十七殺目 同族
「はい!! 同族です!!」
────数分前
「フガァー、フガァー、フガァー」
「フガァー、フガァー、、、ファッ!」
アビトの目がバッと開き、周囲を確認し始める。
「え? 殺気…扉の向こうから二つ」
アビトは殺気を探る訓練をし続けた結果、常人の何十倍も殺気に敏感になり、寝ている間や油断している時にも殺気を感知し、反応することができていた。
扉の向こうから微かに聞こえる声に耳を傾ける。
そこからは、あの姉妹の声がした。
「睡眠薬……」
睡眠薬? 薬盛られたの?! だから眠かったのか
でも、なんで?
「美味しそう……」
え?
「食べちゃお……」
ん? どういうこと? 俺食べられるの?
ロナさんとフィパさんが俺に睡眠薬を盛って、食べようとしている……
俺の処理速度が遅めの脳みそが、必死に動きある答えを導き出す。
これ、
夜這いだ!!!!!!!!!!!!!!!!!
これ、夜這いだ!!
えっちな漫画で見たことある!!
お姉さんが男の子に「食べちゃうぞ〜」って言って、そのままドスケベなことしてた!!
俺を眠らせて、無理やりそういうことしようとしてたのか!!
よし、寝たフリをしよう
ドアノブがガチャリと音を立て、扉が開く。
開くと同時に、二つの足音が聞こえてくる。
だんだんと足音はアビトの方に近づいていき、ベッドの横まで近づく。
そして、アビトの真横から声が聞こえてくる。
「じゃあ食べるか!」
ありがとうございます。ぜひ食べてください。水浴びをしてきたので臭くないですよ
「もぉ〜お姉ちゃん!! まず"脱がなきゃ"ダメでしょ!?」
服を脱ぐいでくれるんですか?!
そっか、脱がなきゃ出来ないか…
見たい、、、でも、ここで目を開ければ夜這いされなくなっちゃう……
その時、俺の頭にはある考えがよぎった。
俺の初めては「寝たフリ」でいいのか?
寝たフリ状態でしてしまったら、俺は満足するのか?
女性のありのままの姿を目に焼き付けながら、しないでいいのか?
というか、寝たフリはしなくていいのでは?
あっちはその気だし。俺もバチバチにその気だ
ならば、お互い合意の上で、出来るのでは?
それに、初めてが"襲われて"では、男として情けないのでは?
よし、
俺は意を決し、叫ぶ。
「ま、待って!!」
俺がいきなり叫びながら起きたことで、ロナさんたちが驚きの声を上げる
「え!?」
「な、なんで?!」
ごめんなさい、起きてました…
ロナさんとフィパさんの目をしっかりと見つめ、もう一度叫ぶ。
「あなたたちに食べられるんだったら、僕があなたたちを食べたいです!!」
初めては自分からしたいです!!!!
二人が目をかっぴらき、お互い目を合わせ、俺を見つめ、また目を合わせ、俺を見つめてくる。
いきなりすぎて戸惑ってるなぁ。安心してください!! 俺はウェルカムです!
ロナさんがハッとしたような表情をし、俺を見つめ、動揺しながら聞いてくる。
「もしかして、同族か?」
ん? 何言ってんだこの人
同族ってなに?
あッ!! エッチなことが好きってこと?!
「お前もドスケベだったのか?」ってことでしょ!?
な〜んだ。そんなもの決まってるでしょ……
「はい!! 同族です!!」
なので今から、三人で遊びましょう!!
すると、二人がため息混じりに肩を落とし、雰囲気が変わる。
「なんだよ〜同族なら先に行ってくれよ」
「そ、そうですよ。知ってたら面倒なことしなかったですし、」
そうですね。じゃあ今から真っ向勝負しましょう!!
「はぁ〜。期待して損したぁ」
「う、うん。ひさ、しぶりのご飯だと思ったのに」
ん?
「あんた、その人間美味かっただろ!? いいなぁ〜」
「わ、私も、その人間食べたかった」
ん?
「じゃあ、もう変身しなくていっか!」
「この村には、ど、同族しか、居ないからね」
ん?
すると、突然二人の体が光だした。
ん?
光が消えると、目の前に居た美人双子の姿が消えた。
ん?
2人が立っていた場所には、
全身が深い緑色で、腐敗したような見た目の化け物が居た。
人間の形をしていたが、ドロッとしたような肌に、目が抉れ、鼻は潰れていて、口が大きく裂けた顔をしていた。
ん?
美人双子は? 初めては?
動きが止まっていた脳が徐々に動き出す。
人間じゃ...ない? ってことは、どういうことだ?
