中にはソファに座る ねるがいた。しかし、その表情は完全に死んでおり、初めて会った時に近い状態だった。それでも背筋をピンと伸ばして座る ねるの膝には大きな重りが置かれ、ねるは無機質にその重りを撫で続けている。既に周りは全く見えておらず、3人が入って来たことにすら気づいていない。


「はい。そこまで!お疲れ様でした。もう辞めても構いませんよ。」


 時計の針が0になった時、エルナが手を叩いて終了を宣言する。


「……」


 しかし、それに気付いていないのか、ねるは微動だにしない。エルナは ねるの側まで近寄り、顔の前で手を振るが、反応がない。


「完全に正気を失ってございますね。…ねる様、ユーファス様が目覚めてもそのような態度を取るおつもりですか?いい加減にしなければ、さらに追加で…」


 エルナが耳元で囁くと、ねるは壊れた機械の様に急に動き出した。


「ひぃ!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!」


 その言葉を聞いた瞬間、ねるは土下座しながら謝罪を始めた。心身ともに満身創痍で、完全に心が壊れていた。


「よろしい。では、目覚められた殿下に一言声をかけてあげてください。それにて本日の訓練は終了といたします。」


「…おはようございます殿下。今朝はよく眠れましたか?私も殿下のお役に立てて………」


 その言葉を話している最中、限界を迎えた ねるはその場で倒れそうになるが、咄嗟にユーファスが支える。


「…あれ…ユーフ様が目の前に…これは夢…そうだ…これは夢なんだ…あはは…あはははは!」


 正気を失った ねるはいきなり笑い出す。


「落ち着け。これは夢なんかじゃない。俺はここにいる。」


「…ユーフ様…何で…すみません…私…根性がなくて…こんなに時間がかかっちゃいました…」


 ユーファスと目が合って正気を取り戻した ねるは涙を流す。そんな ねるを見てユーファスも笑顔で語りかける。


「ああ、お前はよくやったよ。今はゆっくり休め。」


「えへへ…そうですか…私…頑張りました…もう足の感覚もないです…私でも…いつかユーフ様に相応しい女性に…」


 ユーファスに褒められた事で ねるも笑顔になった。


「お前はそのままでも……いや、俺の為に頑張ってくれてありがとうな。これからも頑張ってくれ、俺もお前に負けないように頑張るからな。ところで、何か欲しいモノはないか?今回の褒美として何でも用意するぞ。」


「…そう…ですね……なら…帝都タワーに…連れて行ってください……また…ふたり…で………」


 その途中で、ねるは気を失ってしまった。力が抜けた ねるをユーファスが抱き上げる。


「分かった。必ず時間を作っておく。……眠ったか。エルナ婆、やはり少しやりすぎじゃないのか?こんな事が続けば、また彼女は心を壊してしまうぞ。」


「いえ、これで良いのです。命を賭けて国の為に闘う軍人と同じように、旦那を支える妻にも文字通り必死の努力が必要なのです。ましてや、第一皇子であり、これからの帝国を引っ張っていく立場であられるユーファス様の妻となられる ねるお嬢様には、貴方様の隣に立つ女だという自信をつけさせねばなりません。これはその為の訓練なのです。」


「正直、女の気持ちは俺には分からん。お前がそう言うのならそれが正しいのだろう。とりあえずは任せる。」


「はい、ありがとうございます。成長した彼女を楽しみにしていてください。では、私はこれで。これから呼び出しを受けておりますので。」


「……()()()か?」


「いえ、シンファ様です。申し訳ありませんが、これ以上の事はお伝えできません。失礼致します。」


 そう言ってエルナは部屋から出て行ってしまった。残された3人も部屋を出て、城の自室に向かった。


「爺、最近()()が裏で何か動いているかもしれない。調べておいてくれるか?」


「はい。かしこまりました。…妻にはバレぬように調べさせていただきます。」


「ああ…頼む。…最近、帰ってきたばかりでそっち関係は何も考えていなかった…次の戦争までに何も起きなければいいが…」


 公国との戦争後、後処理に奔走していたユーファスには知るよしもなかった。敵は他国だけでは無いと。




ーー次の日ーー


 自室のベッドで今だに眠り続けている ねるを一目見てからユーファスは部屋を後にする。


「爺、今日のパーティは何か起こるかもしれん。常に警戒は怠るな。」


「かしこまりました。殿下の安全を最優先に動かせていただきます。」


 そうして2人が歩いていると、曲がり角でとある人物に出会う。


「…あ、兄上!…」


「ケーリ、それとバチラス卿。ここで会うとは奇遇だな。」


 第二皇子『ケーリオンノイン・サクラ』(以後ケーリオン)はユーファスの3つ下である腹違いの弟だ。多才なユーファスとは対照的に非常に平凡な男だが、皇帝になるのに必要な『真なる王』の血筋を引き継いでいた。それによって次期皇帝は彼になる事が確定しており、現在はケーリオンが皇太子である。

