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八分の四
「あの、本当に警察の方ですか?」
着席と同時、思しき人物からの念押しが飛ぶ。
「はい、申し遅れました。私、京都府警の三木洸平と申します」
前傾姿勢で手を伸ばし、改めて警察手帳を提示する。
それを二人が食い入るように見つめた。
手帳を中心に腰を浮かせて前屈する、三人の姿に悦を覚えた洸平が閃いた。
そのまま提示を続け『即興の我慢比べ』が開催される。
三竦みの状態から真っ先に脱落したのは……店長。
ぽっこりビール腹を抱えての追走で消耗した、脚力の限界は意外に早かった!
開始の僅か十秒弱で席に着く。
(見た目、四十代半ばの男性がこうも心許ないか……定年間際の課長クラスでも、もうちょっと頑張るよ)
だが、何時までも遊んでいる訳にいかない。
決着を前に洸平が先に折れた。それに合わせて少年も席に着く。