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六分の一
「はぁ? 失敗したって、どう言うことやの!」
長い金髪を後ろに束ねるだけ!
普段同様、簡単に身支度を済ませる――橘花穂華の罵声が控え室に響く。
ロッカーの扉裏に設えた鏡から視線を移した金髪は、静かに扉を閉めると、近くのパイプ椅子を手繰り寄せて腰を下ろした。
腕組みしたその上の、たゆたゆした稜線がスラリと細い足を組み換える度、重力に抗い、撓む。
並んだ二つの至宝に反比例する――小柄で童顔の容姿から注がれる――人を支配するような眼差しは、一部の諸氏の嗜好を歪ませる……。
その先を向けた途端、硬張った表情の守田からは拙い言い訳が零れ落ちた。
「どうもこうも、あれから昨日、大変だったんだって! 穂華ちゃん帰った後に、警察出てくるし……、」
「は、警察?」
「嗚呼、でも大丈夫、大丈夫! 警察いたけど、警察沙汰じゃないから大丈夫」
「『嗚呼』って、もう……取っ散らかって判らんから! ちょっと落ち着きぃ」
そう言うと、穂華は守田にお茶請けのチョコレートを勧めた。
(いつも通り、ウチの仕込みは完璧やったはず……あの後、何があったんや?)




