五分の四
「早速ですが、橘花さん。先程の作品は貴女の持ち物だったのではありませんか?」
「……多分、そうやと思います」
「では、作者の方もご存じですね?」
「……」
「あれは、間違いなく『やつがれトンキー』の作品です!」
「……」
「貴女は、あの作品を直接譲り受けた……違いますか?」
「けど、ネットには集団って」
「出鱈目もいいところです。私の鑑定ではオリジナルは一人。どの作品を見ても、作者の痕跡は同一人物のものしか残されていません!」
「……」
「もしかして、活動を休止したことと何か関係が?」
一瞬、穂華が表情を曇らせた。だが、直後に絞り出すような声でこう答えた。
「あれを作ったんは、弟は今……服役中です。もう何年も面会もしてません。正直関わりたくないんです」
「なるほど、そうでしたか」
意を決する告白は、最も容易く受け入れられた。
それこそ「旅行でちょっと留守にしてます」と、いった具合に。ありふれた日常の一コマとして……。
気持ちの収まらない穂華は、感情も露わにぶつける。
「弟は何も知らん思いますよ! もう十年近く、出たり入ったりしてますんで……最後に面会したんも、弟の借金の話で、身の回りのモン全部処分してくれって……売っても、何の足しにもなりませんでした。知ってたら絶対、ウチに話してるはずです!」
アプローチの仕方なんて判らない!
それでも、穂華は一縷の望みに賭けたかった。