九分の八
「うるさい?」
「アンタみたいなんばっかりか?」
「……どういう意味でしょう?」
「作品にしか興味無いんでしょ? 人の気持ちとか感情ほったらかしですか?」
「そういう意味ですか……だったら多分、その通りです」
悪びれる様子もなく、平然と和哉が答えた。
その素っ気ない態度が穂華には我慢ならない。
「そんな、ペラペラなトコに晋吾を巻き込まんといて下さい! 根性だけやのうて性根まで腐ってまうわ!」
これまでに無い勢いで和哉を問い詰める。
「ペラペラ、確かにペラペラですね! でも、巻き込まれるのは仕方ありません。評価される才能を持っている証ですから、諦めて下さい」
「そっちが諦めるのが筋でしょう!」
「では、仮に諦めたら、どうします?」
確かに! 和哉に言及されるまで、そのことに考えが及んでなかった。
「これまでと同じように距離をとって、お互い別々に暮らすのですか?」
「それは……」
「それとも会いに行きますか? 会って全てを打ち明けて、変な連中に気を付けろと忠告でもしますか?」
「……」
「少なくとも、今すぐ打てる有効な手段が思い付かない……違いますか?」
反論の余地が無くなった穂華に、和哉から真実が告げられる。
「聞いてた通り、本当に強情な方ですね」
(聞いてた通り?)