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四十二・五殺目 魔神戦争


これはアビトたちが読んだ本を短くまとめたものだ。


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『魔神戦争』



筆者 テクメア・ナイトウィル




――それは何でもない普通の日のことだった。


冒険者ギルド本部に私を含め、Sランク以上の冒険者全員が呼び出された。


世界中の英雄たちが呼ばれる。つまり年に一回の定期集会が行われるのだろう。


そんな思いを抱きながら、集合場所である地下にある会議室に入った瞬間――驚愕した。



剣聖に、黒の英雄に、…そして流拳技



呼び出されても集会には絶対来ない奴らまで椅子に座っていた。



その三人が居たからだろう。


部屋にはただならぬ空気が流れていた。



私が入って数分後には、Sランク以上の四十三人全てが揃った。



揃ったタイミングでギルド総長が話し始めた。



「魔神が一年後に人類へ総攻撃を仕掛けるつもりだ。我々を滅ぼすつもりだ」



それは大賢者が魔王幹部から引き出した確かな情報だと。



私含め全員が動揺を露わにしていた。


それはそうだ。


二千年間活動いていなかった魔神が突如動き出し、すぐさま人類を滅ぼそうとしているからだ。



しかも魔神軍と正面衝突、ましてや襲撃されるなどしたら確実に負ける。



そんな絶望的な状況の対策として、ギルド総長がある提案をした。


「このままでは一年後確実に人類は滅ぼされる。だから……先手を取り我々が先に攻め込む!!」



「半年後に魔神も、魔王も、幹部も全て一斉に総攻撃を仕掛ける!!」



まだ状況についていけてないにも関わらず、その日から魔神討伐の準備が行われた。






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まず、魔神たちの歴史について書いておこう。


魔神。数千年前に誕生したと言われている正真正銘の化け物だ。


ダンジョンを作り魔物を生み出す能力を持っている。



そして二千年前、世界を自分のモノにするために人類を滅ぼそうとした。


しかしその時、人類がマナ・ドレインとスキルに目覚め、その力を駆使し魔神に対抗した。


その結果、人類は何百万人という死者を出しながらも、魔神に致命傷を与えた。



だが、魔神はこのまま死んでたまるか、この世界を自分のモノにするんだ、そんな思いで最後の力を振り絞り――



七体の魔物を誕生させた。



魔神が傷を癒し、力を蓄えている間にダンジョンや魔物を管理し、統率をとる。


そして圧倒的な力で人類に牽制をかける


魔神の七騎しちき



SSSランク『魔王』だ。



魔神が長い間活動していないにも関わらず、未だに魔物やダンジョンが無くならないのは魔王のせいだ。


魔王は世界の各地にそれぞれの城、さらにそれを囲むように幹部の城を離れた場所に建てた。


つまりこの世には魔神の城、七つの魔王城、二十八の幹部の城がある。



そして魔王たちは国を襲撃し、民間人や冒険者を虐殺、土地を奪い自分たちの領土を拡大させ、魔神がいない間に人類が優勢にならないようにしていた。


それに対し人類側も黙ってやられる訳にはいかないと魔王に対抗し始めた。


そんな人類と魔王の争いは二千年経った今でも続いている。




これが今までの歴史だ。





そんな長く続いた歴史も半年後に終結を迎える。


私たちはたくさんの命を背負って勝負に挑む。

勝利をすれば平和な世界が訪れ、敗北――私たち高ランク冒険者が全員死ねば人間の時代が終わる。



その半年間は今まで以上に修練に取り組んだ。





-----------------------------


私が配属されたのは"流拳技" "大賢者"が中心となる魔神討伐部隊。


SSSランク二名、SSランク三名、Sランク五名、Aランク二十名の部隊だ。


私の役割はSSSランク二人のサポート。


作戦内容は奇襲をする。そしてその奇襲に全てを掛けるというものだった。


大賢者含むその他の冒険者で一気に城を、魔物を攻撃する。


魔神が出てきたら流拳技が一騎討ちを仕掛ける。



これしか魔神を倒す方法はないだろう。



一騎討ちが専門の格闘家ファイターだ。私たちがサポートをしないほうが全力を出せる。


全てをあいつに託すしかない。


流拳技は間違いなく最強だ。

同ランクの大賢者よりも、霹靂の剣聖よりも、圧倒的に強い。


あいつならきっと一人で魔神を殺せるはずだ。




他の部隊は七騎の魔王討伐、幹部討伐――


魔神 対 流拳技の一騎討ちに邪魔をさせない為だ。



魔王一体とその幹部四体に、

SSランク一人、Sランク三人、Aランク十人、Bランク数百名で攻める。



魔王の中で最も強いと言われている『流転るてんの魔王』の討伐部隊には、SSSランク霹靂の剣聖が参加するらしい。


噂では魔神の次に強く、他の魔王より数倍は強いため剣聖を突入させるのだと。



それぞれの城までは大賢者の転移魔法を使い、相手が状況を理解する前に潰す。それが最も効果的で、勝てる勝率が高いからだ。



必ず勝つ。


勝利を収め、家族のもとへ帰る。







-----------------------------


全てが終わった。


いや、正確には終わってないが今回の争いは終わった。



結果としては引き分けだった。




今から何が起きたのか、なぜ引き分けで終わったのかを書いていく。



まず、我々の作戦は成功した。

大賢者の転移魔法で転送された私たちは一気に魔神の城を攻め始めた。


その結果、ものの数分で城は崩壊。

城に居た魔物も大半を殺すことができた。



そして私たちが攻撃を初めて約十分。


やつが崩れた城の中から出てきた。



魔神オバロスだ。



一目見て分かった。

あれは人間が勝てるようなモノではない。

他の魔物とは放っているオーラも、マナも、殺気も、全てが恐ろしかった。


何年振りだろうか……


死を悟ったのは、魔物に恐怖したのは。



長年高ランク冒険者として活躍してきた私でもそう感じた。




なのに







なのにだ!!






