第1話 幼馴染は笑い飛ばす!
「ハハハ腹痛い~。ちょろすぎるでしょう、影文」
俺の名前は影平影文。地味しか取り柄のない高校三年だ。えっへん。
そして、今、俺の部屋で机を叩いて笑い転げているのが、向かいの家に住み、毎日のように押しかけてくる幼馴染の剣菱刀花だ。ちなみに、同じ高校に通っている。
「お前な。フラれた男の目の前で爆笑するやつ、普通いないからな」
「いやいや。交際一日でフラれるって、そりゃ笑わずにはいられないでしょ」
俺は背中をバンバンと叩かれる。
「そんな面白い話を引き当てちゃうなんて、あんた明日死ぬんじゃない? それとも、もう死んでる?」
(慰めるとかないのかな?)
ただ、こういうときに話ができるのは本当に気が紛れていいと思っている。それにこれが缶ジュース1本で済むのだから、超お安い。
(まぁ、刀花が部屋にある冷蔵庫から勝手にとったんだけどね)
「剣菱ってやっぱ安い女だよな!」
「言い方。言い方」
ちょうど飲み終えた缶ジュースが投げつけられる。
「イテッ。 おい、ワザとだろっ!」
「反射神経なっしんぐ~」
俺とは真逆で、太陽のように明るい性格の彼女。勉強はからっきしダメだが、容姿端麗で運動神経も抜群。当然、友達も多い。
それともうひとつ、確かなことがある。
俺とこいつの関係は、親友以上恋人未満――いや違う。もっと可能性は低い。となると、不能という言葉がしっくりくるな。うん。
避けたつもりが、しっかりと頭にあたってしまう俺だった。