五分の一
若気の至り、に思わず身体が反応してしまった!
(ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ! )
和哉が持ち出したペンダントと同じシルエット――否、
正しくは、そのオリジナル――穂華はそれを自らの手で覆って隠した。
(嗚呼、もう! 昔に戻って自分で自分を絞め殺したいわ)
十六歳の時、弟の晋吾に彫ってもらった……、
下腹部に刻まれた黒アゲハのタトゥー。
弟と言っても、小学生の頃から自分で墨を入れる程の悪童。
既にプロも脱帽する腕前で、地元でも名の通った存在。
だから何の迷いもなく、当時付き合っていた彼氏の名前を彫って、と頼んだ。
ところが……、肝心の晋吾が譲らない!
「墨、言うんは絆や! 一生の付き合いになる。別れたら簡単に他人に戻れるモンやのうて、消えんのや!」
中々、中学生とは思えない堂の入り方をしている。
「それを判らんアホがおる! それはええよ、商売やしな。他人の名前でも何でも注文ひとつで彫ったるけど……、血ィで繋がった家族は別やで、姉ちゃん!」
仕方なく、人生初(そして最後)の挑戦は自分のイニシャルで落ち着いた。
偶然にも、穂華のイニシャルが彼氏の姓名の頭文字と重なった。
(それは、それで運命感じとった自分を呪いたいわ)
ペンダントは次の年、誕生日に晋吾から皮肉を込めて贈られたもの……。
当然、その頃には先刻の彼氏とは別れていて、二人で笑い話に興じた――思い出の品。
もう随分前に処分していた。
(何で、今頃……)
穂華にとって、あまりに歓迎したくない過去、黒歴史。
当然、知らないフリを決め込みたい。
ところが、スタッフオンリーを無視して迫って来る、男の正体が知れない。
(そもそも、何なん! あの手袋)
何を何処まで、どう知られているかも判らない!
「モノには、手にした人の痕跡が残るんです。思い入れのあるモノは特に!」
和哉の言葉を振り切るように、控え室へと駆け込む穂華。
しかし、扉の向こうで唐突に始まった告白から、騒動の一端が垣間見える。




