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八分の六

「順を追ってちゃんと聞くつもりだけど、親御さんに連絡するのが先かな?」


 溜め息まじりの吐息をついて少年は自分を(なだ)めた。


 子供とは思えない反応に二人の大人が面を食らう。


「今、直ぐは仕事中なので無理だと思います」


 その『(かたく)なさ』には『(いさぎよ)さ』が同居していて、少年の『純真さ』が重なり、洸平に無理して追うことを躊躇(ためら)わせた。


「じゃぁ、代わりになる人、誰か呼べる? 例えば、担任の先生とか?」


「叔父には直ぐ連絡がつきます」


「そう! じゃ、連絡ついたら僕と代わってもらえる?」


 少年は(うなず)くと、携帯を取り出し操作を始めた。


 その合間を()って、洸平は先に事務的な作業を進める。


(ちな)みに被害届はどうされます?」


「それは、その……親御さんも交えて話さないと何とも……」


 少し戸惑った様子で店長が答える。


「まぁ、そうですよね。別に私のことは気にしなくて構いませんよ。非番ですし、偶々、居合わせただけですから……」


「判りました」


「お店の手順に(のっと)って頂いて結構ですよ。色々と手続きもあるでしょうし、その辺は臨機応変に対応するつもりで」


「あの、代わってもらう前に切られてしまいました。十五分以内に駆け付けるそうです」


 狼狽(うろた)えた少年が、食い気味で話を割った。


「そう……じゃ、先に店長さんから(うかが)いましょうか?」


「お願いします」


 何事も無かったような洸平の反応に、少年が落ち着きを取り戻す。

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