 ユーファスに気付いたケーリオンノイン(以後ケーリオン)が何か言う前に、隣にいたバチラス卿が前に出る。


「お久しぶりですね、ユーファス殿下。公国との戦争のお話聞きましたよ。まさに獅子奮迅の活躍、このバチラス、貴方様への尊敬の念が絶えませんなぁ。…しかし、殿下自ら前線に出て指揮を取るとは…少々出しゃばり過ぎなのでは?前線の指揮官たちもさぞ困惑した事でしょう。誇り高き我が帝国の第一皇子であられる殿下はその様な事はなさらずに、後ろでドンと構えているべきかと思いますが?」


 バチラス卿は古くから帝国に使える文官の家系で、現在は財務の大臣を勤めている。バチラス卿の妹であるシンファはケーリオンの実母であり、現在の皇后陛下である為、バチラス卿は甥であるケーリオンを支える立場であり、その地位を脅かすユーファスの事を面白くないと思っている。


「卿にそのような事を言われる筋合いは無い。能力を持つモノがその力を振るうのは強者の義務だ。俺は帝国の勝利の為に最善の選択をしたまでだ。」


「なるほどぉ、流石は天才と称されたお方ですなぁ。ケーリオン様にも見習っていただきたいところです。…ですが、貴方には皇位継承権はない。あまり国民や軍部の支持を得すぎるのは無用の疑いを招きます。お気をつけください、次期皇帝はケーリオン様なのですから。」


 そう言ってバチラス卿はユーファスを睨み付ける。


「そんな事は分かっている。お前たちが邪推するのは勝手だ。心配なら、さっさと父上を説得してケーリに玉座を渡してやればいい。俺は皇帝の地位に興味は無い。…だが、俺の目的の邪魔をしたら誰であろうと容赦なく潰すぞ?覚えておけ。」


「ほぉ…怖い怖い。ご忠告痛み入ります。では、行きますよケーリオン様。」


 そう言って立ち去ろうとした時、ケーリオンが待ったをかける。


「バチラス卿、貴殿は心配しすぎだ。兄上に皇位を簒奪する意思はない…と、思う。貴殿が僕の事を思ってくれているのは分かっているが、兄に牽制するのも程々にしてくれ。」


「これは失礼致しました。両殿下の前で失礼な態度を取ったことを謝罪いたします。」


 そう言って、バチラス卿はいやらしい笑みを浮かべながら2人に頭を下げる


「……まぁいい。行くぞ、爺。」


 ユーファスはバチラス卿の濁った目を見逃す事は無かったが、彼がユーファスを疎ましく思っているのはいつもの事だったので、何も言わなかった。


 そもそも、今の帝国には派閥の概念が薄かった。皇族の血を引く男子は2人。その内の1人は魔力が全く無い特異体質であり、もう1人はしっかりと必要な血筋を受け継いでいる。誰が次の玉座に座るかは明白だった。故に、有力な貴族たちはケーリオンを支援する派閥として一本化されたのだ。だが、最近になってユーファスの戦争での活躍によって、軍部に関係する者たちがユーファスを次期皇帝として推す様になってきたのだ。本人がその気がないと公言している為、まだまだ規模は小さいが、圧倒的な才覚を持ち、既に実績も凄まじいユーファスが皇帝になりたいと一言宣言するだけで、パワーバランスは一気に逆転する。

 ケーリオンの派閥のトップであるバチラス卿も、それをかなり危険視している事は明らかだった。


(この男、何か企んでいるな…このパーティが終わったら対策を打っておくか…)


 不安を抱えたままユーファスは会場へと向かった。


 本日予定されているパーティは、先日の公国との戦争での論功行賞と、これからの戦争の事についてだった。

 4人がその場所に到着すると、有力な貴族や、大臣たちが既に集められており、パーティが始まっていた。そして、2人の皇子が会場に入ると皆が一斉に頭を下げる。それによって会場に沈黙の時間が流れる。


