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九分の五
「では、先程のイメージに関して、心当たりがあれば教えて下さい」
簒奪者、和哉による弾劾が口火を切った。
それまで遠ざけていた黒歴史を、穂華は自ら触れる。
「先に同じデザインのタトゥーを晋吾に彫ってもらいました」
「タトゥー! そうでしたか……なるほど、辻褄が合いますね」
思った以上に、スッキリした解放感が穂華を包んだ。
「因みにモチーフの蝶は、どちらの発案ですか?」
ここに来て、それらしい質問も始まった。
「晋吾です、っていうか全部任せてましたけど……」
「随分、独占欲の強い弟さんですね!」
意外な感想に少し戸惑った。
幼い頃から紐解いても、晋吾に纏わり付かれた記憶など殆ど無い。
どちらかと言えば、穂華が構いに行って晋吾に煙たがられる構図の姉弟。
当て推量も甚だしい!
だが、悪い気がしないのは、その関係が穂華の憧れだったから……。
「独占欲? そんなん、初めて言われましたけど」
声にハッキリと艶が出た。
「随分前に、海外で『意外な日本語』のタトゥーが流行った話を知りませんか?」
「全然……」
夢を醒ますような和哉の話など、どうでもよかった。