八殺目 スレイバス
うわぁーすげぇ
目に前には大きな石門がどうどうと佇んでいた。
思わず口から声が漏れた
「ここがスレイバスか、デカ過ぎんだろ⋯」
田舎者丸出しでスレイバスを囲んでいる石門をキラッキラした目で見ていると、コシノさんが不思議そうに言う。
「え?帝国の中じゃ普通くらいの大きさの街だよ?」
「これが普通?!帝国でトップクラスの街じゃなくて?」
俺が驚きの表情で、コシノさんたちを見ると、
コシノさんたちが憐れむような目で見てきた。
「あ、そっか。ずっと山の道場で、、」
「でも、十五年も生きてたらこのくらいの街一つや二つは、、、、」
なんでそんな顔で見てくるんですか?
なんで、泣きそうな顔をするんですか?
そこまで可哀想か?結構楽しかったんだぞ。
そんな歯切れの悪い言い方しなくていいじゃん!!
人を可哀想な人間だと決めつけやがって、、
石門の前には長い列ができていた。
石畳の上を通る荷馬車、旅人、商人……人の流れが絶えない。
門番たちは鎧を光らせ、一人ずつ冒険者カードや通行証をチェックしている。
「本当にただの街なんですか?二十人以上並んでますけど?」
俺の疑問にレナさんが深刻そうな顔で答える。
「さっきも話したけど、森にフェンリルが出たのよ。それで森の近くの村に住んでる人たちが、城壁とかもしっかりしてるスレイバスに避難しているの」
「はえー、フェンリルが出たんだ。全く話聞いてなかった」
「聞きなさいよ……」と小声でレナさんにツッコまれる。
怒ってるレナさんも可愛いな、と思いながらも質問を続ける。
「フェンリルはAランクでも強い方の魔物ってことは知ってるんですけど、この街にAランク以上の冒険者って居ないんですか?」
フェンリルが出て恐れるのも分かるが、Aランク冒険者一人いればすぐに終わりそうだけどな?
そんな質問を当たり前のように言ったら
「はぁ〜お前は本当に世の中のことを何も分かっていないんだな」
呆れた顔でソミスさんが答える。
「いいか?Aランク冒険者は"英雄"って言われてるんだぞ。世界に何十万人って数がいる冒険者の中で100人近くしかいないんだぞ!ましてや、それ以上なんて…」
「え?」
「だからそういうことだ。各国の首都じゃない街や村にはAランク以上はほとんどないんだ。だから基本的にはBランクが最高戦力なんだ」
「え?」
うちの道場Aランク何人か居たよ?
しかも、Sランク二人に、SSランク一人居たけど?
てか、俺のパパ、元SSSなんだけど?
あれ?もしかして本当に道場「流拳技」ってすごい格闘家の集まりだったのか?
この事を言おうと思ったが、
言ったら変な子扱いされるかもな。
うし、黙っとこ!!
そんなこんなで──
「おい、次!」
俺たちの番が来た。
まずはソミスさんたちが身分チェック。
門番が冒険者カードを見て、途端に笑顔になる。
「あっ、ソミスさんじゃないですか! お疲れ様です! フェンリルの件、大変そうですね、頑張ってください!」
さっきまで仏頂面だった門番が、猫なで声になる。
ここではソミスさんたちは有名人らしい。
「よし、Cランク冒険者ソミス・チャハムとそのパーティーですね。お通りください」
じゃあ次俺の番〜
身分チェックなんて初めてだから緊張しちゃうな
「はいこれ、冒険者カードです」
門番さんに冒険者カードを提示する。
「冒険者か。まだ若いな成人したてか?」
「はい!」
怪しまれないよう元気に返事をする。
別に怪しいこととかしてないんだけどね?
すると、門番さんがワナワナし始めた。
「おい貴様、このカード偽物だろ?」
「うぇ?」
予想外な言葉過ぎて変な声が出てしまった。
「貴様のようなガキが、Bランク冒険者なわけないだろ!!」
おい!! 人を見た目で判断するなよ! 多様性だぞ?
すると、レナさんたちも、
「え?!アビト君本当にBランクだったの?」
「言ってたじゃないですか!コス・ウルフも全部倒したって!!」
「確かに、俺たちが気絶している間にコス・ウルフ全部倒したって言ってたけど、嘘だと思ってたぞ」
「え?!信じてなかったんですか!?」
「そりゃぁね、、、成人したての子がBランクで、しかもあの群れ全部倒したって思わないし......その、可愛い嘘だなって。」
みんな俺がBランクでもなければ、コス・ウルフを全部倒したんじゃなくて、フェンリルに倒された残りの残党を数匹俺が倒したと思っていたらしい。
Bだし、全部俺が倒したのに......
「大人しく着いてこい!!」
なんで!?頑張って全部倒したのに!!
俺元気いっぱいに返事したのに!!
