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十一殺目 フェンリル戦


次のターゲット俺じゃん!!


フェンリルが牙を剥き、風を切って飛びかかってくる。


「食べても美味しくないぞ!」


開いている下顎を目掛け、


「殴殺!!」


フェンリルの口が閉じ、その衝撃で身体ごと弾き上げられる。


そして、左拳で、ガラ空きな横顔を


「もういっちょッ!!」


白い巨体が横へ吹き飛び、重々しく地面に倒れ伏した。



おいおい、これイけんじゃね?

俺だけで勝てるじゃね?


俺Aランク?!



「良くやった、アビト!!」


クラキと双剣士がもう一度、攻撃をしようとした瞬間、フェンリルの口の周りが震え、青白く光る。



「ブオオオォォォォォォッ!!!!!!!!!!」


口が大きく開き、そこから青白い炎を吹き出し、その炎がクラキたちを飲み込む。


「クラキさんッ!!」


炎が消え、そこには焦げた残骸だけが、倒れている。




クソッ! クラキさんが…




フェンリルが俺の方向に顔を向け、口が青く光る



「やっばい」



口を大きく開き、炎を吹き出す。



その瞬間、




「俺たちも居んだよ!!」


ソミスが顔にタックルをし、炎が逸れる。


「こっちは遠距離攻撃できないんだよ!!」


続けて、ワントとコシノが攻撃を加える。



だが、フェンリルの毛皮には傷一つ付けれなかった。


「ちくしょう、俺たちじゃ無理だ!」


「アビト、頼んだぞ!!」






体制を低くし、全速力でフェンリルに向け走り出す。


フェンリルが右腕を振りかぶり、切り裂こうとするのを、流技で逸らしながら、懐に入る。



「殴殺!!」



首を目掛け、拳を叩き込む。



「グファッ」



間髪入れずに飛び上がり、頭頂を思いっきり、



「殴殺!」



「ドゥフェッ」


地面に激しく叩き付け、ブレスが来ないように、頭に跨り...



タコ殴りにする。



「うおおおらぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」


これで殺す!! 確実に殺す!!



無我夢中で頭を殴り続ける。



このまま、殴り殺す!!



―――ズン、ズン、ズン



フェンリルの頭を通じて、地面にまで衝撃が加わる。


「いいぞアビト! そのままやっちまえ!!」



俺を、そこら辺の冒険者と同じだと思ってんじゃねぇよ。


スキル持ちだぞ?


しかも冒険者の中で、最高火力と言われた"流拳殺技"だぞッ!!


拳にさらに、殺意を込める。



「こっちは、Aランクのお前にも効く攻撃力を持ってんだよぉぉぉぉ!!!」



拳を休めることなく、殴り続ける。


「タ゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァァッ!!!」


「コールデンスの分も俺が殺してやるよッ!!」


さらに、殴り続ける。




そうしようとした時、



―――突然、後ろから声が響く。




「アビト君下がってッ!!」




レナさんの声ですぐさま後ろに飛び、何事かと、フェンリルを睨みつける


その時、フェンリルが姿が変貌していた。



「は? なんだよあれ!?」





俺の目に、青白い炎に包まれた


いや、


青白い炎を纏ったフェンリルが映った。



「ガウウウアアアァァァァァ!!!!!!」



フェンリルの口から漏れていた青白い炎が、みるみるうちに全身へと広がり始めたのだ。

その炎は白い毛並みを焦がすことなく、まるで体の一部であるかのように全身を覆い尽くした。



「ふざけんなよ、さっきまで本気じゃなかったのかよッ」



炎を纏った影響でフェンリルは一回り大きく、さらに強い力と殺気が噴き出している。


タコ殴りにされたせいで、パワーアップしやがった


さらに、ここまで熱気が来るほどの高熱な炎を纏ってやがる。


あれ触れただけで、アウトだぞ?!