明らかに魔物だ。でも、さっきまでの殺意がなくなっている
人間から魔物に変身した?
「それにしてもあんた、随分人間のマネが上手いな!!」
「う、うん。確かに全然気づかなかった」
野太く、汚い声で二人?が話す。
話し方は同じだが声も見た目も全然違う。
それにさっき、"人間が美味い"みたいなこと言ってたよな?
ってことは?
「これ、」
アビトの拳に殺意が込められる。
「あれ? なんだか急に寒気が?」
「え? これ殺気じゃ?!」
これ、、、
「夜這いじゃ、ない!!!!!!!!!!!!!!!」
―――ズドォォォォォォン
アビトの『殴殺』が、"ロナだった"魔物の上半身を、部屋の壁ごと吹き飛ばす。
「え、え、え、何で?!?!」
"フィパだった"魔物が戸惑いを隠せずに慌てふためく
「思春期の男の子を弄びやがってッ!! 殺す」
アビトが腕を振りかぶり、
「え、ちょ、ま、待って!! な、なんッ」
―――ッッッッビシャ
放たれた拳が顔面にめり込み、破裂する。
「チッッックショォォォォォォ!!!!」
「何が双子だ!! 何が性格は正反対だ!! ふざけるな!!」
「舐めたまねしやがって……殺すッ」
気色の悪い生き物を睨みつけるが、
「あっ、もう殺したんだった」
目の前には、下半身だけの死体と頭がない死体が転がっている。
ッチ。殺してもイライラする。夜這いじゃないのかよ
卒業できると期待していたので、ブチギレ状態でいると、耳にふと、外から人々の騒めき声が聞こえてきた。
俺が殴って空けた壁穴から外を覗くと、
「おいおい、こいつらと同じのがいっぱい居るじゃねえか」
ニヤリと笑い、再び拳に殺意を込める
「ちょうど、殺したりなかったところだ!!」
―――ドガーーーン
「やばいぞ!! あの旅人が殺し始めたぞ!?」
―――ズドーーーン
「な、なんでじゃ?! ただの料理人のはずじゃぞ!!」
―――ドバーーーン
「なにあの強さ!! もしかして高ランク冒険者?!」
「グヘヘヘへ、グッグッグッ、グヘヘヘへ」
気持ちぃ!! あいつらのせいで溜まったストレスが発散されていくッ
「ギヤァァァァッ!!!!」
「アッハハ、逃がさねぇぞ!!」
「ふぅ。全部殺し終わったなぁ〜」
村を見渡し、生き残りがいないか探す。
「いやぁーそれにしても、村ぐっちゃぐちゃになっちゃったよ」
俺が暴れたせいで、タニテン村が崩壊した。
「それにしても、普通の村人が誰も居なかったぞ?」
村中で暴れ回ったのに人っ子一人見かけなかった。
みんな逃げたのかな?
―――アビトは夜這いではなかった事がショックすぎて、あの姉妹の話しを聞いていなかった。
キョロキョロと村を見渡すと、
「あれって?」
そこには、ヨボヨボと歩いているジジィが居た。
しかも、
「タルブラジジィじゃん」
タルんだブラを着けているジジィに近づき話しかける。
「おい。あんたも魔物か?」
俺の質問に躊躇なく答える。
「そうだ。」
「そうか。何か言い残すことはあるか?」
ジジィは下を向き俯くが、すぐ顔を上げ答える。
「お主のような旅人を油断させる為に、敢えて若く綺麗な女や、年寄りだけになってたんじゃ」
「なるほどな」
ん? どういうこと?
まぁいいや、めんどくせ
「じゃあ俺から最後の質問だ。そのブラは?」
ジジィはニマっと笑い答える。
「魔物が愛した唯一の人間の物じゃ」
笑い、そして涙を流しながら、
「そして、ワシが殺した最初の人間でもある」
「なんで殺したんだ?」
「それは、」
ジジィの体が光、目の前には黄金色の髪をした、女性が現れた。
特別美しいというわけでも、スタイルが良いというわけでもない。
だが、愛の籠った目をしていた。
「それは、ワシが魔物だったから」
「そっか、辛かったな」
もっと分かりやすく説明してほしい。何がどうして、そうなったのか全く分からん
だが、死ぬ覚悟は出来ているのだろう。
温かく、それでいて包み込むような目で、俺をまっすぐと見る。
「じゃあな」
拳を顔目掛けて打ち込む。
顔に拳が当たる直前、
「次は、人間がいいな」
―――ドカーーーーン
──────────はぁ、やっとだ
「やっと着いた!!」
俺は目的の街『プロワセ』に着いた。
こんにちは、マクヒキです!!
なんとなくですがそんな感じです!




