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第50話 俺は、綾瀬先輩にねだられる。

5時前になり、図書室を出て生徒会室へ向かう。



「どうぞ」



生徒会室まで来てドアをノックすると、綾瀬先輩の声が中から聞こえたため入る。

中には、綾瀬先輩が一人だけいた。



「来てくれたわね」

「桔梗、なんでまた突然呼び出した?」



俺が用件について質問する。



「単刀直入に訊きたいことがあったの。連休の予定について聞きたいのよ」



すると、ちょっと前に栗栖にも訊かれたことを、俺は綾瀬先輩に訊かれる。



「ごめん。俺はこの連休は、暇が一秒もない」

「え?」



俺は綾瀬先輩の質問に、先ほどと同じように答える。

すると、栗栖とほぼ同じ反応をする。



「えっと、連休中にいつでもいいから、デートがしたいのだけど」

「ごめん、難しい」

「半日でも?1時間でも?」



綾瀬先輩に、しつこく確認される。

が、それでも俺は首を横に振り続ける。



「どうしても、ダメかしら?」

「すごく難しい」



綾瀬先輩が、俺の答えに絶望したような表情になる。



「どうしても、ダメなんだ」

「そ、そう」



綾瀬先輩が諦めた顔をする。

それから、綾瀬先輩がすがるような目つきをする。



「健一郎くん。最近は会うどころか、スキンシップすらも全くしてないわよね。

だから、せめてでも今、ここで目一体スキンシップしたい」



綾瀬先輩からそんな誘いがくる。



「生徒会の誰かが、入ってくるかもしれないよ?

もしくは、ここに用事のある誰かがくるかも」



俺がそう言うと、生徒会長はドアのカギをかける。



「これで誰も来ない、というより誰も入れないわ。さぁ、来て」



綾瀬先輩が机の前まで来て、俺の前で手を広げる。

さっきは栗栖から抱き着かれ、今度は抱きしめてほしい、か。

何か、運命のいたずらみたいなものを、俺は感じる。

そう思いつつ、俺はこの状況では、いつまでも俺から行かなかったら勘繰られるだろうと考え、綾瀬先輩のもとへと行く。

しかしなぜか綾瀬先輩の目の前まで来たところで、俺はなぜかつまづいてしまう。



「きゃっ」



倒れた先には、当然綾瀬先輩がいる。

俺は綾瀬先輩を巻き込む形で、机の方へ倒れる。

そして気づくと、はたから見ると、俺が綾瀬先輩を押し倒しているような状況になっていた。



「……」



目の前には、頬を赤らめ驚く綾瀬先輩の顔がある。

改めてこうして近くで綾瀬先輩の顔をしっかり見ると、美女という言葉はこの人のためにあるのだろうな、と俺は思う。



「えっと、その」



綾瀬先輩が恥ずかしそうにした瞬間、俺はやばいと思い離れようとする。



「待って」



しかし綾瀬先輩が、俺の腕をつかんで引き留めてくる。



「このまま、キスして」



綾瀬先輩が、甘い声で、俺の両手を恋人つなぎでつないで、ねだってくる。



「え?」



俺は動揺して、思わず訊き返す。



「キスして」

「このまま、いいの?」

「いいわ。むしろこのまま、私の唇を強引に奪うように、キスしてほしい」



目を潤ませ、さっきよりさらに甘い声を出す。

俺はするか迷ったが、目の前にある綾瀬先輩の顔を見ると、なぜかしないといけない雰囲気になっている。



「わかった」

「ちゃんと唇にしてね」



俺は結局意を決して、綾瀬先輩とキスをする。

キスしてすぐ離れると、綾瀬先輩が手を握る力を強くする。



「もっと貪るようにキスして」



綾瀬先輩が、何かおかしな雰囲気をまとって、懇願するようにねだってくる。

俺は何かを感じつつ、どういう感じか、考える。

俺は少し考え、姉からされるときみたいに、キスをする。



「はぁ、はぁ」



数分キスして離れると、綾瀬先輩は息を荒くして、まるで熱にうなされているような顔になっている。



「桔梗?」



綾瀬先輩が、うつろな目でうわごとのように、いい、好き、好き、と言い続ける。



「えっと、大丈夫?」



俺は、綾瀬先輩の様子を窺う。



「ぎゅーってして」



すると綾瀬先輩が、今度はあおむけのまま俺の腕を引っ張り、無理やり抱きしめる。

俺はバランスを崩し、綾瀬先輩の体に全体重を載せるかたちになってしまう。

しかし綾瀬先輩は、俺が自分の体の上に乗っていることを全く気にするどころか、むしろ俺の体重を感じるかのように俺のことを抱きしめる。



「アーイイ……スゴクイイわ」



綾瀬先輩がなまめかしい声で、俺を抱きしめた感想を言う。

そして綾瀬先輩は抱きしめながら俺の首筋にキスをする。



「桔梗?」

「このまま。もう少し、私のほうに体重を乗せるようにして」



俺は、綾瀬先輩に言われたとおりに、抱きしめる。

綾瀬先輩は、その状態で俺のことを抱きしめ続け、日もかなり傾いた頃に俺を放す。



「今更だけど、生徒会室でこんなことやって、大丈夫なのか?」



互いに体を起こし、動いた机やいすを元の位置に戻したところで、俺は綾瀬先輩に尋ねる。



「大丈夫よ、問題ないわ。ここは交際することを禁じてないもの」

「いや、そういうことじゃなくて。

もしさっきの状態を見られてたら、どうするつもりだった?」

「簡単よ。開き直るわ。そして見た人の言うこと、全て論破するわ」



綾瀬先輩があっさりとそんなことを言うので、内心俺は驚く。

俺はてっきり、俺をトカゲのしっぽ切りに使うと思ってた。

が、綾瀬先輩の目と話しぶりからして、その言葉は本気のように見える。

俺の質問にそう答えてすぐ、綾瀬先輩は再度俺の唇にキスをした後、頬にキスをする。



「ねぇ。もう一回、健一郎くんからもキスして」

「え?」

「ダメかしら?健一郎からは、もうしてくれないの?」



綾瀬先輩に物欲しそうな顔でそう言われた俺は、当惑しつつ頬と髪に、キスをする。



「唇にもして」



綾瀬先輩に言われ、唇にもキスをする。



「ありがとう。それじゃ、出ましょうか」



綾瀬先輩が出口の方に行くので、一緒に生徒会室を出る。

その後、綾瀬先輩がまたどこからか用意した車に、バイクと共に乗り、家まで送ってもらった。



「それじゃあ、また連休明けに」

「ああ、また」



バイクを降ろしてもらった後、綾瀬先輩からキスをされて、別れる。


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