三十殺目 お買い物
サマクランドの観光を始めた俺たちは、
「うっっま!! セレネさん、この実に入ってる水美味しいですよ!!」
「アビトこっちに来て!! 珍しい魔道具がいっぱいあるわよ」
ものすんごい楽しんでいた。
美味しそうな物を見つけては、食べ歩きをし、
面白そうな店を見つけては、中に入り買い物を楽しんだりした。
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「だいぶ回りましたねー。色んな物買っちゃいましたよ」
「私もお金を結構使っちゃった。でも、まだ多少余裕があるから大丈夫ね」
夕方頃には、大通りのお店をほとんど回りきったので、今はあまり人気がない場所をまったりと歩いていた。
人気がないといっても、大通りと比べたらの話だ。他の街の商店街とそこまで変わらないくらいの人の数だ。
お店の数も結構ある。
「セレネさんは、他に買いたい物あるんですか?」
「新しいローブを買おうかなって。この前のダンジョンでボロボロになっちゃったから」
「あぁーいいですね! 俺も新しいの買おっかな〜」
──今着てるのはレナさんが選んでくれたやつだけど、自分で選んだ服も着たいなぁ
どんな服を買おうか考えていると、セレネさんがニヤッと笑い、体をこちらに向ける。
「じゃあ、そのエプロン貰ってあげるわよ?」
俺もニヤッと笑い返し、
「僕がこれ手放したくないの知ってるでしょ?」
「ンフッ、まぁね?」
「やっぱり分かってるじゃないで……あ、危ないですよ?」
いい感じにイチャついていると、前から男が全速力で走ってくるのが見えた。
セレネさんが、その男とぶつかりそうだったので、肩を抱き、こちら側に引き寄せた。
「キャッ」
「セレネさん大丈夫ですか?」
「あ、え、あ、ありがとう……ちょっとぶつかっただけだから……」
顔を赤く染め、ドキマギしている。
──お? なんだこの反応は? ………照れてるのか?! なんで?! 可愛いって言っても照れないのに!?
「平気だから…も、もう離していいわよ…」
「あ、すみません」
「そ、その……ありがとうね」
赤面させた顔を手で隠して、目を逸らしている。
──やっっっっっっば、可愛いッ!!
その後、赤面セレネさんをガン見しながら数分歩いたところで、一際目立つ服屋があった。
店が紫色の不気味なキノコの形をしており、店の前には骸骨や魔物の頭などが飾ってあった。
「あ、服屋!! セレネさんあそこ行ってみましょ!!」
──なんか面白そう!!
「嫌よ、怖いじゃない。あの店だけキノコなのよ!? しかも紫の!!」
──あ、顔色戻った。
というか、とても怪しんでいらっしゃる……まぁ周りの店は全部普通だもんな〜
しかも骸骨って、本物じゃないよね?
ま、別にいっか!!
「とりあえず行ってみましょうよ!! ああいう店が意外に良いものが置いてあるかもしれませんし!!」
「ちょ、ちょっと!! 先に行かないでよぉ〜」
楽しそうな物には目がないので、なん躊躇もなく扉を開け中に入ると……
「おぉー中も凄い!!」
中は期待通り、骸骨系や十字架、魔物の頭や手足など沢山飾られていた。店の明かりも全て紫色で異様な雰囲気を醸し出していた。
そして、
「……らっしゃい」
「こわ…」
後から入ってきたセレネさんが、自然と言葉を零すほどの男が居た。
二メートル以上の身長に、鍛え上げられた肉体。
頭は紫色のモヒカンをしているコワモテのおじさん店員が居た。
──なんか興奮してくるな。売られてる服はどんなのかな〜
期待に胸を膨らませ、商品を物色すると……
「普通じゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「わッ!! 急に大声出さないでよ!」
ついつい叫んでしまった。
「だ、だって!! 店の見た目とか、飾りが全部個性的なのに、売られてる服は全部普通なんですよ!! というか、めっちゃオシャレッ!!」
「オシャレなら良くない?」
セレネさんが最もなこと呟くと、コワモテ店員が話しかけてきた。
「なんだい、あんちゃん?」
近くで見るとさらにデカイ。ずっと顔を合わせておくと首が痛くなるくらいデカイ。
そしてよく見ると、顔や体に無数の傷がついている。
だが、そんなことは関係ないッ
「なんでシャレオツな服しか置いてないんですか!? こういった店の相場はドクロシャツとか、ズタボロズボンとかでしょ!?」
すると、コワモテが頭をポリポリと掻き、申し訳なさそうに言う。
「店の外観や内装は、嫁の趣味なんだ。結婚した時に一緒に店を建てようってなったんだが、嫁の好みと俺の好みが真逆過ぎてな? だから、店は嫁が好きな見た目で、商品の服は俺が好きな物で分けたんだよ」
