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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

寝ても覚めても悪夢に鎖されて

作者: sha-k_3

こんにちはこんばんは、sha-k_3です。

切ない想いのお話です。

これからも自由に執筆していくのでよろしくお願いします。

「昴くん。呼ばれたから来たんだけど、話って何かな?」


私の呼び出しに応じて校舎裏まで来た彼女は、そう言いながら髪を耳にかける。

その仕草に私は見惚れ、胸の鼓動が速くなる。


「…昴くん?」


声を出そうとするが、緊張で言葉がつっかえ、私たちの周りから音が無くなる。


「おーい、す「有栖ちゃん!!!」きゃ!」


大きな声を出してしまった…

彼女を驚かせてしまただろうか?


「ふふっ」


彼女は、心配する私の顔を見て、ニヤニヤしている。

大丈夫そうで良かった。


(ああ、やっぱり…)


私は、いつも私を揶揄ってくる彼女のことが好きだ。




私ー(すばる)と彼女ー有栖(ありす)ちゃんは、小学校の頃からの幼馴染である。

いつから彼女のことを好きだったのかは、覚えてはいない。

しかし、彼女のことが好きなんだと気が付いたのは、小学校の卒業式の日であった。


「用事があるからちょっと待って』」


と彼女は私に声をかけた。

どこかに向かっていく彼女のことをこっそりと追いかけて、彼女が元クラスメイトの男の子に、告白されていたのを見たとき、新たな感情が私の中で芽生えた。

それまでの私は、恋愛というものがよくわかっていなかった。

しかしながら、告白される彼女を見て、「取られたくない!」と思い、この想いが恋なんだと気が付いた。

結果として、彼女は告白を断った。

そして、高校1年生が終わる今日まで、私は想いを伝えることも出来ずに一緒に過ごしていた。

しかし、そんな日も今日で終わりだ。




「有栖ちゃんのことが好きです!私と付き合ってください!」


私の声は、静かな校舎裏によく響いた。

右手を差し出したことで、学ランの袖についたボタンが音を鳴らす。

彼女の息を呑んだ音が聞こえた気がする。

しかし、頭を下げているために彼女の顔は見えない。

数秒ほどの、沈黙の時間が流れる。

その時間が、私には無限続くように感じた。


「私、は…」


彼女がゆっくりと口を開く。

私は、手の震えをなんとか抑えようとする。

そして、彼女の言葉は続く。


「昴くんのこと、幼馴染で、親友だと思ってたからさ…その、ごめんね。私、昴くんのこと、恋愛対象として見てなくて…あ、でも!私のこと好きになってくれて、ありがとね」


予想通りの結末だ。

私が何回彼女に告ろうとも、彼女はいつも同じ返しをする。

どう告白の仕方を変えても、彼女はいつも同じ返しをする。

1回、10回、100回と、彼女はいつも同じ返しをする。


「そっか…そうだよね…」


今の私なら希望があるはずなのに…


「こ、告白を断った私が言うのもあれなんだけど…これからも、幼馴染でいて、くれる…よね?」


ああ、やっぱり私は彼女に勝てない。


「もちろんだよ。今日はありがとね」


ここでもしも、はっきりと嫌だと言えたのなら、何かが変わるかもしれないのに…

私は臆病だ。

今の私も、いつもの私も。

だから、運命の歯車は錆び付いてしまっているのだ。


「今日は先に帰ってるね。バイバイ、昴くん」


「うん、バイバイ。またね」


私の元から離れていく有栖ちゃんに、私は手を振る。


…ドサッ


有栖ちゃんが見えなくなると、私は脱力して座り込んだ。

今日の告白も、これで終わりだ。


「またね。昴くん…」


私は、今の私に暫しの別れを告げる。

急に来る眠気によって、ゆっくりと閉じていく瞼に、私が抗うことはなかった。





















『〜♪』


いつも通りの音楽と共に、私は目を覚ます。

私はスマホのアラームを止めて、ベッドから降りる。

いつも通りに洗面所で顔を洗い、化粧水と乳液をつける。

いつも通りの朝食、いちごジャムを塗ったトーストを牛乳で流し込む。

いつも通りな順番で、家を出る支度を済ませる。


ピンポーン


いつも通りの時間、私の家のチャイムが来客を告げる。


「おはよう」


私は制服でカバンを持って、ドアを開けて挨拶した。


「おはよ〜。今日も時間ぴったりに来たよ?」


「そうだな、有栖」


「えっへん」


いつも通り、見慣れた少女が私の前にいる。

有栖は、小学校からの私の幼馴染。

私よりも10センチも低い身長に、可愛らしい顔立ち。

太陽の光で輝く明るい茶髪は、肩の位置で揃えられている。


「ちょっと〜、なんで私が胸張ってるのに無視するの〜?」


「はいはい、そうですね」


「も〜!」


私は彼女の手を掴んで歩き出した。

彼女は私の右横に並んで歩く。

そうして2人で歩いていても、誰にも変な目で見られることはない。

友達なのに手を繋いでいるのに…

私たちの様子は、周りとしては当たり前の光景だ。

これも夢ならば、どうか早く覚めてほしい。

しかし、しっかりと感じる彼女の体温が、この世界が現実だと私に教える。

無慈悲に、冷酷に。

どうして私の横にいる彼女は、私の恋人ではないのだろうか。

私はどうしても臆病だ。

だからこそ、運命の歯車は錆び付いてしまっているのだ。

動くことは、永遠にない。

あるとすれば、歯車が壊れてしまう時だろう。

親友の私に、彼女は微笑むのではなく、にっこりと、満面の笑みを見せる。


「大好きだよ、有栖…」


私は呟くように言う。

しかしながら、彼女が顔を赤らめたりと、動じることはない。


「急にどうしたの?私も大好きだよ〜、昴ちゃん!」


私と有栖は、お揃いのスカートで並んで歩く。

そんなの、制服なのだから、同じ物に決まっている。

私が泣きそうな時に彼女は、「いつまでも親友だよ、約束ね!」と、私を慰める。

現実は実に残酷で、私に絶望を与えてくれる。

毎日のように見る同じ夢も、毎日がいつも通り過ぎていく現実も、どちらもが悪夢である。


(神様、彼女の約束を恨んだ罰がこれですか?)


私は今日も、1人で願う。


どうか…


恋人になれなかったとしても…


いつまでも彼女の1番でいられますように、と…

どうもsha-k_3です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

これからも自由に執筆していくのでよろしくお願いします。

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