『流拳技 ガイト・ハーライド』はそれ以上に化け物だった



あいつは魔神と渡り合うどころか、押していたのだッ!!



魔神の攻撃を容易く流し、その一瞬の間に数発打ち込む。


しかも一発一発が尋常じゃない威力を有していた。


魔神の体を通じて衝撃が広がり、離れていた私たちの体も振動していた。



今もあの時の光景や衝撃がずっと頭から離れない。



魔神が能力を使うごとに、流拳技が拳を振るうごと

に破壊されていく。


地面が、空気が、敵が、己が、何もかも全てが――



それに押していたとはいえ、接戦には変わりなかった。


流拳技の体中から血が垂れ流れ、息も荒れていた。


最初よりも殺気が小さくなっているのを感じた。



そして、それ以上に魔神はボロボロだった。


血はもちろん、体には拳によって空けられた穴が数箇所あり、立っているだけでやっとの状態だった。


その後も流拳技は一瞬足りとも油断することなく魔神に攻撃を続け、



死の間際まで追い詰めたのだ。



あと数発で確実に魔神は死ぬ。いや、確実に死んでいた。


だが…




だがッ






崩れた城から魔王が現れたのだ。


一体現れただけで我々の勝利率が大きく下がるというのに…



六体も現れたのだ!!



そして魔神を守るように我々との間に立ちはだかった。




私は悟った。




あちらの戦力にまだ余裕が見えるSSSランクの魔王六体が追加された。それにあと少しすれば幹部たちもくるだろう。



それに対しこちらは作戦通り最初の十数分に全てを注いだ。

その結果、大賢者や私含めた全員が魔力や体力をほとんど使い切ってしまった。


さらに、魔王がいるということは足止めをしていた高ランク冒険者が死んだということ。

それは我々に協力な援軍がもういないということを意味していた。


そして勝利の鍵を握る流拳技も魔神との戦闘でボロボロだ。





─────────つまり





敗北が確定したのだ。



それはその場にいた者全員が即座に理解した。理解せざるを得なかった。


このまま人類が滅ぼされるということを。





それでも流拳技は諦めていなかった。魔神目掛け走り出し、その拳に殺意を纏わせていた。


だが魔神を殺さんとする流拳技の行く手を五体の魔王たちが阻み、もう一体は魔神を連れて逃げていた。


魔王が立ち塞がる以上、魔神を追いかけることは不可能。

奴らを倒す力も体力も何も残っていないからだ。あの状況では魔王一体でも厳しい状態だった。



しかし、あの男は



「魔王は俺が殺す!! だからお前たちは魔神を殺せ!!」



と、叫びながら一人で魔王五体の相手をし始めたのだ。


迫りくる魔王を殴り飛ばし、叩きつけ、拳を突き刺す。


奴は本当に一人で魔王五体と渡り合っていたのだ。



「早く行け!! 全員だ!! 全員で魔神を殺せッ!! 奴さえ死ねば全てが終わる!!」



その言葉で我々は流拳技を横目に、逃げる魔神と大魔導を追いかけた。







その後魔神を追いかけ、魔神と共に逃げていた『大魔導の魔王』との激しい戦闘を繰り広げた。


全員が命を削りながら殺しにかかった。



だが大魔導には敵わず、最終的に転移魔法で逃げられてしまった。


本当に自分が情けない。流拳技が命を掛けて作ったチャンスを無駄にしたから。



だが転移魔法を使われてはもうどうすることもできない。追いかけようにもどこへ行ったのか分からないからだ。



だから急いで流拳技の所へ戻った。




あの状態で魔王五体を相手にして戦っていたのだ。


私は覚悟していた。


人類の希望である、あの男が死ぬということを。




しかし戻った時、私は自分の目を疑った。




流拳技の腹部には複数の穴が空いており、片腕は千切れ、体中から大量の血を流していた。


にも関わらず、まだ魔王たちを殴り続けていたから。





ではない。





そこにいた五体の魔王――その全てが重症を負っていたからだ。



そうだ。流拳技が一人で五体の魔王を死の間際まで追いやっていたのだ。



だが本人も死の間際には変わりなかった。


だから我々も加勢をし、魔王を殺そうとした――その時



再び我々の目の前に大魔導が現れた。


そして、


「もぉッ!! なんなのよアナタは!! 余裕で人類を滅ぼせると思ってたのに!! アナタみたいな化け物がいるなんて聞いてないわよ!!」


そう叫びながら、死にかけている魔王たちを自分の所へ魔法で集めた。



「なんなのよ!! パパも死ぬ直前だったし、お兄ちゃんたちもアナタ一人に殺されかけてるし!! アナタ本当に人間?! 強すぎるにもほどがあるわよ!!」



大魔導を中心に光り始め、



「今アナタを殺しておきたいけど、アタシも殺されそうだから辞めとくわ。それじゃあ、またいつか」


一瞬にして消えてしまった。



転移魔法で逃げたのだ。




そのまま、戦争は終わりを迎えた。





-----------------------------討伐


『魔神』討伐失敗



『魔王』討伐失敗



『魔王幹部』十体 討伐成功







-----------------------------被害


『SSSランク 霹靂の剣聖』死亡



『SSランク』七名死亡



『Sランク』二十一名死亡



『Aランク』七十名死亡



『Bランク、その他』千名以上死亡



『SSSランク 流拳技』





魔神、魔王との戦闘で、再起不能の傷を負った。






反応して頂けると飛び跳ねます!!

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