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四殺目 輝くちくび




「あっっっつぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!」



え、なんで光ってんの?なんで光ってんの?なんでちくび光ってんの?!




「え?! これなに!? ちょ、誰か助け……」



助けを求めようと、兄弟子の方へ顔を振り向くと



「……」



「……」


目を見開き、無言のまま、ちくびをガン見されていた。





──すみません、見ないでください






ねぇやめてよ。見ないでよ


ただでさえ今、熱と光でいっぱいいっぱいなのに。そこに羞恥心も入ってきたら、俺おかしくなっちゃうよ......




泣きそうになるが、それ以上にちくびが異常すぎて流れる涙が一滴もない。




それまで、ジッとちくびをガン見していた兄弟子たちが、急に正気を取り戻し、叫んだ。




「お、おい!!師匠に伝えてこい!!今すぐ!」



「アビトお前も体拭いて今すぐ師匠のところにいくぞ。」



──こいつら何言ってんの? どう考えても病気じゃん!! まずは、ババァに回復ヒールだろ!?





てか、ちくびを師匠に見せに行けって言った?


え、なに? 死ねってこと?! 羞恥心で死ねってこと?!






だが、拒否権はないので言われるがまま、急いでパンツとズボンを履き、師匠が居る居間へ向かった。








居間に入ると、そこには師匠と兄弟子たち、そしてババァがいた。



全員揃っていた。そして、全員の視線が一斉に入ってきた俺へ向いた。




──あ〜なるほど




俺は理解した。




──これが巷で噂の「公開処刑」ってやつか


俺、羞恥心系嫌いなんだよなぁ〜






モジモジしながら、手でちくびを覆っている俺に、居間の奥に座っていた師匠が話しかけた。



「アビト、手をどけろ」




師匠が言うので渋々ちくびをさらけ出す。




「おおぉ。本当に、本当に発現したんだな」



「発現? どういうことですか? ピカピカちくびが発現したってことですか?」




「何を言っとるんだお前は……違う、たまたま光った場所がちくびだっただけだ。アビトお前にスキルが発現したんだ」




兄弟子たちのざわめきが一気に広がる。好奇心と、純粋な驚き、そして喜びが混ざり合っている。




「え?!スキルって」




俺の出来の悪い脳みその動きが止まった。



スキル。スキルって言えば、、、





師匠が嬉しそうに、ニヤけながら言う


「あぁそうだ。スキルとは、主に魔法使い以外の者に現れる特異な力だ。


その者の資質と強い意志によってのみ現れる。


つまり──選ばれし者にしか与えられぬものだ。力があり、才があり、何よりそのスキルを持つに相応しい強い意志を持った者にだけな。よくやった。さすがわしの息子だ。」






嘘だろ……マジかよッ!!!





師匠の言葉で、道場が沸いた。




「うおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」




俺も自然に雄叫びをあげ、目からは涙が出ていた。






──やった!! 選ばれた!! 俺には才能が、力が、強い意志があったって認められたッ




嬉しい以外の何物でもない。


これで近づける。

あの時の師匠のような、兄弟子たちのような立派な男に。




「アビト、明日はお前のスキルを鑑定してもらうぞ!」




この喜びと光るちくびを胸に刻み、これからももっと強くなっていこう。














翌日――


俺は師匠と並んで、冒険者ギルドへと歩いていた。




冒険者ギルド。


そこは冒険者を支援し、依頼人と冒険者をつなぐ機関だ。討伐や護衛といった依頼を受け付けるだけでなく、魔物の素材やダンジョンで拾った財宝を査定してくれたり、冒険者登録を行ったりする。




そして何より重要なのが――スキル鑑定。




スキル鑑定に使われるのは、ダンジョンから発見されたという石版の魔道具。


表面はひび割れ、淡く光を放ち、見る者を不思議と惹きつける。その名を「スキル石」。




そこに触れるだけで、自分に発現したスキルの名前と内容が分かる。


今の俺にとって、それは人生を左右する一大イベントだった。




胸が昂って仕方がない




──グへへへへ……手からビームかなぁ〜それとも体が巨大化するやつか! いや、透明人間だったらどうしよう!?