「…」


「え、えっと…皆ありがとう…頭を上げてくれ。ええっと…今日は宴だから…楽しんでくれ!」


 ユーファスは敢えて何も言わずに、弟であるケーリオンに話すように促した。これによって、2人の力関係を示し、皇太子であるケーリオンを立てたのだ。


 席に向かうべく、ユーファスが会場内を歩いていると、とある参加者の男に話しかけられる。


「お久しぶりですな、殿下。今回の公国戦の活躍、聞きましたよ。やはり、俺の見込みは間違って無かった。次も期待してますよ。」


「ゼスヴァンか。公国の今後について、丸投げしてしまってすまないな。また、困ったことがあったら言ってくれ。」


「ええ、もちろん頼らせてもらいますよ!…それと、今日は各軍の隊長たちを連れてきました。西軍の隊長だけは忙しくて呼べませんでしたが。」


 そう言ってゼスヴァンの後ろから現れた3人が話し始める。


「殿下、お久しぶりです。ルナリカ・レトロームです。今回の戦、あれだけの規模だったにも関わらず被害が少なく勝利する事が出来ました。私の大切な部下たちも大勢生き残りました。改めて感謝いたします。」


「ルナリカ、腹の傷はもういいのか?」


「未だ、完治はしていませんがパーティ程度でしたら大丈夫です。あの少年とは何れ決着をつけねばなりませんしね。」


 ルナリカは腹を抑えながら、次は負けんと笑顔で答えた。


「そうだな。応援しているぞ。」


 次に4人の中で最も体格が大きい男が近づいてくる。


「殿下、お初にお目にかかる。我は北軍の軍隊長のビルガムと申す。前回の女王国侵攻の時には怪我で養生していた故、参加できず、全ての指揮を任せてしまい苦労をかけた。」


「お前がビルガムか。北軍の軍人たちは皆お前の事を素晴らしい隊長だと誉めていた。これからも帝国のためによろしく頼むぞ。」


「我にお任せを。では、挨拶もした事であるし、失礼する。」


 そう言ってビルガムは颯爽と会場から出て行ってしまった。すると、ゼスヴァンが申し訳なさそうに話しかけてくる。


「殿下、ビルガムの無礼をお許しください。彼も叩き上げの武闘派ですが、あまり貴族が好きではないようでして…ご不快でしたら次回からは副隊長をお呼びいたしますが。」


「構わん、俺はそんな事は気にしない。それで、お前は?」


 ユーファスは最も後ろに控えた男に目を向ける。


「は!私は南軍の隊長であるモレッドです。まだまだ若輩者ですが、よろしくお願いいたします。」


「聞いているぞ、何でも天才と呼ばれている軍師なんだってな。」


「いえいえ、それほどでもありませんよ…しかし、女王国と公国をあれだけ少ない被害で落とした殿下の力、私も直接見てみたいモノです。南軍を使う際は是非よろしくお願いいたします。」


「その時はお前の力にも期待しているぞ…っと、少し話しすぎてしまったな。3人とも是非このパーティを楽しんでくれ。…それと一つだけ、このパーティで何か一波乱起きるかもしれない。何かあった時は頼むぞ。」


《はっ!》


 ユーファスは頭を下げる3人の横を通って皇子が座る席についた。

 全員が揃ったところで皇帝が立ち上がり、話し始める。


「これで全員揃ったな。では、先ずは今回の公国との戦争の勝利を祝って乾杯だ!」


 皇帝自らの音頭によって会場の雰囲気は更に高まる。


 そして場も盛り上がった中、論功行賞が始まった。


「先ずは、今回の戦争で戦った東軍の兵士全員へ。彼らの活躍無くては戦争自体が成り立たちませんでした。全員に手厚く褒賞を。更に活躍が目覚ましかった者には…………」


 戦争に参加した軍人たちの代表者が次々に表彰されていく。隊長であるルナリカはもちろん、大将軍であるゼスヴァンまでも功を受けた。

 そして表彰の最後にユーファスの名前が呼ばれる。


「では最後に、今回の戦争の総指揮を取られたユーファス殿下へ。その的確で迅速な指揮によって、今回の戦争での死者数が事前の予想の5分の1以下となりました。最後には自らの手で大公を討ち取り、戦争を勝利へと導きました。」


