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2.酒場の依頼板


 俺たち傭兵団は、バルドンガードという街の郊外に拠点を置いている。

 バルドンガードは東の交易港から7日、北の鉱山と工業都市から10日、西の王都からは12日の距離にあり、街道が交差する場所にできた街だ。この街には様々な場所から、人と商品が集まる。そして当然の如く、厄介事も大量に集まって来るのだ。


「おぉい!!てめぇどこ見てんだよぉ!」

「あぁん?いたのか?チビ過ぎて見えんかったわ」

「んだと!?てめぇやんのか!!」


 冒険者組合や商業組合、傭兵組合その他諸々のギルドが集まる街の中心部にある酒場で、日常茶飯事の如く喧嘩が始まった。二人の男が言い争いを始めた周囲のテーブルがあっという間に除けられて、二人を中心とした簡易的な闘技場が出来上がる。ここまで呼吸を3つもしていないだろう。大した手際と慣れだ。


「団長~、どっちにします?」

「小柄なハゲのおっさんに10レナール。自分よりかなり大きい相手に物怖じしてない、ありゃ手練れだ」

「じゃあ、自分は天パのデカい方に10レナールで。やっぱ喧嘩は体格ですよ」

「ベネリ、そりゃお前考えが甘いぜ。見ろよあの武術に通じてそうな見た目」

「いや~団長こそ……」


 どっちが勝つかを言い争っている自分とベネリの前に、周りの机からも団員たちの掛け金が集まって来る。大体全員が賭け終わった頃に、上半身裸の二人の男の喧嘩が始まった。


「いけぇ~!ぶっ殺せ!!!」「やっちまぇ!!」


 様々な応援の言葉が飛ぶ中で、大柄な方が左ジャブからのワンツーを仕掛けた。それを華麗に躱した小柄な方がカウンターを鳩尾に入れる。そのまま片膝をついた大柄な男に追い打ちの膝蹴りが顔面に入り、吹き飛ばされた。だが、降参するまで終わらないのがこの戦いだ。

 大柄な男は鼻と鳩尾を抑えながら起き上がると同時に、小柄な男へと突進した。テーブルで囲われた狭い簡易闘技場では避けることが出来ない。小柄な男は、あっという間に組み敷かれ、そのままバックチョークを決められて失神した。試合終了だ。

 

「おーい!!まじかよぉ~」「早すぎるだろ!!」「ふざけんな!」「金返せ!!」


 様々な罵声が飛び交いながら、テーブルがあっという間に元の形に戻っていく。勝った大柄な男は称えられてエールを奢られている一方、小柄な男は仲間に店の外へと連れ出されていった。


 そして自分も五日分の食費を失った。2階の手すりから乗り出していた体が、力なく元の席へと戻る。


「だから言ったすよ~団長~。ホント賭け事弱いっすね!」

「黙れカス。喋るな」

「あざ~す」


 2階の特等席から見ていた傭兵団のメンツは、半分が金が増えた事を喜び、半分は自分と同じく意気消沈していた。


「金稼がなきゃなー……うぜぇ。ベネリ、依頼はあったのか?」


 俺たちの傭兵団、森の梟団(通称:フクロウ)は文字が読める奴が二人居る。いや”居た”と言った方が正しい。というのも副団長のタボールは前の依頼で無残な死を迎え、残ったのは商家の不義で生まれた上に、兄が家業を継いだ後で追い出されたベネリの二人しかいなかったのだ。

 なので今はベネリが、酒場の壁の掲示板一面に張り出された大量の依頼を見て、酒場の二階席で集合している自分達に依頼を持ってくる事になっている。


「あったすよー!これとか」


 そう言って自分の前に依頼が書かれた張り紙を差し出してくる。


「読み上げろ」

「うす。えーっと……依頼内容、盗賊の討伐。報酬は2000レナール、依頼主は鉱山組合っす」

「どんな依頼持って来てんだよ!馬鹿か!盗賊の討伐を2000レナールで受ける馬鹿がいるか!やっと人数戻して20人にしたばっかりなんだぞ、全員のひと月分しかねーじゃねーか!」

「いや……ここから北に3日くらいの距離で10人規模らしくて、団長が前言ってた通り、新しい依頼で先週のヤツっす」


 確かにベネリは言いつけを守っていた。討伐の依頼を受ける時の敵数は自分達の半分以下で、依頼は3ヶ月以内でなければならない。これは、同数以上の敵と当たり損害が出るのを減らす為と、依頼が古ければ古いほど生き残っている盗賊で、それだけ経験も積んでいる上に人数も増えていることがあるからだ。


「うーん……けどな、2000だぞ?しかも鉱山組合は追加報酬がねぇからな~」

「いや、でも……」

『大丈夫だと思いますけどね』


 隣の卓からベンソンが口を挟んで来た。こういう時にタボールが居ないのが心細い。


「ベンソン、てめぇは黙れ。分かった……丁度賭けにも負けたし金が必要だ、今回の依頼はそれでいこう」

「「「うぉおおおお!!」」」


 酔っぱらった男達は、久しぶりの依頼と初めての依頼にいきり立っていた。20人に戻ってからは、まともな集団訓練は行いっていないが、半分の人数の盗賊なら何とかなるだろう。


「今日は帰るぞ!」


 次の日の昼に東城門に集合という話でその日は解散となり、一人残らず酔っぱらったまま郊外の拠点へと皆で歩いた。


 春を迎えたばかりだが今年は随分と暖かいようで、夜になっても上着を着なくても良いくらいだった。明日から1週間ほど行う事になる盗賊討伐が、せめていい天気のまま続いてくれることを祈るばかりだ。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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