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十九殺目 調理用品店

「このミネストローネは別格だ!! 冒険者が作れるレベルじゃねぇ!! こいつは間違いなく料理人だ!!」




フッ、当たり前だろ。俺の料理の腕はプロレベル。



しかも料理の十八番が『ミネストローネ』だ。



道場でミネストローネの研究をして完成させた、秘伝の調味料を入れたんだ。

それを食べたら、俺が料理人だって疑うやつなど存在しない。






「はぁ〜、でもなー。これじゃ冒険者として依頼受けれないしなぁー。そもそもギルドにも入れなくなっちゃったよ」



ギルドであの場に居たメンバーと鉢合わせしたら、すんごいことになるだろう。



「しゃーないなぁ。ダンジョンだけで我慢しとくか」




俺はダンジョンに行くために必要な物を揃えるために、商店街をブラブラする。



「ここら辺の地図は買ったし。食料も買った。このくらいか」



必要な物は揃ったが、観光がてら街を練り歩くことにした。



「色んな店あるな〜。アクセサリーに、食料、雑貨、調理用品店……調理用品店?!」



なにあれー? 俺に入れと言わんばかりの名前してる。別に欲しいのないんだけどな



だが、俺の体は自然と店に向かっていた。



「らっさせー」



店に入ると、俺の目には大量の調理器具たちが飛び込んできた。



「お、お兄さん噂の人じゃん」



噂? ……流拳技の息子のやつか!!



「い、いや!! 僕流拳技の、」


息子じゃない、と言おうとした時に店員さんの声が遮った。



「お兄さん、クラン『コングランド』の奴らを、ミネストローネで黙らせたって。すごいね」



あ、そっち? てか、その話そんな広まってんの?



「なんで知ってるんですか? それ二、三時間前くらいのやつですよ!」



「コングランドの連中は、プロワセでブイブイ言わせ過ぎて、みんなから嫌われてるし、恐れられてるんだよね」



店員さんが俺にイイネをしながら笑う



「そんな奴らが、"若い料理人に負かされた"となれば、すぐに広まるのは必然だよ」



「なるほどねー」



まぁそれはなるほどなんだけど。


この店員さん、



いや、この店員、





明らかに俺より年下だよな?


十歳くらいだろ?


焼けた肌に、それよりも少し濃ゆい茶色の髪の毛。

俺よりも身長は全然低いし、顔が幼すぎる



この子だけなのか?……




「君は店員さん? それとも親御さんのお手伝い的な?」



店員さん? が一瞬ポカンとした表情をするが、



「アッハハハハ!! そっか!! 君はここら辺出身じゃないのか!!」



こわい、急に笑いだした。えー、違法なポーションとか飲んでんのかな?



「私はシニィだ。こう見えてもお兄さんの親世代と同じくらいの年齢だよ」



え? 俺の親と同い年?! ってことは……



「じゃあ七十歳くらいってことですか?」



「えッ?! 七十?!」



店員さんが上擦った声で反応する。



「あ、そういえばそうだったね……」



は? そういえば? 何言ってんだこいつ





「まぁそれは置いといて。お兄さん何かお探しかい?」




額の汗を拭い、動揺を隠しながら接客を始める。




「ん〜。何か料理する時にこれあった方がいいとか、オススメあります?」



「そうだなぁ、これなんてどうだい」


店員さんが、棚から一つの四角い板? のような物を出した。



「これなんですか?」



店員さんがニヤッと笑い答える。



「これは『計量器』という魔道具だ」



「へぇ〜魔道具なんだ。どういった機能が?」



「フッフッフ。この魔道具に物を乗せると、物の重さが零点零一グラムまで分かるのだよ、少年!!」




な、なんだって!!??




「ってことは……正確に調味料の重さや、食材、その他諸々が分かるってことですか!?」



「そうだ。これを手にすれば貴様は更なる高みへ行けるであろう」



クッソ!! めちゃくちゃ欲しい!! これがあればより良いミネストローネを作れるッ。



だが、この店員が調子に乗ってるのがムカつく!!