門番さん腕を掴まれ、引っ張られる。
―――
「いい加減、吐いたらどうだ?」
「だから本当に! 冒険者登録したら、ギルドマスターが“Bランクスタートでいいよ”って……!」
「そんなふざけたことをするギルドマスターが居るわけないだろ!!」
俺は今、街の治安を守る騎士団の本部に連れて来られた。そのまま地下に入り、尋問部屋みたいな所で、グルグル巻きにされ、イスに座らされていた。
あのメガネギルマス絶対許さん
俺のことを尋問しているセバスチャン風の髭を生やしたゴツめおじさんが唾を飛ばしながら怒鳴ってくる。
「貴様、一体どこでこれを手入れた!!」
うっわ顔めっちゃ唾かかるんだけど。きったね、しかも、くさ、、、い?
おっさんの唾からは悪臭がしない。どちらかといえば良い、そしてフルーツっぽい?
ブルーベリーだッ!!!
おっさんの唾からブルーベリーの匂いする!!
良く嗅いでみたら、口臭もブルーベリーだ!
セバスチャン風ゴツめおじさんからブルーベリーの匂いするの結構面白いな
おっさんの口をガン見しながら、ニヤニヤしていると、
「何がおかしい!!早く吐け!!罪が軽くなるかもしれんぞ」
「ブルーベリー食べました?」
―――
「どうしようソミス!!アビト君捕まちゃったよ!?」
「捕まるのも無理はない。成人したてで、Bランクだなんて、偽装以外考えられないからな。俺も本当だとは思っていなかったが、」
「で、でもアビト君良い子だったよ?たまに脚をチラチラ見てくるから、ん?って思ったりしたけど。でもそれだけだよ!?」
「もしかしたら、本当にアビトがコス・ウルフを倒したのか?本当にBランクだったら辻褄が合う......」
俺たちは街の酒場で話し合いをしていた。
アビトが冒険者カード偽装で捕まってしまったから、これから俺たちはどうするかるかの内容だ。
ちなみに、俺たちはアビトと一緒に同行していたが、この街に長年貢献していたため、お咎めなどはなかった。
「正直俺もアビトがそんなことをしているとは思わない。もし、やってたとしても何か理由がある筈だ。」
「だが、証拠という証拠もないし、もう無理なんじゃ?」
全員が同じことを思っていたのだろう。
重たい空気が流れ、誰も否定せず黙って俯いていた。
そんな空気を変えるべく、レナが言う
「と、とりあえずアビト君の所に行って話を聞いてみよう!!」
それ以外できることがなかったため、俺たちは騎士団本部の地下へ向かった。
騎士団の話だと、アビトは全然口を割らず、ずっと尋問を受けているらしい。
もしかしたら、拷問を受けているかも知れない。
それはなんとか止めなければ。そんな考えが頭にあった。だがそれは、アビトを見た瞬間消え去った。
「この子娘さんなんですか?可愛いすぎません?!」
「だろ〜。嫁に似て本当に良かったよ!!」
「おっさんに似てたらちょび髭生えてたかもですね!」
アビトと尋問官がグヘグヘ笑いながら楽しそうに談笑をしている。
―――
このおっさんめちゃくちゃ気が合うな。
「ブルーベリー食べました?」
と聞いて怒られるかな?と思ったら以外に怒られなかった。というか機嫌が良くなっていた。
「そうだ。俺の娘がブルーベリー畑をやっててな。今日俺のためにサンドイッチを作ってくれたんだよ」
「えぇ〜。めちゃくちゃ良い娘さんじゃないですか!!愛されてるんですね!」
「そうなんだよ。昔っからずっとお父さんっ子でな?今も彼氏とか作らずに俺にベッタリなんだよ〜」
「マジですか?!じゃあ娘さんに男が出来たらどうしますか?」
「そんなもん、牢にぶち込んで、鞭で引っぱたいてやるわ」
「ワハハハハッ!!おっさんの方が溺愛してるじゃないですか!!」
「そうかもな! そうだ娘の写真見るか?可愛いぞ〜」
「この子娘さんなんですか?可愛すぎません?!」
「だろ〜。嫁に似て本当に良かったよ!!」
「おっさんに似てたらちょび髭生えてたかもですね!」
グヘグヘ、おっさんと笑い合う。俺もパパっ子だったから、おっさんと師匠の性格の似ている部分や、俺と娘さんの似ている部分が多く、話が弾みに弾みまくっていた。
「ア、アビト? お前なんで捕まってるのに、尋問官と爆笑してるんだ?」
ソミスさんたちが、
尋常じゃないくらいドン引きしている。
あー、この顔見たことあるわ。
というか、したことあるわ。
どこでだっけな?
容量の小さな脳みそで記憶を遡る......
あっ、思い出した!!
兄弟子が、
突然ダンジョンの壁を舐め始めたのを、俺が見た時にしてた顔だ。
え? 今の俺、ダンジョン壁舐めと同レベルッ?!
こんにちは、マクヒキです!!
ブックマークが一つ付きました。
笑い転げるくらい嬉しいです。
というか、四回転くらいしました。




