七分の四
却って、条件の方に食指が動く。
「……馬鹿馬鹿しいとは思いますが、後学のため二つ目を伺っても?」
「もう一つは、期限内にお爺様を本店に近づけないで欲しいの。鑑定に帯同すれば簡単に済む話でしょ?」
「……それは、稔侍翁が帯同したがる案件ということですか?」
「保証するわ! そんなことで駆け引きしたって意味ないもの」
「因みに、稔侍翁を本店から遠ざける理由はなんです?」
「やだ、和哉ったら! 貴方、何時からそんなことに興味持つようになったの?」
驚いた! 確かに、その通りだと思った。
(何時からも何も、そんなこと気にするようになった自覚がない)
だから、瑞稀の指摘は当然で、驚くに値しない。
驚いたのは自分自身……鹿目和哉に驚いた!
少なくとも、瑞稀の中の人物像に『あの質問』は無い。
同様に、自分の中の鹿目和哉にも『あの質問』は無い。
両者の間で、鹿目和哉の人物像は一致している。
ところが、現実には『あの質問』を投げかけた、所在の知れない鹿目和哉が存在している……。
だが、そこで途絶えた……。それ以上興味を保てない。
和哉は平常通りの思考に安堵して、これに蓋をした。