五十四殺目 殺戮魔
「アビトッ!! アビト!! 落ち着いてッッアビト!! アビトッ!!!!!」
正気を取り戻させるため、セレネがアビト両肩を掴み激しく揺らす。
だがそれでもアビトは"ある一点"を見つめながら、
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ」
ただ、そう呟いていた。
「もうやめてッ!! 大丈夫だから!!!! アビトは戦わなくていいからッ!! ……ねぇ…お願いだからッ」
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ」
彼は現在、殺気を大量に取り込んだことで我を失い、殺意の赴くままに敵を殺す殺人鬼と化していた。
内に秘めた殺意が外に漏れ出すことはなく、さらにはアビトの周りに不気味なほど静かな青黒いオーラが漂る。
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ」
この技は数刻前にヴォルクへ使用したモノと同じだが、先程は全ての殺気を体内に取り込むことが出来ておらず、技本来の力を十二分に発揮出来ていなかったのだ。
その時だけでなく、アビトは何度も師であるガイトと共にこの技を扱えるよう訓練していたが、成功したことは一度もなかった。
それほど使用が困難な技なのだ。
だが今回はアビトの人生の中で"最大の強敵"、"かつてない死の間際"、そして"最も守るべき者"
この三つの要素が同時に起きたことにより、その技を成功せざるを得ない程の力と意思が宿り、完全な殺戮魔と変貌したのだ。
「少年ッ!! どうしたんだい!? 落ち着け!! 私もルーシェも…アタラウスだっているんだッ!! もう大丈夫だ!! よく頑張った!! 後は私たちに任せてくれ!!」
アビトの異変に気づいたシニィが彼を冷静にさせようとするが
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ」
理性を失っている彼には届くはずもなく
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ」
まだ視線を逸らすことなく、膝を着きながら立ち上がり、
「待てッ少年!! ダメだ!! 少年!!!! 止まれぇ!!」
-----------------------------
-----------------------------
-----------------------------
「師匠、ちなみにその技の名前ってなんですか?」
「大量に殺気を取り込み、限界を超えた力で敵を殺す」
「おう」
「つまり、殺意の赴くままに暴れる」
「おん」
「その名は――」
-----------------------------
-----------------------------
-----------------------------
『暴殺』
アビトが小さくその名を呟いたその刹那、
"音"が"空気"が"時"が止まったと錯覚させるほどの静寂が流れ――
「殺゛セ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛」
殺しの咆哮を上げた。
その声はどこまでも響き渡り、
「おら!! さっさと死ッ………おいおいおいなんだこりゃ!? …あのふとっちょか?!」
「まさかあの男…ククッ……フハハハハハッッ!!!!」
-----------------------------
「ッ……クソ…あのガキ、先程よりも強烈な…」
-----------------------------
「あ゛ぁ゛耳…か゛ッ…声にとんでもない量のッ……」
響き渡ったその声には、取り込み凝縮された"殺意"が乗せられていた。
ソレは、傍にいたシニィが立ちくらみを起こし、最強同士が戦闘を一時停止せざるを得ない程、強力なモノだった。
そしてそんな咆哮を上げたアビトの隣にいた、もう一人の人間――
「ぁ゛……」
「く……ッ!? セレネちゃん!!!!」
セレネ・ナイトウィルを一瞬にして気絶せた。
Sランクでさえも一時的にめまいを引き起こす程の殺気に、Dランクの彼女が耐えられるはずもなかったのだ。
「ク゛ル゛ル゛ル゛ル゛ラ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛」
そんな倒れるセレネなど眼中になく、アビトは口から泡を垂れ流しながら未だにただ"一点"を――
"流転の魔王 ヴォルク・カレイド"を睨みつけていた。
体を低くし獣のような四つん這いの姿勢をとり、唸りを上げながら
「ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛ッ゛」
突撃した。
「待てッ!! 行くなァッ!!!!!! ――ッく!!」
その勢いは抱きつき制止を試みたシニィ吹き飛ばし、
「ッチ、あのガキ」
目の前に立ち塞がったルーシェを、
「止まれッ!! アビト・ハーラ……」