両手広げて、上向きながら笑ってやがる、、、、




「フッハハハハハ、どうする若き料理人よ。己の料理が更なる進化をするのだぞ? 悩む必要があるのか?」



こいつ、なんで急にキャラ変してんだよ!!




「ッチ。ちなみに値段は?」



「三十万ゴールドだ。多少値が張るが………コンロを持っている貴様には、大した額ではないだろ?」




俺がコンロ持ってることも知ってやがる…さては、俺が買うのを分かってるから、ふざけてるのか


だったら、負けていられないッ



「はぁ?! 重さ測るだけで三十万ゴールド!? しかもその小ささじゃ、大きい食材や鍋とか乗せれないし、測れる限界値超えるだろ!!」



勝ったな



そう思っていた。だが、店員のニヤけた顔がさらにニヤける。



「おい、少年よ。ここにある"S"のボタンが何のボタンか分かるかい?」



「何が言いたい?」




店員が"S"のボタンを押すと、




「わぁぁぁぁぁぁ!!!!! おっきくなった!!!! すごーーーい!!!!」




計量器が、店員の身長と同じくらいの大きさになった。



「少年よ。この"S"は、"SIZEサイズ"の"S"だ!!」



胸を張り、ガッハッハッハと笑う。



「さらに、最大で三メートル×三メートルになる。そして、約三トンまで測れる!!」












「買っっっっっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」



「毎度ありッ」




くそ、負けてしまった。悔しい

でも、欲しかったから結局買ってはいたんだけどね





俺が財布を取り出し、代金を支払おうとすると、





「お兄さん?! 何その膨らみ方!! いくら持ってんの!?」



「二百万ちょいくらい?」



店員が額に手を当てて天を見る。



「かぁー。なんだよぉ、そんなに持ってんのならもっと、ふっかければよかった」



「おい、客の目の前でそんな事言うなよ」



「ッチ、なんだよ〜。五十万にしとけば良かった〜」



こいつ、えげつないな



「かぁー」とずっと言っていた店員が、ハッとしたような表情をし、店の裏の方に走って行った。



なんか嫌な予感がする



戻ってきた店員が持っていたのは、デニム生地のエプロンだった。



「お兄さん!! これどうだい!?」



「エプロンは持ってるから別に……」



断ろうとすると、



「これは、付与エンチャントされたエプロンだ」




「付与?!」



付与とは、高位の魔法使いしか出来ない技だ。

付与した魔法使いの属性が、物に宿る。


防具だったら、その属性の耐性が付き、

武器だったら、その属性の攻撃が出来るようになる。





でも、



「でも、エプロンって……」


どう考えても、付与されたエプロンなんて要らないだろ

これに付与したヤツ頭悪いんじゃないのか?




すると、店員がまたニヤリと笑う。




「計量器と合わせて二百万ゴールドでどうだい?」




「は!? 二百万?!」



二百万って……付与された物は最低でも五百万ゴールドはするんだぞ? なんでだ?!




俺の疑問をよそに、店員が話を続ける。



「しかも、付与された属性は"火"だ。だから、料理の時に油が跳ねて焦げたり、アツアツの料理をこぼしたりしても、何の問題もない!!」



なんだと?! ってことは、唐揚げを作る時も、油に怯えずに揚げれるのか!!







「それに、お前は相当な暑がりだろ? その体型じゃ少し動くだけで汗をかいたりするはずだ」




ま、まさか!!




「火属性が付与された防具は……」




嘘だろ?!




「暑さ耐性が上がり、汗をかきにくくなる!!」






なんだってぇぇぇぇぇぇ!!??!?!?!?






「極めつけは、そのエプロンに付与をした魔法使いはSランク冒険者の『炎帝』だ」




"S"?!



「あいつの付与は素晴らしいぞ。エプロン部分だけではなく、装備している者の全身を、熱から、火から守ってくれる。それに、そこら辺の防具より防御力は高いぞぉ」



プルプル震える俺の顔をムニッと両手で挟み込み、顔を近づける。



「さぁ、どうするんだい? 少年」








「買ッッッッッッッッッッッッッッたァァァ!!!!!!!!」

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