第48話 あたしは、違和感を感じる。
(side:栗栖)
「健一郎」
いつもの日常のある1日。
あたしは2時間目の授業が終わって、健一郎の席に行く。
「今日も、昼を一緒に食べよ」
「いいよ」
「やった。忘れないでよ」
あたしはそう言って、友達のところに戻る。
そして昼になってすぐ、健一郎の席に行く。
「健一郎」
「ん」
「じゃ、あたしの後についてきて」
あたしについてきてというと、健一郎があたしを止めてくる。
「待った。購買に行ってからでいいか?」
健一郎が、あたしに訊いてくる。
あたしは、健一郎の質問に答える。
「あれ、今日はお弁当じゃないんだ?でも、購買には行かなくて大丈夫」
「?」
健一郎はあたしに、どういうこと?というような顔をする。
「いや、そうしないと昼飯が」
「とにかく、あたしの後についてきて」
「え?わ、わかった」
あたしが健一郎と教室を出ようとすると、出口で誰かがあたしたちに話かける。
「あら、奇遇ね。二人はどこに行くの?」
「別にどこだっていいでしょ」
話かけてきたのは、生徒会長だった。
あたしが生徒会長の質問に、わざと棘が立った答え方をする。
すると、生徒会長は余裕そうな顔をする。
「そう。それじゃ、今日は私は健一郎くんをあなたに譲って"あげて"、一人で過ごすこととするわ」
生徒会長は、そうなんか鼻につく言い方をして、どこかへ行った。
「ふふ、じゃ、付いてきて」
あたしは健一郎の腕を引っ張って、連れていく。
「到着」
あたしが健一郎を連れて行った場所は、普通教育棟の最上階の空き教室だ。
「ここで食べよう」
健一郎に提案すると、健一郎があっけにとられた顔をする。
「俺はてっきり、もっとアレなところに連れ込むと思ってた」
「何?期待した?」
あたしが訊くと、健一郎はすぐ真顔で、そっけなく答える。
「いや別に」
何も期待してないというような健一郎の発言に、あたしは少しムッとしてしまう。
合意の下で3人付き合ってるけど、あたしもれっきとした健一郎のカノジョ。
なのにそんな反応なのかって、思ってしまう。
「そっか。じゃ、あそこに座ろう」
苦笑いしながら、あたしは教室の適当な席に座る。
それに合わせて、隣に健一郎が座る。
「健一郎、隣じゃなくてさ、あたしと向かい合わせるように座って」
「?わかった」
あたしがお願いすると、健一郎は前の席の椅子を動かして、席を向かい合わせにしてくれる。
「で、購買に行かなくていいってのは、どういうことだ?」
「こういうこと」
あたしはかばんから、弁当箱を二つ取り出す。
「……それってまさか」
「そ。伊良湖の分の弁当」
あたしが健一郎の分のお弁当を渡すと、健一郎が驚いた顔をする。
「栗栖は料理できたのか」
「意外だった?」
「ああ。ただ、もし俺が弁当持ってたらどうする気だったんだ?」
「その時は半分ずつ食べるとかすればいいかって」
「なるほど?」
「さ、とりあえずあたしの作ったお弁当、食べてみて」
健一郎は弁当を開け、食べ始める。
「お、おいしい」
伊良湖があたしの弁当を食べて、再び驚いた顔をする。
「本当に栗栖が作ったのか?」
「そうだよ」
「へー」
健一郎はいまいち信じてない感じだけど、今はまだそれでもいい。
それは、これからこういう機会を増やしていって、少しずつ信じてもらえばいいだけのことだし。
「じゃ、あたしも食べよっと」
そう言ってあたしも、自分の弁当を出して食べ時始める。
「ごちそうさま。おいしかった」
伊良湖はお弁当を食べ終わった後、弁当箱をあたしに返す。
「ふふ、お粗末様」
あたしは伊良湖から、弁当箱を受け取る。
「ねぇ、手握っていい?」
訊くと、健一郎は黙って頷く。なので、あたしは手を握る。
すると、健一郎も、弱く手を握り返す。
こうやって手を握ると、健一郎の手って大きいなって感じる。
健一郎に手を握られると、なんだか安心感がすごいんだよね。
なんというか、握ってる間だけは、何からも守られてるような、そんな気持ちになる。しばらく、あたしは健一郎の手の感触を堪能する。
そんなときふと、今まで健一郎と付き合っていく中で、思ったことを思い出す。
あたしは、思い切って、ここで健一郎に質問してみることにした。
「ねぇ、健一郎」
「何だ?」
「健一郎って、あたしのこと実は嫌いだったりする?」
唐突に、あたしは健一郎に訊いてみる。
「なんだ突然。嫌いじゃない」
「そっか」
あたしの質問に、あっさりとした感じで答える。
あたしは健一郎の答え方に、言葉に表しがたい違和感を抱く。
そんなとき、予鈴のチャイムが鳴る。
「あ、チャイム鳴った。それじゃ、教室戻ろうか」
「ん」
健一郎とあたしは、一緒に教室に戻る。
健一郎の本心を知りたい、そう思いながら。