しかも、



「お、おい、アビト。あいつ平然と立ってるぞ? 結構殴ったよな?」



ソミスさんが戸惑いながらフェンリルを見る。



「はい。手応えはありましたし、結構本気で殴りました。」


ッチ。最悪だ。一番相性が悪いぞ。多分あいつは、





「あいつは、フェンリルはおそらく体力特化です。」


「はぁ゛?」


「嘘でしょ?!」


「いや、ありえないだろ!!」





魔物はマナを保有し、力の源として活動している。


強ければ強い程持っているマナの量が多くなる。


そして、俺ら人間はそんな魔物を倒し、魔物からマナ・ドレインをして、自分が望む力を手に入れる。


これは魔物も同じだ。魔物も自分が保有しているマナと、俺たちと同じで人間や魔物を倒して得たマナを自分が望む力に変え、己を強化している。



そして、このフェンリルは、Bランクの盾使いを吹き飛ばし、口からは高威力の炎を吹き出す。


だから、俺たちはこいつを攻撃特化だと思っていた。


レナさんたちが驚くのも無理はない。

てか、俺だった驚いている。



体力特化の魔物があの攻撃力なのだ。



舐めていたわけじゃない。だが、Aランクは俺の想像以上に化け物だった。



額から流れていた冷や汗が蒸発するほど、熱くなる。



それは、炎を纏ったフェンリルが俺目掛け、突進してきたからだ。



その姿はまるで、地獄そのものが向かってくるような。そんな悍ましい姿だった。



こんな突進、受け流せないぞ?!


というか触った瞬間アウトだし、避けれねぇ!!




こうなりゃあ、もう、







真正面からッ!!!



「殴殺ッ!!!!!!!」


フェンリルの頭と俺の拳がぶつかり合い、衝撃波が生まれる。


「キャッ!!」


その場は、青白い熱気の光と、青黒い殺気の光に包まれた。



熱い、拳が燃えるッ。しかも炎が拳に押しつけられてるから爛れる!! だが、







威力は俺の方が上だ!!!




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」



フェンリルの頭が押し返され、炎の巨体が吹き飛ばされた。



「ハァ、ハァ、ハァ、」


一発殴っただけでこれかよッ。



自分の爛れた拳を見て、再び力強く握る。



「あと十発くらいが限界だぞ?」




それに、さっきまでの状態だったらまだ勝算はあったが。あの炎纏った状態じゃ勝てない...


それどころか、全員死ぬ。








なら、




拳に今まで以上の殺意を流し込む。


「グハッ」


噴き出た血を手で拭いながら、さらに流し込む。



自分のキャパ以上の、殺意のエネルギーを一気に流したから心臓が…



アビトの鼓動が早くなり、体がどんどん熱を持ってくる。



まだ、まだだ!! もっと殺意を込めろッ   まだイケるだろ!!


「ゴポッゴポッ」


血がとまんねぇ、頭もぐわんぐわんする。でも、もっと、もっとッ!!




