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爆誕

 部屋の奥の荘厳な玉座には1人の男が腰掛ける。その背後には国を象徴する荘厳な旗がたなびく。

 そこに腰掛ける男は肘をついて、足を小刻みに揺らす。たまに立ち上がって深呼吸したり、周りを見渡したり落ち着きがない様子だ。

 少しすると大きな入口の扉から1人の男が入ってくる。


「失礼します陛下。たった今生まれたそうです。男の子でございます。」


 白髪混じりの男は開口一番にそう告げた。男はそれを聞いて少し安堵の表情を見せながらも平静を装い質問する。


「…そうか。能力は?」


「それが…その赤子には生まれながらの魔力が全く存在しませんでした。」


 それを聞いた玉座の男は驚愕の表情を浮かべながら立ち上がる。


「何だと!?そんな事はありえぬ!!魔力を持たぬ人間など存在するわけがないだろう!!」


「何度も測定しましたが、いずれも測定器は反応がありません。機械の故障の可能性も考え別の測定器を5台用意しましたが全て同じ結果だった事から間違いないかと。」


 白髪混じりの男は淡々と告げる。立ち上がった男は再び玉座に座り直し、顎に手を当てて考え始める。


「ありえない…この長い帝国の歴史の中で、魔力0の人間が生まれた事など…」


「はい、帝国のみならずこの世界中で過去に類を見ない現象です。私も非常に困惑しております。…ですが残念ながら、魔力が無ければ陛下の後を継ぐ事は…」


「ああ、それは不可能だ。しかし、大切な私の息子だ。王としての教育は程々で、1人の人間としてしっかりと育ててやれ。」


「畏まりました、陛下。では失礼いたします。」


 そう言って白髪混じりの男は部屋を後にする。


(ふむ…やはり陛下もご存じありませんでしたか…それにしても魔力を持たぬとは一体どう言う事なのでしょうか…いずれにしろ、王の器では無い。その子には申し訳ないが、次の子供に期待ですかね。)


 そんな事を考えながら産まれたばかりの赤子の元へ向かった。

 赤子のいる部屋にやって来た男に気付いた医者や産婆たちは深々と頭を下げる。


「宰相閣下、ようこそいらっしゃいました。」


「挨拶は結構。皇后陛下は?」


「疲労でお休みになっております。」


「そうですか。」


 そう言って男は小さなベッドに向かって歩く。そして、産まれたばかりの小さな命に目を向ける。


「これが皇子ですか…しかし、本当に魔力を持たぬとは…っ!?」


「…」


 生まれたばかりで、ほとんど開いていないその目を見た瞬間、男に衝撃が走った。


(なんだこの子は!!何故だか分からないが、私の直感が言っている。この子は普通の赤子では無い!私よりも…もしや陛下よりも、とんでもない逸材かもしれない。)


「お前たち、この子に自我が芽生えたら私に即座に連絡しろ。教育係は私が務める。」


「さ、宰相閣下自らが!!だ、大丈夫なのでしょうか?」


「両陛下には私から伝えておく。お前たちは、従来通りにこの子の世話にあたれ。」


「かしこまりました。」


「………」


 産まれてまもなく、自我すら無いはずのその赤子はどこか遠くを見据えている気がした。

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