表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/42

二十二殺目 C級ダンジョン


「しんどかったァァァァァ〜〜」


到着した古びた大きな神殿の前に座り込み、膨れ上がったバッグを降ろす。




C級ダンジョン『ささや霊廟れいびょう

崩れた神殿の中に出来たダンジョンで、中に入ると石造りの通路や部屋になっているらしい。



階層は五階まであり、トラップなどもある。



出てくるモンスターはアンデット系やゴーレムなど特殊なやつがほとんどだと。






「じゃあ早速殴り込みに行くか〜」



中に入ると、神殿らしからぬ薄気味悪い石室の空間だった。


暗く、冷んやりしていた嫌な空気が流れていた。





「なるほどね。そりゃあ人気ないわな。遠いし、不気味だし、特殊系モンスターばっかりだし……」







とりあえず、歩き回って下に続く階段を探す。





大きな石室がいくつもあったので、一つずつ中に入って確認していくと、





「おぉ〜、あのクマより強い殺気が居るな」




部屋の中で殺気を放っていたのは、ボロっちいがフル装備をしている骸骨の騎士だった。




「あれなんだったけ?」




バッグの中からシニィさんと一緒に買った、『囁く霊廟の丸わかりブック』を取り出し、中を確認する。





「え〜っと、あれは『ボーン・ガード』アンデット系のモンスターで、物理攻撃耐性が高く斬撃が全く通じない……」




パタンッと本を閉じ、ボーン・ガードのところへ歩いて行く。







「打撃耐性って高いのかな?!」





目をキラッキラ輝かせながら歩みを進める。





俺は攻撃力が高く、一撃で終わることが多いので普段から殴り足りなくて、ストレスが溜まっているのだ。




「フェンリル戦以来か〜。あの時はめっちゃ気持ち良かったもんな〜。死にかけたけど」





道場『流拳技』の者たちは、溢れんばかりの欲求を全て"殴り"で鎮め、ストレス発散しているのだ。


殴る機会が減ると欲求が爆発し、とんでもないことになる。


だから硬くて、殴りごたえがあって、何回殴っても死なない魔物やモンスターを見つけると興奮するのだ。






「エヘヘヘ、何回耐えられるかなぁ?」





俺の興奮している声に気が付き、ボーン・ガードが剣と盾を構える。









アビトがボーン・ガードの間合いに入った瞬間、



「ギギィィィィィ!!」



ボーン・ガードが叫びと同時に剣を振り下ろし、アビトの体を斬り裂く。


空気ごと断ち割るほどの一撃は、速さも鋭さも、アイアン・ウルフの比ではなかった。







だが……














「うへへへっへへへへうへ」






アビトの体には……アビトが着ている"エプロン"には擦れ傷すら付いていなかった。









「やっぱすげー、このエプロン。攻撃を流す必要ないもん」







エプロンにまたまた感心してしまったが、そのことは一旦置いといて、





「さぁて、お前は何回耐えられるんだ?」








まずは、スキルを使わずの全力パンチでッ!!






「うっっらァ!!」




―――ドカッ






―――ドカッ






―――バタン




「えぇ〜、二発かよぉ」



なんだよ、物理攻撃耐性あるって言っても斬撃だけかよ





期待しちゃったな〜でも、いっか!! だって……





「ここゴーレムいるもん!!」



ゴーレムは物理攻撃耐性がすんごい高い。

だから道場のみんなは、サキュバスの次くらいにゴーレムが好きなのだ。




「確かゴーレムは四階層だっけ。じゃあパパっと階段見つけるか!!」






その後、俺は階段を探す為に歩き回り、モンスターを殴り飛ばしては、歩き回るを繰り返した。


















―――「階段みっけ!!」



二階層に続く階段を発見し、下へ降りる。





降りた瞬間に目に入ってきたのは、紫色のゆらめく光の塊だった。





何あれ? モンスター? 殺意はあんまり感じないけど……殴れば分かるか






「そいやッ」







―――ビュンッ







「えー!! すり抜けた!!」




拳が当たらなかった、すり抜けた。


だが、一番驚いたのは、







「すり抜けた瞬間、体力ちょっとだけ持ってかれたぞ……」






もう一回殴ってみるが、当たらず、そして体力が持っていかれた。




「何このモンスター、俺勝てないじゃん!!」





この光の塊がなんなのか本で調べると、





「『ゴース・ウィスプ』霊系のモンスターで、物理攻撃の大半がすり抜ける?!」




無理じゃん!!




