八分の八
「このお店にはよく来るの?」
「偶に、学校帰りに寄ります」
「どれくらいの頻度かな? 例えば、週イチとか?」
「いえ、そんなには……月イチくらいです」
「なるほど。因みに、今までに店から商品を購入したことはある?」
「ありません! というか、プレーヤー持ってないので……」
「ん? じゃ、どうして? 月イチで寄ってるんじゃなかったっけ?」
「それは、付き合いで来てるだけです。友達が音楽好きなので……」
「ふうん、それじゃ今日も付き合い?」
「違います! 今日は一人です」
「んー、なんか矛盾してるよね」
「プ、プレゼントを捜しに……もう直ぐ誕生日だから……」
少年の頬が染まる。
「ほう、友達は女子か!」
「別に関係ないでしょう! そのことは」
更に染まる。
「で? プレゼントは?」
少年の口が急に重くなったのを見て、洸平が先走る。
「……出来心でやっちゃったか?」
「違います、諦めたんです! ピンと来なくて……。そしたら急に鞄を改めさせてくれって、調べてたら……」
「これが出て来た!」
洸平は机の上のCDを指して反応を確かめた。
「もう、訳が判らなくなって……」
頭を抱え、ただ項垂れるだけ……これと言って、目を張る様子は無い。
「でも君は身に覚えがないんだよね?」
「はい、そうです」
この質問には顔を上げ、ハッキリと真っ直ぐに返した。
だが、その様子が洸平には届かない。
別の気掛かりが浮かんで、既に少年は背景の一部と化していた。
(取り敢えず、示談なら良いけど……告られたらどうする? 管轄、何処だっけ? 五条署?)
その時、携帯のバイブ音が叔父の到着を少年に告げた。
「あっ、叔父が来たみたいです!」