二十五殺目 パーティー結成
やっっっったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
黒髪魔女から、パーティーに誘われたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
だけどさ、
──何この人…地上で見たらさらに可愛いんだけど? さっきからまともに喋れてない……
「よろしくね!」
「よ、よろしくお願いします……」
チクショッ!! 緊張しすぎてしまう!! 生黒髪魔女とまともに話せるわけないだろ!!
「ハーライドって"流拳技様"と同じ苗字なんだね〜」
「そ、そうなんですよ。」
──というか、ついつい『餓猟の料理人』って嘘ついちゃった。まぁそっちの方が活動しやすいからいっか
「セレネさんも"聖光の魔女さん"と同じ苗字なんですね〜」
俺の何気ない返しで、セレネさんの表情が暗くなった。
「ルーシェ・ナイトウィルは、私の姉よ」
「え?!」
──あいつに妹なんて居たの? 聞いたことないんだけど?
「アビトも聞いたことくらいはあるでしょ? "ナイトウィル家の落ちこぼれ"って」
──へー、初耳〜
「それが私なの」
セレネさんが俯き、目が少しウルッとなっている。
「だ、だから、少しでも強くなるために学園から休学届を出して、色々なところを旅しているの」
──可愛いなこの人。泣きそうになってる顔も可愛いは素晴らしいな
「私はまだDランクだから、休学できる期間が短くてね。だから、残りの一ヶ月間だけアビトに、私と一緒に旅をしてほしいの」
──なるほど〜。ルーシェさんに追いつくために、わざわざ休学して、旅に出たんだ〜
「全然良いですよ!! 僕なんかで良ければ!!」
「ホント!? 良かったぁ〜。一人だと色々大変で困ってたの。中々良いパーティーメンバーを見つけれなくてね。それにアビトは結構やりそうだし、美味しい料理も食べたかったから!」
「はい!! 任せてください!!」
と、元気良く返事した時、あることに気づいた。
「ん? 一人?」
「そうよ。パーティーを組むのはこれが初めて」
「Dランク?」
「うん」
「Dランクの冒険者が一人で、C級ダンジョンに?」
セレネさんが少し顔を赤くしながら、黙って頷く。
「え? バカなんですか?」
「バカで悪かったわね!!」
つい本音が出てしまった。
──C級ダンジョンって、パーティーの平均ランクがC以上じゃないと攻略が厳しいのに……
それを? D級が? 一人で? すんごいじゃん……
「少しでも早く姉に近づきたかったからよ! それにアビトだって成人したてなのに、一人で居たじゃない!!」
セレネさんが、顔を赤らめ、息を荒らげながら叫ぶ。
「と、とにかく、私は歳と実力が近い人とパーティーを組みたかったの! 」
──歳は近そうだけど、俺Bランクなんだよな〜。このまま嘘を突き通したくないなぁ。
というか、セレネさんが、ルーシェさんの妹なら、俺が流拳技の息子だって言っていいのでは?
本当の事を言おうか、言わまいか考えていると、セレネさんの少しキリッとした黒い瞳が俺を見つめる。
「パーティーは組みたかったんだけど、冒険者はみんな姉か、ナイトウィル家目当てで近づいて来たりしていたから嫌だったの」
ニコッっと微笑み、
「でも料理人なら、姉さんとか、家の事は関係ないでしょ? だから安心してパーティーを組める! アビトが冒険者じゃなくて良かった!!」
「はい!!」
──よし、この一ヶ月は餓猟の料理人として過ごそう!!
