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十五殺目 男女の争い

────次の日の昼から街では大規模な宴会が行われていた



「それでは皆さんジョッキを持ってください」


ギルドマスターである人妻さんが高台に上り、街の人たちを見下ろしながら言う。



「この度森を、村を、街を脅かしていたフェンリルが無事討伐されました!!」



人妻さんがジョッキを天高く突き上げ、叫ぶ。



「フェンリル討伐を祝して、乾杯!!!!」



人々もみな、ジョッキを掲げ、



「「「乾杯ッ!!!!!!!!!」」」






────その宴会は夜まで続いた


とにかくみんなずっと騒いでいた。そりゃあそうだ。自分や、大切な人の命を脅かしていた存在が討伐されたのだから。

それに、この中には自分の大切な人や村がフェンリルによって奪われた人もいるだろう。何時間も騒ぐ理由は分かる。



だが、、



「な〜んか、物足りないんだよなぁー」



騒がしいのは騒がしいのだが、刺激が足りない。面白みがない。

みんな酒を浴びるように飲んで、泣いたり、笑っているだけだ。



血がない。


暴力がない。


下ネタがない。



これを見ると、道場の宴会はイカれてたけど、楽しかったなぁ


こっちも楽しいんだけどね?



それに、さっきからずっと、ソミスさんとクラキさんが泣きながら抱きついて来るんだよなぁー



「アビトォォォ、お、おれ、はぁぁぁ!! お前がフェンリルに殺される、、、のを゛ぉぉ、わが、、て、分かってたのに、逃げたんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



「おま、え゛が、ルーシェさま、を、つれ、てきて、くれなかったら、今、ごろ俺らはぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




汚い。俺の服で涙とか鼻水拭かないでください。テカってるから、俺の服テカってるから。



フェンリルの炎で道着が燃えてしまったため、

俺は今レナさんに選んでもらった、黒い半袖シャツに黒の長ズボンを身にまとっている。ザ・冒険者らしい格好になった。



これどっちが普通なんだろ? スレイバスと道場どっちがおかしいのだろうか? イカれてるのが普通だと思ってたけど違うのかな?



俺はそんな考えを巡らせたまま周りを見る。



みんな服は着てるし、血も流していない。酒瓶で頭をかち割る人もいない。お酒の度数も低い



ん〜


別にいっか。それぞれの宴会のやり方があるし。俺は理解ある男の子だから






フェンリル討伐の宴会は朝日が昇る頃まで行われた。







────数日後


「そろそろ、別の街に行こっかなー。ある程度の観光とかできたし」



俺は、数日間スレイバスを観光しまくったり、ギルドで数個依頼を受けたりしていた。



「とりあえず、ギルドに行ってみんなからオススメの街とか教えてもらうか」




ギルドに到着し扉を開けると、中は泣き喚いている男冒険者で溢れていた。



え? 何があったの?! 大の大人がワンワン泣いてる。ちょっと引くんだけど……



泣いている冒険者の中に見知った顔が居たので声をかける。



「クラキさん、なんで泣いてるんですか?」



恐る恐る聞くと、クラキさんは目に涙を貯めながら、





「少し離れた湖で、、、、、サキュバスが出たらしいんだ」




「え!? サキュバスって、あの?!」



サキュバスとは、男冒険者が愛してやまない魔物だ。



理由は、全てのサキュバスは皆総じてある能力を持っているからだ。



正式名称は分かっていないが、男たちが敬意を表して、その能力に"ある名前"を付けた。


その名は......