一回の瞬きの間に抜き去った。
「――ッ?! なんだあの速度…十五が出していいものでは……それにガイト・ハーライドが高速度で動くなど聞いたことが……」
止まる気配を見せず、さらに速度を上げながら突撃する彼の姿はその場の誰が見ても、化け物と思わざるを得ないほどだった。
「ク゛ラ゛ラ゛ラ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛」
「あの男…やはりもっと"流拳技"の情報を聞き出さなくてはッ――」
「ルーシェッ!!!! 今すぐ少年を止めに行くぞッッ!!!!」
あまりの光景に立ち尽くしていたルーシェにシニィが指示を出し、
「…承知しました。『天使の羽ッ!!』」
魔王へと向かうアビトを白き羽を生やしたルーシェが猛追を始めた。
が、
「ちッ」
──速度は私が上だが…間に合わんな…
もう既にアビトはヴォルクの目の前へと迫っていたのだ。
「だが……アレなら…」
──シニィさんも気付いているはずだ。だが庇護欲がそれ以上にあるから止めようと……あのガキは今、
-----------------------------
戦闘を中断していた二人のもとへ、アビトが猛スピードで迫り来ていた。
「やべっやべっやべっやべッ」
その状況に動揺しているアタラウスを、
「あのふとっちょ!! こっちに来やがッ――グハッ」
「邪魔だッ退け!!!!」
ヴォルクが殴り飛ばし、アビトの方へ体を向けた。
今現在、流転の魔王ヴォルク・カレイドの興味は"SSSランク 天災の剣聖 アタラウス"からBランクのアビトへと完全に移り変っていた。
「我を殺してみろ……アビト・ハーライドッ!!」
瞳をたぎらせながらも、ニヤリと笑いながら腕を広げ待ち構えるヴォルクに、
「ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛」
目の前まで迫ったアビトが拳に殺気を込め、
『殴゛殺゛ッ゛ッ゛!︎︎!︎︎!︎︎!︎︎』
顔面に撃ち込んだ。
その一撃に込められた威力と殺気は、大規模な爆発を起こし、離れていた冒険者の身体を痺れさせる程の衝撃が広がっていた。
「ック……クハハハハハハ!!!!」
そして、その一撃は以前とは違い、
「良い攻撃だ…素晴らしい」
ヴォルクの口と鼻から血を垂れ流させていた。
「やはり貴様は我の想像を超えッ――」
『殴゛殺゛ッ゛ッ゛』
「――ッ!?」
さらにアビトは間髪入れずに、
――初撃の勢いを利用して…
拳を振り抜いた力を利用し、回転しながら裏拳を放った。
不意打ち気味にくらった裏拳にも強力な殺意のエネルギーが込められており、ヴォルクの足元が僅かにフラつく。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛」
ヴォルクを殺す為だけに暴れているアビトがその些細な隙を見逃すはずもなく、雄叫びを上げながら、
「『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』」
殺意を宿した両拳で、瞬く間に十発以上をヴォルクの体に撃ち込んだ。
「くッ」
──こやつとんでもない威力を……それに攻撃速度も先程とは比べ物になっていないッ
アビトの連撃は一撃一撃に必殺の威力を誇り、目の前の敵を確実に殺さんとする意志が宿っていた。
「『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』『殴゛殺゛』」
そんな彼の猛攻に対し、ヴォルクは、
「『殴殺』『殴殺』『殴さッ――」
「ククッ…」
ニヤけながら拳を手のひらで受け止め、
「その勢いを持たせろよ!!」
─────────ズンッッ
青い腹部へ拳を撃ち込んだ。
「ぐはッ」
その拳は腹部を貫くほど深く突き刺さり、衝撃がアビトの体を通じて、"空気"に"大地"に響き渡る。
「ぁ……はぁ…はぁ」
口から赤黒い血や体液が溢れ出し、握力が徐々に失われ握り拳が緩みだす。
だが、
「はぁはぁ……ッ『殴殺!!!!』」
「がッ?!」
未だにギラリと光らせている眼光をヴォルクに向け、すぐさま反撃の一撃を放った。
「……こやつ」
──信じられん……
垂れる鼻血を拭い、動揺しながらも、
「調子に乗るな!!」
再度、アビトへ拳を突き刺す。
「ぶはッ!!」
またもや強烈な一撃がアビトの顔面に撃ち込まれ、再び衝撃波が広がった。
しかし、
「あ゛ッ……ウ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛ア゛『殴殺ッ!!』」
「くッ……」
またしてもヴォルクの攻撃を耐え抜き、怯むことなく攻撃を繰り出したのだ。
「ウ゛ラ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛」
「…貴様……」
血を拭うことを辞めたヴォルクがニヤリと笑い、小さく呟く。
──やはりだ、こいつ攻撃力や速度だけではない……防御力…頑丈性や耐久性が上がっている!!