とりあえず俺たちは、プロワセに行って旅の準備をすることにした。
のだが……
「あれ?! 私の馬がいない!!」
『囁く霊廟』の入口に停めていたらしい、セレネさんの馬が居なくなった。
「そんな〜。ごめんアビト、私も一緒に馬に乗せてくれない?」
「俺、馬に乗れないんで徒歩です!!」
キラッと歯を輝かせ、笑顔で答える。
-----------------徒歩で移動することにした。
「へぇ〜。セレネさんって闇属性魔法使いなんですね」
「うん。姉さんと逆の魔法で、勝ちたいと思ったから」
俺はセレネさんと雑談しながら、プロワセまで歩いていた。
相変わらず、ドギマギしてしまうが少し慣れた。
「闇属性魔法って扱いが難しいんですよね?」
「そうよ。攻撃力が高い代わりに、常に精神を一定に保たなきゃならないし」
「ほぇー」
──クソ。まともに目が見れないぞ……
一回しっかりと顔見てみるか、
チラッ
「ん? どうしたの?」
───あっかん……可愛すぎるやろ…この人どタイプすぎる。あきまへん、これあきまへんがな
「なに? さっきからチラチラこっち見て」
「い、いや〜。あんまりお姉さんと似てないなって…」
「私は母親似なの。姉さんは父親似だからね」
「ふえぇ〜」
勇気を振り絞り、セレネさんの顔を見つめる。
──ほーん……確かに髪色とか全然違うけど、目元とか顔立ちは似てるかな?
「そ、そんな見ないでよ!!」
セレネさんが顔を赤らめ、ぷんすかしてくる。
「私、姉さんみたいに綺麗じゃないから……」
──は? 何言ってんだこの人?
「セレネさんの方が圧倒的に可愛いでしょ」
──あいつより全然可愛いでしょ。なんだ? 謙虚さアピール的なやつか? 他の女の子に嫌われちゃうぞ?
「お世辞なんて要らないわよ。誰がどう見たって姉さんの方が綺麗だし。そう言って近づいて来た人たちは、結局みんな姉さんや家が目当てだったから」
おっと、これは?
「いやいや、本当に」
「はいはい。分かったから。ありがとうね」
──この人ガチ? ガチでそう思ってる人?
「僕が出会った女性の中で、ダントツですよ?」
「もう!! うるさい!!」
────バコッ
あっ、杖で頭をぶん殴るところは一緒なのか……
「というか…姉さんと会ったことがあるの?」
やべッ
「街でチラッっと見ただけですよ」
「なんか怪しいわね……」
「そ、そんなこと、あ!! あれ見てください!!」
その方向には、コス・ウルフの群れが荷物を担いでいる馬を食べていた。
「あの馬……私の馬だ」
セレネさんから強烈な殺気が放たれる。
──おっふ。ブチギレじゃん
杖を構え、魔法を唱え始め、
「『シャドウ・バレット』」
杖の前に黒い弾丸が生成される。
「まだ……」
また一つ、一つと、どんどん増えていき、最終的には約二十発程の弾丸が生成された。
「へーすご」
息を深く吸い、放つ。
「『シャドウ・バレット!!』」
─────ビュン、ビュン、ビュン、ビュン
黒き弾丸がコス・ウルフたちを撃ち抜いていく。
「なるほど〜。強めのDってところかな」
──でも〜、たくさん作ったせいで、一発一発の威力が足りてないなぁ。
それに、制御が上手くできてない。闇属性魔法は制御ムズいらしいからなぁ。
全部じゃなくて、半分だけとかだったら倒せたのに。
案の定、撃たれたコス・ウルフたちが再び立ち上がった。
「う、嘘!? 死んでない?!」
そして、魔法を放ったセレネ目掛け、襲いかかる。
「『の、ノワール・ミス……』」
辺りを闇で包もうとした時、アビトがセレネの前に立ち、ナイフを構える。
「ア、アビト?! なんで?」
ナイフを握りしめ、コス・ウルフへ立ち向かう。
「なんでって…僕たちパーティーでしょ?」
──コス・ウルフのお肉はあんまり気づけたくないから、喉元か
─────グサッ
「す、すごい。正確に喉を突き刺してる…」
「セレネさん! さすがに多いので、手伝ってほしいです!!」
「で、でも!! 上手く制御出来ないから、アビトに当たっちゃう!!」
セレネが、不安気で、申し訳ない表情をしながら、杖をギュッと握りしめる。
──あ〜、やっぱり制御に自信ないのか。でも俺、魔法に籠った殺意で、位置分かるから避けれるしなぁ
「セレネさん!! 俺避けれるんで、撃って良いですよ!」
「え!? なんで!?」
ニカッと笑い、
「信じてください!! 仲間でしょ!!」