拳が、今までとは比べ物にならないほど、殺意と青黒い光に覆われていく。







十発しか殴れないのなら、


全員逃げられないのなら、





こいつに殺されるのなら、











「十発以内で殺してやるよ!! クソ狼がッ!!!!」




吹っ飛ばされた、フェンリルに向け走り出す。






その時、



ふと耳に、小さな音が入ってきた。








「ヒュー、ヒュー、ヒュー、」


掠れ濁り、切ないような音。



「あッ!!」


音のした方向を見る。そこに居たのは黒焦げになったクラキさんたちだった



「マジか!!、あのブレスを至近距離で受けて、生き残ったのか!?」






「ア、ア、アビト...おれは、ま、まだ.....たたかえ、るぞ...」



クラキさんが一生懸命、息をしながら、焼き焦げた口を動かしている。


そして微かに開かれた目には、小さな、だが、まだ燃えている闘志の火があった。




「ハハっ。さすが、さすが冒険者だ。あんためちゃくちゃカッケェよ」


拳を強く握り、クラキさんを見つめる。



「クラキさん、安心して俺に任せてください。そして俺が、フェンリルを討伐したら宴会をしましょう。だから、クラキさんはそれまで生きることに専念してください。」



「そ、そうだ...な。そうなりゃ、めー、いっぱい...さわが、なきゃな......」



俺はクラキさんに満面の笑みを見せながら、笑う


「だから先に戻って休んでてください!! 美味しい料理、期待してますよッ!!」



その時、吹き飛ばされたフェンリルが立ち上がり、アビトへ向かおうとしている。



正直、クラキさんたちは死んだと思ってた。だが、まだ生きているのなら話が変わる。作戦変更だ



迫り来るフェンリルを見つめながら叫ぶ。


「ソミスッ!! レナッ!! ワントッ!! コシノッ!!」


視線がアビトに集中する。


「“コールデンス“を連れて、街へ戻れ!!」



ソミスさんたちが街に戻るまで、死ぬ気で時間稼ぎを!!


そうすれば、犠牲になるのは俺だけだ




「ア、アビト!何を言ってるんだ!?」


ソミスさんが叫び返す。


「まだクラキさんたちはギリギリ生きている。早く街に連れて回復魔法掛けないと死ぬぞ!!」



俺の覚悟伝えないと、あなたたち逃げてくれないでしょ、



「で、でも!!、アビト君一人じゃ……」



「分かってんだろ!!あんたらじゃ足手まといだッ。それに全員を庇いながら勝てるわけないだろ!!」




ソミスが唇を噛みしめながら、体を震わす。


「ック。お前らぁ!! コールデンスを連れて馬車まで行くぞ!!」



「なんでよソミス!! アビト君を見捨てるき!?」


レナさんが泣きそうになりながら、叫んでる

やっぱりレナさんは優しいな


「アビトの覚悟を無碍にすんじゃねぇ!!」



ソミスたちがクラキたちを担ぎ終え、走り出す。



これでいいんだ。これしか方法がなかったから



フェンリルが先ほどよりも、炎を、スピードを上げながら突進してくる。



さすがにこれは……しんどいな〜。生き物としての格が違いすぎるもん

あ〜あ。これから、色んな景色を見に行けると思ったのになぁ〜


ごめん師匠、不甲斐ない弟子で、













「アビトォ゛ォ゛!!!!」



森全体にその野太い声が響き渡る。



声の方に目をやると、ソミスさんが振り返り、立ち止まっていた。




そして、俺の目を真っ直ぐと見つめながら。




「お前も、めちゃくちゃカッコイイぞ!!」




ニカッと笑い、拳を俺の方へ向け、











「“流拳技”!!」








そう言い残し、走り去った。




「アッハッハッハッハッハッハハッハッハ」


やべぇ、笑いが止まんねーよ




「そうだよ、そうだよ!! 俺は誰だ!? 俺は何者だ!? 俺は誰の息子だ!? 俺は誰の弟子だ!? 俺は誰の意思を引き継いだ!? 俺が何者か、言ってみろッ!!!!!!!!!!」



アビトの目に、眩しすぎるくらいの光が宿る。



「俺は伝説の冒険者、ガイト・ハーライドの意思を引き継ぐんだろ!!」





俺が、俺が……





殺意を大量に解き放ち、目の前まで来ているフェンリルを睨みつけ、叫ぶ。














「俺が『二代目 流拳技』アビト・ハーライドだッ!!!!!!!!」




髪を掻き上げ、ニヤリと笑う。



そして拳には、先ほどよりも圧倒的に多い量の殺意を流し込み、構えを取る。



左半身を前に出し、体を半身に。


右手は軽く握り、左手は人差し指を立てて、クイックイっと挑発する。






「殺してやるから、殺しにこいッ!!」

こんにちは、マクヒキです!!


ハムスター

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