『ラブ・コスプレイ』






『ラブ・コスプレイ』とは、サキュバスが見た男の好みの姿に変身をする能力だ。


相手好みの姿に変身をして、誘惑するからこの名が付けられた。



サキュバスは特殊能力はそれだけで、戦闘能力に関してはCランクくらいだが、Bランクの魔物として扱われている。

なぜなら、サキュバスと対峙した男冒険者は皆、精気を搾り取られて敗北するからだ。



ついた異名は、



『ハート・クラッシャー』



男は心を奪われ搾られる、女は普通に殺される。



二つの意味での『ハート・クラッシャー』なのだ。







────なるほど、これは嬉し泣きか

男はサキュバスが現れたと聞くと、大喜びするのだ。自分の理想の姿になって搾り取られるのだ。嬉しくない男はいない。

クラキさんだって結婚はしているが、それでも嬉し泣きするくらいサキュバスは男たちにとって大切な存在なのだ。




俺は目を輝かせる。


俺の初めては、好きな子かサキュバスさんだって決めている。

それくらい好きな魔物で、憧れの存在だ。



「どこですか!! サキュバスが出た湖ってどこですか!!!」



その質問を聞いたクラキさんが、周りの冒険者がさらに泣き始める。



「アビト…サキュバスはな、現れたと知らされた数時間後には、、」



表情が涙で見えないくらい泣くクラキさんが言う。



「殺された」



自然に殺気が放たれ、青黒い光がアビトを纏う。




「殺された? なんでですか!! "サキュバスは殺さない"それは、冒険者同士の暗黙の了解でしょ!! なのになんで!?」



涙を流しながら、俺の肩に手を置き話す。



「アビト、それは男冒険者だけの暗黙の了解だ。女冒険者にそれは通じない」



そうだ。男は搾り取られるだけで済むが、女は殺される。

さらに言えば、女は、冒険者の彼氏や旦那をサキュバスに寝取られている。



サキュバスは女の敵だ



女冒険者はサキュバスを見つけたら、殺すのが普通だ。




でも、





「サキュバスを殺した奴は女ですか?」



拳を握り、プルプルと体を震わせながら聞く。



「あぁ、そうだ」



サキュバス関連の話になるといつも男女で喧嘩になるそうだ。

サキュバスを崇め奉る男と、サキュバスを目の敵にしている女。

搾り取られた男は女から罵られ、殺した女は男から罵声を浴びせられる。



これが噂の"サキュバス戦争"かッ!!



クソッ、怒りが収まらない



「その冒険者がいる場所を教えてください。」



さらに、殺意を放ちながら、クラキさんに頼む。



「俺が泣き叫ぶくらいまで、ブチ切れてやります」



だが、クラキさんが顔を横に振る。



「それは、無理だ」




「な、なんでですか?!」




「サキュバスを殺した冒険者は、ルーシェ様だ」



は?



「俺たちも、切れてやろうと思ったがルーシェ様だと聞いて諦めた。切れた瞬間、殺される....」




「それに、三人の男が勇気を振り絞り、ルーシェ様を怒鳴ったら、次の日、半殺しの状態で土に体を埋められた状態で見つかったらしい」



「アビト、お前でもあの人に勝てないのは分かっているだろ? だから俺たちは、こうやって泣いて我慢するしかないんだッ」



あのアマァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァァァ!!!!!!!!



やりやがった!! やばいやつだと思ってたが、ついにやりやがったッ

性格が悪いとは思ってたが、サキュバスを殺すなんて……


殺す




俺たちの話を聞いていた冒険者が次々と泣き始める。



「うわぁぁぁぁ!! 俺にもっと力があればッ」


「俺が保護してあげれば!!」


「あの場にいたら命を掛けて守ったのに...」



これだけ男たちを泣かせやがって!! あの女、次会ったら一発カマす。どぎついのカマしてやる。

「女は殴るな」と言われてわいるが、サキュバスを殺した、しかも自分より圧倒的に強いやつなら殴っていいだろ!!


一回「本気の一撃を打ち込め」って許可貰ってるし!!



俺は泣いている冒険者たちに向かって、声を掛ける。




「みなさん!! 俺に任せてくださいッ」



その声に、冒険者たちの視線が集まる。



「ア、アビト。でもお前じゃ!!」


「そうだぞ!! 相手はSSランクだぞ!?」


「生き物としての、レベルが違う!!」



俺はそんな言葉をかけられるが、みんなに笑いかけ、



「安心してください。俺は『流拳技』の息子ですよ? あいつにキツイの一発ぶちかましてきます。」




「いいのかよ? お前がサキュバスちゃんの仇を?」


「アビト....お前は最高の男だよ!!」


「一番カッケェよ!!」


「うわぁぁぁぁ!! アビトォォォォォォ!!!!!」





冒険者たちがアビトを抱きしめながら、泣く。



アビトも雄叫びを上げながら、泣く。



その光景を見ていたギルドスタッフの男も、泣く。



外から見ていた街の男たちも、泣く。







その時、冒険者ギルドでは、涙で綺麗な虹が出来ていた。










────近くに居た女性たちは語る



「ホントにキモすぎ!! 男たちが抱き合って大泣きってッ」



「私あいつとのパーティー辞めて、女子だけで組もうかな」



「受付の時も、喋りかけて来ないでほしいです。」



「ルーシェ様に殺されろ」



こんにちは、マクヒキで!!

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