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六分の三
主導権を掴み損ねた、守田の口は重い。
「その、甥御さんの鞄から未清算の商品が出てきまして……」
「甥御と言うのは、この鶴太郎のことでしょうか?」
「え、はい。そうですが?」
「この鞄から清算前の商品が出てきた、と?」
「ええ、そうです!」
「それが『この商品』と言うことですか?」
和哉は机の上のCDを指して確認した。
「ええ、これです。間違いありません」
明らかに守田を挑発するようなやり取りが続く。
「お二人がそれを確認されたと……」
「いえ、確認しているのは私だけですが!」
ここで少し間でも開いていれば、守田にも挽回のチャンスはあった。
しかし、和哉の詰問は容赦なく続いた。
「では、鶴太郎が鞄の中に商品を入れるところを店長さんが目撃された、で宜しいでしょうか?」
「あ、いや、私ではなく保安員が目撃しております」
「その方は何方に?」
「既に退店しておりますが?」
先程の聴取と同じような問答が繰り返される。
「なるほど……では、防犯カメラの映像を確認させて頂けますか?」
ここで少し、風向きが変わった。
「そんなの出来ませんよ!」