八分の二
(何だ? この子)
容姿から察するに、『何処ぞ?』の『私立?』の『小学生?』
今にも泣き出しそうな、その瞳に映し出されたのは懇願の想い……。
(助けて!)
ノイズでない声〈以心〉に導かれ、洸平は引き戻される。
「どうした?」
プレイリストを停止するまでもなく、イヤホンを外しながら少年に語りかけた。
ツンざく雑踏にまみれて少年は答える。
「僕はやってないんです!」
(?)
なるほど、そうか! とはならない……が、その向こうからやって来る、店長と思しき人物に焦点が当たって合点がいった。
(そう言うことか……)
この時点で洸平が為しえる最善、思しき人物に少年を差し出し、この場から立ち去ること。
(管轄違いの所轄領分に踏み込むリスクが判らない時期も……昔はあったな)
捜査二課に配属されて二年半、そのくらいの分別はついてる。
が、少年が離さない。
(ポッチャリ体型で肉付きは良いが、多分そのせいでワンパク相撲に半ば、強制的に出場させられる……も、直ぐに小兵の、ちょっと運動神経が良いくらいの相手に負かされる……)
職業柄、外見からの情報収集には余念がない。
そんな洸平の意識を或る一点が集約してしまう!
(なんだソレ?)