「え〜、だが基本的に魔法使いしか襲わないため、触らなければ問題なし……。攻撃方法は、触れた相手の魔力と微量の体力を吸い取る。」



本を閉じ、ゴース・ウィスプを見つめる。


















「お前、魔法使い専門のモンスターじゃねぇか!!」




その後、何体か現れたがフル無視してやった。











―――奥に進むと新たなモンスターと出会った。





「『ブラッド・スコーピオン』だぁ!!!!」




赤黒い甲羅に覆われた大型のサソリ。驚異的な体力と、鋭い針に猛毒を持つモンスター。



道場がある森によく居た奴だ。






「こいつは良いんだよな〜。ゴーレム程じゃないけど硬いからめちゃくちゃ気持ちいいんだよなぁ」




ニヤニヤしながらサソリ君を見ていると、目と目が合い俺に向かって突っ込んできた。


長く伸びた尻尾を振り回し勢いをつけ、先端の毒針を突き刺しにくる。







「これ刺さったら流石にヤバいけど……」



俺へ向けられた針を、手の甲で触れ、横に押し流す。









―――ズドーーーンッ





鋭く伸びた尻尾がアビトの横を通り、壁へ突き刺さる。




「お前の攻撃、一直線だから受け流しやすいんだよなぁ」





拳を握りしめ、サソリ君に飛び掛かる。





「ウェッヘヘヘヘッヘ!!!! 次は俺の番だからな!!」
















―――「おッ三階層の階段みっけ!!」




確か三階層は、中ボスが居るんだよな……




サソリ君でストレス発散をしまくって非常に機嫌が良い俺は、あっという間に二階層をクリアした。





「ん〜、今すぐ殴り込みに行っても良いけど……」








―――ギュルルルルッ




「うん。お腹空いた」


休憩がてら、飯食うか!!




そうと決まればバッグを下ろし、保存鞄ストレージ・バッグを取り出す。




「何食べよっかな〜」




保存鞄を漁り、作る料理を決める。



「ガッツリ系じゃなくて、甘いの食べたいなぁ」





そう思いながら、漁り続けると……






「おッ!! これいいじゃんッ。パンケーキ!!!!」





シニィさんと買い物に行った時に買ったやつか!




「そうと決まれば、必要な道具を取り出してっと」
















──────────




「何このモンスターッ!! 触れただけで魔力が吸われる! それに素早過ぎて攻撃が当たんない!!」





クソ……


一階層に弱ったモンスターが数体しか居なかったから、二階層もイけると思ったのに……






キリッと黒く輝く瞳が、目の前に浮かんでいる光の塊を睨みつける。




「こいつに構ってたら、魔力がすぐ無くなっちゃう。もう、半分も残ってないッ」




杖に魔力を込め、












「『ノワール・ミスト!!』」


放たれた魔法が、辺り一面を黒い霧で覆い、その場に居た者は視界を奪った……









魔法を放った本人以外は。





「ここは、逃げるしかない」




ゴース・ウィスプにバレないよう、足音をたてずに駆け抜ける。





「危なかった。あんなに小さいのに素早く動かれたら、当てれない……」






あのモンスターから魔力たくさん吸われちゃったし、一階層に居た騎士のモンスターも、弱っていたとはいえ、全然強かった





「やっぱりC級ダンジョンは私には早かったのかな」





弱音を吐きながら、ギュっと杖を握り、壁際に寄りかかり座り込む。




「よし、一体だけ倒そう。モンスターをもう一体だけ倒したら帰ろう」






そうすれば、また一歩近ずける



倒せる可能性があるのは、一階層のモンスターだが、もう居ない。


そして、あの光の塊には勝てない。






と、なると……












奥に居る大きなサソリに目をやる。





「あれを倒して、私は…………強くなる!!」






立ち上がり、杖を構え魔力を込める。





「ここは暗いから、威力が上がるはず。そうなったら、私の魔法も効くはず……」






先程よりも多くの魔力を消費し、一つの黒い弾を作る。



そして、その弾をブラッド・スコーピオンに向け、






「『シャドウ・バレッド!!』」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