八分の七
「守田英昭さん。では、お願いします。まず最初に、彼が万引きするところを目撃さまれましたか?」
「いいえ」
「では、防犯センサーか何かで検知したんですか?」
「違います。保安員からの報告を受けて、それで鞄の中を確認させて貰いました」
「保安員というと、万引きGメン?」
「そうです。本店からの委託で来ていただいてます」
「なるほど! それで、鞄の中からは何か見つかりましたか?」
「未精算のCDが出てきました」
「それは今、何処にあります?」
「私が持っています」
店長はエプロンの胸ポケットから一枚のCDを取り出すと、それを机に置いた。
「因みに、鞄の中身を確認した場所は何処ですか?」
「CDコーナーを出て直ぐの場所です。うちはコーナー毎に精算するシステムなので……」
「判りました。ありがとうございます。あと、保安員の方にも話を伺いたいのですが……」
「え!」
一瞬、店長は戸惑った表情を浮かべて続けた。
「ごめんなさい! 夕方五時までの契約なので、もう……」
既に、定刻から三十分以上が過ぎている。
「そうですか……では、改めて調整して貰うことは出来ますか?」
「伝えておきます」
その後、一人メモを書き込み続けること暫し……その間を洸平に代わって沈黙が支配する。
二人は抗えず、成り行きに身を任せるしかない。
黙って、顔を突き合わすだけの時間が居た堪れない。
沈黙が苦痛を侵蝕して苦悶に変わる少し前、
「じゃ、今度は君の番だ」
聴取が再開されたことに店長と少年は安堵した。