やべぇヨダレが止まんねぇや…






想像するだけで興奮が止まらんわ


グへッへグへへへ





グヘグヘしている間に、俺たちは目的地――冒険者ギルド『エコキャル支部』へ到着した。




ギルドに入るのはこれが初めてだ。


これまで兄弟子たちと一緒に魔物狩りやダンジョン探索へ出かけたことはあったが、あくまで稽古の一環であって、正式にギルドへ顔を出したことは一度もなかった。



見た目は、ボロい屋敷のような佇まいをしていた。


師匠がギルドの薄汚れた扉を開け、一緒に中へ入る。




中は少し古びていたが、床や壁には歴戦の傷跡が刻まれていた。


そして、ギルドの中には、一人一人が勇ましく、武器や防具にはもちろん体中には、戦士としての勲章が刻まれていた者たちが居た。




──これが本物の冒険者か





中に入り、キョロキョロしている俺に、冒険者たちの鋭い視線が注がれた。




――うっわ、めっちゃ見られてるじゃん…まぁしょうがないか。冒険者じゃないしな。というか、それ以前にまだ十二歳だしッ




そんなガキが命を掛けて戦う大人たちの場所に足を踏み入れたのだから、鋭い視線を向けられるのも当然だ。




だが、彼らの目が俺の隣に居る人物――師匠を認識した瞬間、空気は一変した。




「りゅ、流拳技様!?」



「な、なぜギルドに……!? 普段はお弟子さんが依頼を受けていたはずでは!」




ざわめきが一瞬で広がる。





──そりゃあ、そうだよね〜。驚くのも分かるよ〜。うん、うん。うちのパパ元SSSランクだしね





冒険者たちは慌てて背筋を伸ばし、頭を下げたりしていた。あまりの態度の変わりように俺は、



──さすが元SSSランク。全員がペッコペコしてるな。なんか面白いな




と、一人でニヤケていた。





周りの冒険者など気にも留めず、師匠が受付のところまでまっすぐ歩いていき、



「今日は息子のことで用がある。受付の嬢ちゃん、話を聞いてもらえるか?」




「は、はいっ! も、もちろんです!! どうぞ奥の部屋へ!」



慌てて案内を始めたのは、胸の大きな眼鏡の受付嬢だった。動揺して声が裏返っている。






――かわいいな







部屋に向かう途中も、周囲の冒険者たちのざわめきは止まらなかった。


「おい……あれが流拳技様の息子だってよ」




「噂には聞いてたけど、本当にいたんだな」




「でもあんまり似てなくないか? ……太ってるし」







……太ってるは余計だろ











---




案内された部屋に入ると、受付嬢さんが改まって口を開いた。



「それでは、本日はどのようなご用件で……?」




「わしの息子にスキルが発現した。鑑定をお願いしたい」





受付嬢さんの目が大きく見開かれた。



「す、スキル!? この子にですか!? わ、わかりました… 今すぐ準備いたします!」




驚くのも無理はない。


冒険者の人口は世界でおよそ五十万人。だが、その中でスキルを持つ者はたった百五十人程度しかいない。




子どもであろうと大人であろうと、スキルが発現した時点でどんちゃん騒ぎになるのは必然だった。







数分後。


扉が再び開き、スキル石を抱えた受付嬢さんと、一人の男が姿を現した。




眼鏡をかけ、髪を綺麗に分けた男。








──俺には分かる。こいつは、、、頭が良い!!





男は椅子に腰を下ろすと、懐かしそうな目で師匠を見やる。



「お久しぶりです、ガイトさん」




「あぁ。お前も今やギルドマスターか。大きくなったな」




少し照れた笑みを浮かべ、男は俺に視線を移した。


「君がアビト君か。私はこの支部のギルドマスター、オキド・シークだ。よろしく」




「はじめまして。師匠の息子、アビト・ハーライドです。よろしくお願いします」




──へーこの人がギルマスなんだ。ギルマスって、もっとゴツめの強面おじさんかと思ってた




固く握手を交わすと、ついに本題へ。




「それではアビト君、スキル鑑定を始めよう。これがスキル石だ」




ギルマスさんがテーブルにスキル石を置き、俺の方へ向ける。




──ついにこの瞬間が来た!! 昨日は楽しみすぎて一切寝れなかったんだッ


あ゛あ゛興奮が止まんねぇ!!




興奮で鼻息が荒くなりながらも、俺は震える手を石に置いた。





次の瞬間、眩い光が手を包み込み――そして静かに消えた。



石の表面に、文字が刻まれる。













スキル「流拳殺技りゅうけんせつぎ




効果:自分の体力エネルギーを可視化できる。

殺意を操ることができる。













「「う、うわあああああぁぁぁっ!!」」





その場にいた全員が、同時に声を上げた。








スキル「流拳殺技」――


それは、かつて世界を救った伝説の男。


歴代最強の冒険者と言われた男。





そう、ガイト・ハーライドが持っていたスキルだった。














オキドが声を震わせた。



「『流拳殺技』……。長い歴史の中で、ガイト様以外に発現させた者など存在しなかったはず……」




師匠はゆっくりと目を閉じ、そして低く笑った。


「そうだ。このスキルは、本来――わしのためだけに生まれたものだ」




場に緊張が走る。





師匠が続ける。




「殺意を操る力も、体力エネルギーを可視化する力も、すべてはわしが戦いの中で必要としたモノだ。言うなれば『流拳殺技』は、わしのためだけに生まれたスキルじゃ……だからこそ、わし以外に発現することはないと、ずっと思っていた」




そこで、師匠はふっと視線を落とし、口調を和らげた。




「だがな……この力をわしだけで終わらせるのは惜しいと思ったんだ」





「だから、わしは道場を開いた。弟子を取り、いつか誰かにこのスキルと技を継がせようとした。……だが、弟子たちは強かったが、このスキルだけは誰一人として芽生えなかった」




その拳が、静かに震える。




「諦めかけていたんだ。いや、諦めていた……だが――」




師匠が俺の頭に手を置き、目を細めて笑った。




「まさか……お前が、この力を受け継ぐとはな。アビト。これは偶然ではない。運命だ」




その言葉に、部屋の空気が震える。


受付のお姉さんは息を呑み、ギルド長でさえ深く頷いた。




『流拳殺技』


それは本来、ガイト・ハーライドのためだけに生まれたスキル。






だが今、そのスキルが、息子アビト・ハーライドへと――確かに継がれたのだった。






こんにちは、マクヒキです!!これからスキルが発現したアビトがどんどん成長していくので楽しみにして貰えると嬉しいです。

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