 ユーファスは席を立って皇帝の元へ行き、その場で跪く。


「我が息子よ。前回に引き続き、素晴らしい活躍であった。お前には金など必要ないだろう。何が欲しい?」


「それは当然、次の戦争への許可です。すぐにでも次の戦争に移りたいのです。」


「まぁ、少し待て。あまりにも戦争ばかりだと、国民も納得せぬ。だから、あと1年は待て。」


「だからこそ、今回の褒賞としてお願いしているのです。是非お願いいたします。」


 そう言ってユーファスは頭を下げた。しかし、皇帝は困った顔をする。


「うーむ…そうは言ってもなぁ…皇室の印象を悪くするワケにも行かないし…」


 少し考えた後、皇帝は思い出したかのように話し始める。


「そうだ!前から少し考えていたのだが、ユーファスよ。お前、皇帝にならぬか?」


 それを聞いた瞬間、会場に戦慄が走った。参加者たちがどよめきだし、至る所で声が聞こえる。しかし、最も焦っていたのはユーファスだった。


「陛下!!冗談はお辞め下さい!!先ほどの発言、今すぐこの場で撤回してください!!」


 ユーファスは即座に撤回を求める。その顔にはユーファスには似合わない焦りの汗が滲み出ていた。


「何故だ?何故そこまでして皇帝になる事を拒む?お前ほどの男が皇帝になれば、国民に文句を言われる事も無く侵攻できるぞ。お前の目的には最善の策だと思うが?」


 皇帝は焦るユーファスとは裏腹に能天気に応える。それを見てユーファスは更に動揺する。


「陛下!!そもそも私は『真なる王』どころか魔力すら持っていないのです!!ですから、帝国の掟によって皇帝になる事は出来ません!お早く撤回を!!」


「掟には例外というモノも存在する。お前の才能は明らかに例外だ。それに今の皇帝は余だ。余の言葉がこの国の全てであり、掟如きに縛られはせん。この国の未来の為にも、最善の選択を選ぶ事が余の使命だ。かと言って強制する気はない。お前にその気がないのなら前言を撤回しよう。」


「はぁはぁ…ありがとうございます…っ!」


 ユーファスは咄嗟に周りを見渡す。そして、とある2人の男の顔を見た瞬間、全てを悟る。


「陛下!!この話は他の者にしましたか!?次期皇帝を俺にするという話を!!」


「ああ、一月前に大臣たちの前で一度だけな。だがあの場では…おい!どこへ行く!!」


 ユーファスは既に走り出していた。人混みを掻き分け、扉を勢いよく開けて外へ飛び出した。後ろからはジーガスが追従している。


「殿下!如何しましたか!?」


「気付かなかった!!陛下に帝国の掟を破る覚悟があるとは!それにそんな重大な事を大臣たちに話しているとは!!爺、急げ!」


 そうして2人が辿り着いたのはユーファスの自室。ユーファスは勢いよく扉を開けて中に入る。


「クソッ!!やられた!!ねる!!どこだ!?ねる!!」


 部屋にはお付きのメイドの死体が転がっており、ベッドにいるはずの ねるがいなくなっていた。誰かに誘拐された事は明らかでユーファスも内心では気付いていたが、自身の予想が外れている事を一心に願いながら名前を呼び、彼女を探し続ける。しかし、その声はどこからも返ってくることは無く、部屋の中にこだまし続けた。

ユーファスの本来の戦闘スタイルは様々な武器、暗器を用いた多彩な闘い方です。投げナイフ、煙幕、手榴弾、閃光弾、神経毒など何でも使います。さらに、周囲の環境を利用する闘い方も得意で、能力無しで闘った場合は間違いなく世界最強です。前話で将士と闘った際は、彼の性格を考慮して剣のみで闘いましたが、冒頭では暗器を駆使した為、一方的な戦闘となりました。しかし、それでも所詮無能力なので、勝てない相手はいます。分かりやすい例はフィジギフの甚爾くんです。


将士は基本的に夜に2人の警護をしているため、昼間は寝ている事が多いです。


後、ねるはメンタルが死ぬほど強いです。母親死亡からの投獄や、今回の地獄訓練も常人なら自殺するレベルですが、何とか耐えました。


最後に見た2人の男とは、ケーリオンとバチラス卿です。驚きではなく、申し訳なさそうに座っているケーリオンと、困惑する他の参加者と違い、ニヤついた笑みを浮かべるバチラス卿を見て、状況を悟りました。



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