「あぁ〜なるほど」
「だからすまないな、あんちゃん好みの服はない」
「僕、この服の系統とかめっちゃ好みですよ?」
そう言いながら、置いてあったシャツを手に取ると、
「ほ、ほえ、ほ、本当か?!」
「は、はい。ちなみに大きめのサイズの服ってあります?」
「あわわわわあわわわあわ」
──あ、店員さんが泣き崩れた
「こ、ここに゛くる゛奴らの、ほとんどが……店の゛見た目と同じ様な雰囲気の服が目当てだったか゛ら゛、俺の服が、、、、全く売れな買ったんだよぉぉぉ!!!!」
「そ、それは可哀想に…」
「あ゛り゛か゛と゛う゛。好きなだけ見て行ってくれ!!!!!!」
俺たちは泣き喚く店員さんを横目に服を選び始めた。
「これ、可愛い…あの人センス良いわね」
「カッコイイこれ!! 皮のジャケットとか渋すぎる!!」
「あれも…」
「これも!!」
それぞれの好みに刺さる服ばかりだったのだが、
「選べないわね」
「全くです!」
候補が多すぎて、何も選べなかった。頑張って選ぼうとしたが結局閉店間際になってしまった。
店員さんはというと、
「こんなに………お゛れ゛の、服を、褒めてくれたのは、、、、あんちゃんたちが初めてだぁぁぁ」
まだ泣いていた。
「ん〜やっぱり選べないなぁ〜」
山ずみになった大きめサイズの服を眺めながら、唸っていると、店員さんが何気ない一言を放った。
「あんちゃんたち選べないなら、逆にお互いの着る服を選んだらどうだ?」
その一言で閉店まで残り三十分、俺とセレネさんが互いの服を選ぶことになった。
「セレネさんは、ローブが欲しいって言ってたからな〜」
──だが、せっかくなら俺好みかつ、セレネさんに似合う全身コーデを提供したい…
まず、ローブをメインで考えるか
ローブコーナーに行き、似合いそうな物がないか物色をする。
「俺と同じで、黒髪黒目だから……あッ! このローブめっちゃいいじゃん!!」
手に取ったのは、濃い黒いのローブだ。
縁にはグレーが使われており、おそらくセレネさんの足首くらいまでの長さがある。
──長めのコートだが、フォルムも色使いも素晴らしいな…
「よし、これにきーめた!!」
────閉店時間になったので、お互いが選んだ服発表会が始まった。
「じゃあまずは僕から!!」
選んだ服を着た、セレネさんと同じくらいの背格好をした木製人形をお披露目する。
「か、可愛い……これ本当にアビトが選んだの?!」
「あんちゃんやるなぁ」
──フッ、当たり前でしょう。なぜなら道場で自分たちのコーデだけでなく、女の子の自分好みのコーデも研究していたのだから。
俺が選んだのは、さっきのローブ。そして中には、白のブラウスに赤い細めのリボン。その上から黒のベスト。足元は黒のショートブーツ。
そして極めつけは……
ミニスカだ!!!!!!!
素晴らしい!! 自分で自分を褒めてあげたい!!
太ももが七割近く出ているレベルのミニスカートッ
「アビトがこんなにセンスが良いなんて…でも、スカート短くない?」
「そこ良いんだろ、嬢ちゃん!! 厚手で、しかも長さが足元まであるローブの下が、ミニスカなんだぞ!? 長いローブの間から見える生足はとんでもないギャップを産むんだぞ!!」
「た、確かに? それに私が選ぼうとしてた服より全然好き……」
──この店員……やっぱり分かってやがるッ
店員さんに感心をしていると、セレネさんが俺を見つめ、ニコリと微笑む。
「ありがとう、アビト!! 私、気に入っちゃった!!」
「ありがとうございます!! 喜んでもらえて何よりです!!」
「店員さん、これ全部ください!」
そう言い、店員さんと一緒にレジに行き、お会計を始めた。
「合計が、三万五千ゴールドだ。ありがとうな、嬢ちゃん!! あんちゃん!!」
──やっっっっっっったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
これで、太もも見放題だ!!!
うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!
思い切ってミニスカ選んだけど…良かったぁぁぁぁぁぁ!!
「え…」
気持ちの悪い太ももフェチが、心の中で雄叫びを上げていると、セレネさんの困惑した声が聞こえた。
「財布が………ない…」
──あ、セレネさんが泣きそうになってる…
こんにちは、マクヒキです!!
たくさんの方に呼んでいただけてとても嬉しいです!!
反応などをしてくださると飛び跳ねます
よろしくお願いいたします!!