『殴゛殺゛ッ゛』
止まることを知らない暴走したアビトが再び、ヴォルクへと殴り掛かる。
「貴様なら……ヤツを超えれるかもなッ!!!!」
-----------------------------
「おい剣聖なぜ見ているッ!! 早く助けに行けッ」
魔王と戦うアビトを止めようと追いかけていたルーシェが、立ち止まって二人の戦いを見続けているアタラウスに声を掛ける。
だがアタラウスは彼を心配する様子が微塵もなく、ただアビトの一挙手一投足をジッと見つめ、
「聞きたいことがある。あのふとっちょは何者だ?」
そう問いかけた。
「あんな戦い方で、しかもあそこまで若いSランク冒険者は見たことも聞いたこともない」
その問いにルーシェが答える。
「……アレはSじゃない」
「え、マジで?! じゃあAランクか!? うっわ昇級待ったナシじゃねぇか」
素っ頓狂な声を上げるアタラウスに対し、ルーシェは続けざまに答えた。
「……Aでもない」
「は?! ってことは…SSランクか?! …ん? あっれぇ…でもなぁ…俺一応SSランクみんな覚えてるはずなんだけどなぁ……」
アビトをジッと見つめ顎に手を当て、深く考える。
「となると新入りで、しかも最速SSってこと?! ルーシェちゃんまた越されちゃったってこと!?」
「黙れ!! そもそも私は一回も越されてなどいないッ!!」
アタラウスが出した答えにルーシェが怒りを露わにしながら声を荒らげる。
「ごめんって、冗談だよぉあんまり怒んないでよぉ。怖いから」
「はぁ…」
少々面倒くさい態度にため息をつきながらも彼女は話しを続けた。
「…あいつの名はアビト。"餓猟の料理人"……だそうだ」
「あぁ!? 餓猟の料理人って、自分で魔物を狩ってその肉で作った料理を色んな街で売ってるやつ?!」
「あぁそうだ」
「嘘つくなよ!! いくら戦える料理人つったって…アレSランクぐらいの実力あるぞ!?」
「私もそう思う。アレならドラゴンなど余裕で倒せるはずだ」
「だよね!? 最低でもAランク上位だよね!? えぇ……マジか、アレで料理人かよ…俺推薦でもしようかなぁ……」
「しても良いが、ヤツは絶対喜ばッ――」
「お前ら一体何をしているッッ!!!!!」
アビトの強さについて語り合っていたその時、二人の会話を切り裂くような声が響いた。
「うわッ……シニィちゃんめっちゃキレてる」
「しまったな……」
セレネに回復魔法を掛け終え、暴れるアビトを追いかけてきたシニィだった。
顔に深いシワを作り、怒号を上げる彼女の姿は、最上位の冒険者であるアタラウスたちから見ても恐怖そのものだった。
「何突っ立っているだッ!! 今すぐ少年を止めに行け!!」
「分かりました…」
「は、はーい」
アビトの戦う姿に釘付けにされていた二人は彼女の怒りにより、ようやく再び動き始めた。
「早く行けッ!! もし間に合わず少年が死んだら……」
アビトの次に殺気を放つ彼女は、
「私がお前らを殺すからなッッ!!!!! 分かったら私に着いてこいッ!!」
「え…シ、シニィさん…?」
「……え、シニィちゃんも戦うの?」
「早く来い!! アタラウス、ルーシェッ!!!!」
誰よりも速く、魔王の元へ突撃した。
「……君、回復魔法使いだよね?」
あの……ストーリーは出来てたんです。
ただ日本語力がなくて、それを文章にする力が、言葉にする力がなかったんです(´;ω;`)
学生時代、国語は常に赤点だったんです( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)
文章は下手くそだと思いますがストーリーは面白いと思うのでこれからも読んでいただけると幸いです。




