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4.依頼の報酬


 4日かけてバルトンガードに戻り、騎士団で討伐の証拠と首の届け出をした後、証明書を持ちベネリと共に鉱山組合の事務所に急いで向かった。


「おい!ダッチだ!!ダッチはいるか!?」

「しょ、少々お待ちください」


 バルドンガードの酒場から5分くらいの距離にある鉱山組合の事務所では、いつも通り小柄なドワーフの女性が受付をしていた。こちらの剣幕に驚いたのか、彼女は急いで組合事務所長のダッチを呼びに走る。

 少し待っていると、先程の女ドワーフに事務所長室に通された。


「おい!ダッチ!てめぇ!どんな依頼出してやがんだ!」

「おいおい!落ち着けよ、フクロウのブライト。何があった」


 ダッチはとぼけた顔をしているが、これはいつも報酬を渋られるときに慣れている。今回はこちらも譲る気が無いので、小柄なドワーフを威圧するように前に立つ。


「何があったじゃねぇ!!依頼内容と全然違うじゃねぇか!」

「分かった!分かったから!詳しく聞こう。そんなにいきり立ってたら話も出来ん。取り敢えず座ってくれ」


 それでも座らずに睨んでいると「団長、座りましょう」とベネリに宥められた。


「今回の依頼は何を受けてくれたんだ?」

「てめぇらの輸送路に出た盗賊の討伐依頼だ。先々週くらいに出した10人規模のヤツ」

「ん~と……あ~あったな2000レナールのか?」

「そうだ。今回は追加報酬を貰いに来た」

「知っての通り、俺達は追加報酬は出さない主義だ」


 本当にドワーフは金に汚い。というよりケチだ。鉱山に籠っているだけあって、ひかりモノや鉱物が大好きなのだろう。それの延長線上でなのか、金もしこたまため込む癖がある。


「今回ばかりは、貰わないと帰らん!こっちも部下に顔向けできんからな」


 剣をその場に立てて地面を突き刺すように打つと、ダッチは苦虫を噛み潰したような表情で「分かった聞くだけだぞ」と呟いた。


「依頼書では10人規模の盗賊だった筈だろ?25人いた」

「は!?冗談言うなよ」

「本当だ。騎士団にも届け出済みで証拠もある。それにあいつらは随分と訓練されていたぞ、正規軍の兵士かと思った」

「何を馬鹿なこと言ってるんだ。そりゃーブライト、お前らが弱すぎるだけだ」


 ダッチが発する言葉の一つ一つがこちらの苛立ちを増幅させる。


「陣形組む盗賊なんて見たことあるか?あと、あいつら一つも財宝を貯めてなかった!だからこっちも懐に入れる物も無くて、苛ついてんだよ!!!」

「どうせお前らの誰かが取ったんだろ」

「あぁ!?てめぇ、俺が舐められてるって言ってんのか?」

「いや、落ち着けブライト。今のは悪かった」


 こちらを落ち着かせると同時に、少し思案に入ったダッチに畳みかけた。


「そのお陰で、こっちも新人が6人と古参が2人やられてんだ。せめて一人200レナール、合わせて1600は貰わねーと部下に顔向けできん」

「それはさすがに無理だ。一人頭50」

「200」

「80」

「200」


 本当は相場の100レナール程が相場だが、ここは粘って多くとらなければ部下たちが付いてこない。目標は150にしている。


「100」

「200」

「おい!200なんて無理に決まってるだろうが!」

「分かった……180でどうだ?」

「まだ高い!120!」

「170」

「140」

「ったくよー、ダッチ。少しは人の仕事を敬ったらどうだ?」

「……150」

「妥協点だな」

「てめぇこそ人のケツの毛までむしり取る気か!?」

「安心しろ。身ぐるみで済ませてやる」

「金の亡者が」


 鉱山組合の事務所まで来た目的は達成できた。あとは報酬を受け取るだけだが、一つ気になったことを質問してみた。


「お前らアイツらに何を取られたんだ?」

「盗賊にか?うーむ……報告した奴が今日いる筈だから聞いて来よう」

「金だけは忘れるなよ」

「へっ!」


 ダッチは短い脚で地面を踏み鳴らしながら出て行った。


「団長見事っすね。商人になれるんじゃないっすか?」

「読み書き計算できない人間がどうやって商人になるんだよ」

「俺が教えますよ!」

「興味ねぇな。俺は傭兵だ、強けりゃそれでいい」

「損は無いと思いますけどね」

「損得で考えるのはお前の生まれの商人らしいな、俺は気分で考えるんだよ」

「っすか」


 こちらの返答に残念そうな顔をするベネリが可哀そうに思ったが、それでもやりたくない物はやりたくないのだ。


「団長、俺が死んだらどうするつもりなんですか?」

「そりゃ、文字が読める誰かを雇うよ」

「でも、そいつが本当に読めているかも、金をくすねてないかも、誰も分かりませんよ?」


 ベネリの言葉は正論だった。


「じゃあ、二人雇う」

「そいつらに結託されたら変わらないっす」

「……何故そこまで俺に学ばせたいんだ?」

「副団長のタボールさんが居なくなってからというもの、金の回りが悪くなった気がします。もちろん俺が依頼とかは頑張って見つけてますけど、タボールさんみたいに上手くはいかないです」


 確かにベネリが依頼を取捨選択するようになってからというものの、手間のかかる依頼や報酬がしょっぱい依頼が増えた気がする。それによって時間が取られる割に金が稼げていない。


「このままだと、厳しいか?」

「えぇ、自分は傭兵になって半年も経ってないんですよ?慣れようとしてますが、前みたいな余裕は無くなるかもしれないです」

「……分かった。分かったよ」

「良かったです。明日から始めましょう」


 心底嫌だが、やらなければいけない事なのは分かっている。深いため息が出た時、ダッチが戻って来た。


「これが報酬だ」

「ベネリ、確認しろ」


 話しながらベネリが確認している所を横から眺めていると、これからこの面倒な作業を自分も出来るように勉強するという事実が、頭痛を残した。


「団長。確かに3600レナールあります」

「ありがとよダッチ。これで部下にも示しがつく」

「はぁ……今回だけだぞ」


 そこでダッチが思い出したような顔をした。


「そういえば、盗賊に持っていかれたのは馬車ごと鉱石全てらしい」

「ひとつも見当たらなかったけどな」

「お前ら間違ったやつ殺したんじゃねぇか?」

「だとしたら、もう一回依頼書出してくれ。本当に10人なら引き受けたる」

「お前らには当分頼まん!!」

「出してくれたら、勝手に持ってくさ」


 厄介事を追い払うように事務所から出されると、俺たちは拠点への帰路についた。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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